第十七話 自然の暴走なんよ
◆料理長の自然暴走
料理長「自然に煮えるんよ!」
蘭花「煮気の理……?」
薄花「……煮える瞬間、まるで湯気が小さく息をしておるようでございます……静の中に、ひとつの物語が生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「出んのんよ!! 煮えるは勝手に息せんのんよ!! 煮るんは火のほうなんよ!!」
理策「“煮える”は加熱の結果です。自然ではありません。」
料理長「自然に味が深うなるんよ!」
蘭花「味深の理……?」
薄花「……味が深まる瞬間、まるで心がそっと震えるようでございます……静の中に、ひとつの祈りが生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「出んのんよ!! 味は勝手に震えんのんよ!! 深めるんは調理のほうなんよ!!」
理策「“味”は調理の結果です。自然とは異なります。」
料理長「全部結果なんよ!! 自然に皿が洗われるんよ!」
蘭花「皿浄の儀……?」
薄花「……皿が光る瞬間、まるで水が小さく息をしておるようでございます……静の中に、ひとつの物語が生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「出んのんよ!! 皿は勝手に光らんのんよ!! 洗うんは人のほうなんよ!!」
理策「“洗う”は作業です。自然ではありません。」
鍋は冷たいまま、皿は山積み。
調理助手「料理長! 薪に火をつけてないのに『自然に燃えるんよ!』って放置した結果、まかないの雑炊が冷え切って凍りついてます!」
料理長「寒冷の理なんよ!!」
兵卒「ただのほったらかしなんよ!! 飯喰わせる気ないんよ!!」
天華がふらりと厨房へ入ってくる。
天華「ほいじゃけぇ、お腹が空いたら自然に満腹になればええんじゃ!」
蘭花「腹満の天恵……?」
薄花「……空腹が満たされる瞬間、まるで胃袋が小さく息をしておるようでございます……静の中に、ひとつの感謝が生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「生まれんのんよ!! 腹は勝手に膨らまんのんよ!! 喰うのは口なんよ!!」
理策「“満腹”は栄養摂取の生理現象です。自然な自発現象ではありません。」
天華「ほい、理策の理屈も自然に黙ればええんじゃ!」
理策「恐れながら姫様。私の発言権は物理的に存在しますので保証下さい。」
◆琴雪の静が混乱を増幅する
琴雪「……ふふ……自然は静かですね……」
薄花「……静が深まるたびに、まるで空気が小さく息をしておるようでございます……影の中に、ひとつの物語が生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「出んのんよ!! 静は勝手に息せんのんよ!! 静かにするんは環境のほうなんよ!!」
琴雪「……ふふ……自然に整いますよ……」
兵卒「整わんのんよ!!」
琴雪の静けさが、逆に国中の混乱を際立たせた。
◆蘭花の儀式量産
蘭花「自然に仲良うなる……これは“天和てんわの儀”でございますね……」
兵卒「出んのんよ!! そんな儀式ないんよ!! 作るんは蘭花殿のほうなんよ!!」
理策「“儀式”は形式です。自然とは一致しません。」
蘭花「自然に心が通じる……“心通しんつうの法”……?」
薄花「……心が通じる瞬間、まるで世界が小さく息をしておるようでございます……静の中に、ひとつの祈りが生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「出んのんよ!! 心は勝手に通じんのんよ!! 通じるんは会話のほうなんよ!!」
理策「“心通”は心が通じる状態です。自然とは異なります。」
蘭花は勝手に儀式を増やし続けた。
◆国中が自然暴走なんよ
兵卒「自然に門が閉まるんよ!」
門番「閉めんと閉まらんのんよ!!」
理策「閉門は操作です。自然ではありません。」
兵卒「全部切り捨てるんよ!!」
文官「自然に税が集まるんよ!」
兵卒「集まらんのんよ!!」
理策「“徴税”は人の行為です。自然ではありません。」
文官「負けたんよ!!」
料理長「自然に米が炊けるんよ!」
兵卒「誰かが炊かんと炊けんのんよ!!」
理策「“炊飯”は誰かが加熱するんです。自然ではありません。」
農民「自然に収穫できるんよ!」
兵卒「育てんとできんのんよ!!」
理策「“収穫”は作業です。自然とは一致しません。」
国中が“自然に〇〇するんよ!”で溢れ返った。
政務殿の廊下では、官吏たちが書類を積み上げて倒れていた。
官吏A「自然に仕事が終わるんよ!」
兵卒「終わらんのんよ!! 徹夜確定なんよ!!」
官吏B「自然にハンコが押されるんよ!」
兵卒「押すんは手なんよ!! 判子が自走したら恐怖なんよ!!」
そこへ太后が額を押さえながら歩いてくる。
太后「……なんじゃこの地獄絵図は……どこもかしこも『自然に〜』って放置して、誰も仕事しとらんじゃないかい!!」
天華「ほいじゃけぇ! おばあちゃんも自然に休めばええんじゃ!」
蘭花「おぉ、休息の聖域……?」
薄花「……太后様が倒れ伏す瞬間、まるで国が小さく息をしておるようでございます……静の中に、ひとつの休息が生まれるんよ…………美しゅうございます……」
太后「やめい!勝手に国を倒れさせるんじゃないんよ!! 美しくも何ともナイわ!!」
理策「補足します。国家機能の停止率は推定値で現在87%です。」
兵卒「理策殿、数字出されると余計に絶望感がますんよ!!」
◆自然御政の崩壊
剛明「天華……自然に任せたら……国が自然に滅ぶんよ……」
天華「ほい、滅びは自然にいらんのんよ!」
蘭花「永天の理……?」
薄花「……滅びの静は、まるで世界が小さく息をしておるようでございます……影の中に、ひとつの祈りが生まれるんよ…………美しゅうございます……」
兵卒「出んのんよ!! 自然は勝手に滅ばんのんよ!! 滅ぶんは国のほうなんよ!!」
理策「“滅亡”は結果です。自然とは異なります。」
太后は、天華たちの話しを聞いて、事態収束するため、今思いついた“自然の哲学会議”を開くことを決めた。
太后「ええいもう頭が割れるわ!! 今すぐ全員集めて『自然とは何か』を説教……いや、哲学会議じゃ!! 哲学で全員正気に戻すんよ!!」
こうして――
太后が突然思いついた自然の哲学会議へ続く。




