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笑天宮御政録 ―自然に暴走する女帝と常識トリオ―  作者: 鑫鑫
第二章 白風の拡張なんよ

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第十三話 自然の香音なんよ


笑天宮の南側に位置する、茶の文化・接待・休息を司る殿舎、茶の殿。白木の柱が並び、竹編みの天井から柔らかな光が落ちていた。

畳は薄茶色で、歩けば静かに沈み、香炉から淡い茶香が漂っていた。


その自然の空気の中で――

天華が胸を張った。


天華「ほい! 自然に茶が出る時間なんよ!」


蘭花

「茶が自然に出る……“天茶の理”でございますか……?

 古来より、天が茶を授けるという……」


薄花

「……茶香が満ちるたびに、

 まるで殿が小さく息をしておるようでございます……

 静の中に、ひとつの物語が生まれるんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「出んのんよ!!

 天から茶は降らんのんよ!!

 茶を淹れるんは、人のほうなんよ!!」


---


太后から呼ばれた剛明が茶器を持って来た。


剛明

「天華、茶は自然に出んのんよ……

 湯を沸かして、茶葉を入れて――」


天華「ほい、自然に湯が空から降るんよ!」


蘭花

「空から降る湯……“天湯の儀”でございますか……?

 古典に――」


薄花

「……湯気が揺れるたびに、

 まるで空気が小さく笑うておるようでございます……

 殿の静に、ひとつの物語が立ち上がるんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「降らんのんよ!!

 湯は天から来んのんよ!!

 沸かすんは人のほうなんよ!!」


---


剛明が小炉を覗き込み、鉄瓶を持ち上げた。


天華「ほい、自然に湯が踊るんよ!」


蘭花

「湯が踊る……“湯舞”でございますか……?

 湯気の立ち方を舞に例える古典が……」


薄花

「……湯気が立ち上がるたびに、

 まるで心がそっと息をしておるようでございます……

 湯の中に、ひとつの夢が生まれるんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「踊らんのんよ!!

 湯は舞わんのんよ!!

 揺らしとるんは熱のほうなんよ!!」


---


剛明が茶葉を器に入れると、天華は目を輝かせた。


天華「ほい、自然に茶葉が跳ねるんよ!」


蘭花

「跳ねる茶葉……“茶魂の躍動”でございますか……?

 茶葉が生きておる証……」


薄花

「……茶葉が開く瞬間、

 まるで心が小さく息をするようでございます……

 湯の中に、ひとつの夢が生まれるんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「跳ねんのんよ!!

 茶葉は夢で動かんのんよ!!

 動かすんは湯のほうなんよ!!」


---


剛明が湯を少しだけ注ぎ、香りを立たせた。


剛明

「天華、茶はな……

 湯を少し入れて、香りを立たせるんよ。」


天華「ほい、自然に香りが勝手に口に入るんよ!」


蘭花

「香りが勝手に口へ……“香気の自来”でございますか……?

 香りが人を選ぶという……」


薄花

「……香りは風の手紙のようでございます……

 人の心にそっと触れて、

 “飲んでほしい”と囁くんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「囁かんのんよ!!

 香りは意思なんか持たんのんよ!!

 吸うんは鼻のほうなんよ!!」


---


太后は天華の茶碗を手に取り、香りを嗅いだ。


太后「……この茶碗、怒っとるんよ。」


蘭花「茶碗の怒り……“器心の理”でございますか……?」


薄花

「……怒りというより……

 茶碗が“もっと丁寧に扱うてほしい”と

 静かに願うておるようでございます……

 器にも心が宿るんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「宿らんのんよ!!

 茶碗は願わんのんよ!!

 びっくりしとるんは、お湯のほうなんよ!!」


---


太后は茶を一口飲んだ。


太后「……茶葉が泣いとるんよ。」


蘭花「茶葉の涙……“茶涙”でございますか……?」


薄花

「……涙は、苦味が心に触れた証でございます……

 茶葉が最後に見せる、静かな祈りなんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「祈らんのんよ!!

 茶葉は感情持たんのんよ!!

 苦しんどるんは湯の強さのほうなんよ!!」


---


天華は突然、手を叩いた。


天華「ほい! 茶を楽しくする御政をするんよ!」


蘭花「茶を楽しくする御政……“茶楽政”でございますか……?」


薄花

「……楽しさは、静の中でそっと芽吹くものでございます……

 茶香が揺れるたびに、

 殿の空気が小さく微笑むんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「微笑まんのんよ!!

 空気は感情持たんのんよ!!

 楽しむんは人のほうなんよ!!」


---


剛明

「天華、茶は自然に空から降らんのんよ……

 人が淹れるんよ。」


天華「ほい、自然に淹れるんよ!」


蘭花「自然に淹れる……“天淹の理”でございますか……?」


薄花

「……湯が茶葉に触れる瞬間、

 まるで静が小さく息をするようでございます……

 心がそっと宿るんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「宿らんのんよ!!

 心は勝手に湧かんのんよ!!

 込めるんは人のほうなんよ!!」


---


その時――

茶の殿の隅に置かれた白紙が、

風もないのに、わずかに揺れた。


天華「ほい、自然に揺れたんよ!」


蘭花「白紙が揺れる……“香白紙の理”でございますか……?」


薄花

「……香りが白紙に触れるたびに、

 まるで紙が小さく息をしておるようでございます……

 静の中に、ひとつの物語が生まれるんよ……

 ……美しゅうございます……」


兵卒

「揺れんのんよ!!

 紙は香り吸わんのんよ!!

 揺らしとるんは空気のほうなんよ!!」


官吏たちの噂は一気に広がった。


「白紙は香りに反応して増える前兆では」

「自然の殿に集まっているらしい」

「茶の殿の白紙が揺れたらしい」


茶の殿は今日も騒がしい。

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