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笑天宮御政録 ―自然に暴走する女帝と常識トリオ―  作者: 鑫鑫
第三章 白風の天華国なんよ

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第五話 自然に祭祀なんよ

黎明の光が格子窓から射し込むと、天華の寝室はまるで王朝の絵巻物のような美しさに包まれている。

うららかな朝日は、(とばり)に施された金糸の刺繍に息を吹き込み、龍や鳳凰の羽が目覚めるように眩く煌めいた。

微風に誘われてふわりと揺れるのは、(しゃ)で仕立てられた薄桃色の天蓋。その優美な揺らめきの足元で、最高級の敷物が、まるで水面のように淡く厳かな光を照り返していた。


そこへ蘭花が静かに入ってくる。


蘭花「姫様……朝でございますよ……ふふふ……御心が柔らかく揺れておられます……」


天華はぱちっと目を開けた。


天華「おおっ、そうであったか!

自然に朝が来たんじゃのう!!」


蘭花は即座に深読みする。


蘭花「ふふふ……流石姫様……

自然に朝が来るとは……天地の巡りが姫様に従っている証……

これは……祭祀の始まりでございます……ふふふ……姫様、流石です……」


天華「ほいじゃけぇ!

自然に始まったなら自然に続ければええんじゃ!!」


蘭花は一気にスイッチが入る。


蘭花「ふふふ……では寝室を祭壇に変えますね……

兵卒を呼びますね……供物を並べますね……

太鼓隊も呼びますね……笛も呼びますね……

ふふふ……姫様、流石です……」


天華「ほいじゃけぇ呼べばええんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


蘭花は嬉々として寝室を飛び出す。


薄花がそっと入ってくる。


薄花「姫様……蘭花より……“舞え”とのご指示でございます……」


天華「ほいじゃけぇ舞えばええんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


廊下から笛の調べが流れ込む。

細く澄んだ音色が寝室の空気を撫でる。


薄花の袖がふわりと広がり、

絹が空気を切り、

光が舞の軌跡を照らす。


兵卒(廊下から)

「薄花が……寝室で……舞っています……

笛まで……鳴っています……

意味が……分かりません……!」


天華「ほいじゃけぇ舞うんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


兵卒「自然なんかい……!」


琴雪が静かに入ってくる。


琴雪「……蘭花より……琴を……とのことです……」


天華「ほいじゃけぇ弾けばええんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


琴雪が琴を置き、指を添えた瞬間──

寝室の空気が一段沈む。


琴雪の一音が薄花の舞の軌跡を吸い込み、

静が天井へ昇っていく。


兵卒「静が……昇天しています……!

気配が……上へ……!」


天華「ほいじゃけぇ昇ればええんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


兵卒「自然なんかい……!」


蘭花「ふふふ……姫様、流石です……

風の儀・天の儀・地の儀が揃いました……

祭祀、始動でございます……」


執務殿で剛明は巻物を整理していたが、

ふと空気が揺れた。


剛明「……政務殿の気配が……薄いような……

静の波動……いや、何じゃろう……?」


兵卒「寝室の方角から……笛の音が……

練習かもしれませんが……」


剛明「笛……寝室で……?

いや、練習かもしれん……」


太后がゆっくり現れる。


太后「……寝室の方角が……妙じゃの……

笛か……舞か……

あの子、また何かしとるんか……?」


剛明「太后様、まだ断定はできません。

静も……気のせいかもしれません。」


牧玄「……生活はまだ崩れておりません……

ただ……空気が少し揺れております……」


太后「揺れとるんかい……まあ、見に行くぞ。」


蘭花が扉を開ける。


蘭花「ふふふ……姫様の祭祀、順調でございます……」


太后「祭祀なんかい!!」


寝室は完全に祭壇だった。


薄花が舞い、

琴雪の静が天井へ昇り、

供物が布団の横に並び、

笛が鳴り、

太鼓隊が待機している。


天華「ほいじゃけぇ、自然に祭りが始まったんじゃ!!」


太后「自然なんかい!!

寝室で祭祀するなと言っとるじゃろうが!!」


天華「ほいじゃけぇ寝室でもええんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


太后「自然なんかい!!」


蘭花「ふふふ……姫様、流石です……」


薄花の袖が廊下へ流れ、

笛の調べが政務殿へ伸びる。


兵卒「薄花が……廊下に……!

舞が……政務殿へ侵食しています……!」


剛明「侵食なんかい……いや、そんな例は……ない……!」


太后「ないんかい!!」


政務殿の天井には

龍紋の梁が何本も連なり、

琴雪の静を受けて淡く震えていた。


兵卒「龍紋の梁が……光っています……!」


剛明「静が……政務殿まで……届くとは……そんな例は……ない……!」


太后「ほんとにないんかい!!」


太鼓隊長「姫様の御心が政務殿に届いたと判断し……

自然に第三陣を……!」


太后「ほんとに本当に自然なんかい!!勝手に判断するんじゃないよ!!」


蘭花が政務殿の中央へ進む。


蘭花「ふふふ……姫様、流石です……政務殿は祭祀の本殿となりました……」


太后「本殿なんかい!!」


天華は龍紋の梁の光を浴びながら跳ねるように言う。


天華「ほいじゃけぇ!!

政務殿が祭祀になったなら──

政務殿で祭ればええんじゃ!!

自然じゃけぇ!!」


太后「跳ねとるんかい!!祭るなと言っとるじゃろうが!!」


天華「ほいじゃけぇ自然なんよ!!自然は止まらんのじゃ!!」


蘭花「ふふふ……姫様、流石です……」


兵卒「政務殿が……完全に……祭祀……!」


太后「えぃ、やめんかい!!」



政務殿の天井では

龍紋の梁が何本も連なり、

琴雪の静を受けて淡く光り、

古装時代の神殿のような威厳を帯びていた。


柱は薄花の舞の光を反射し、

笛の調べが梁の間を滑り、

太鼓隊の第三陣が整列し、

供物が中央に並び、

政務殿は完全に古装祭祀殿と化した。


──こうして政務殿は、

寝室から始まった自然祭祀に完全に飲み込まれたのであった。


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