72.敢えてゲスの汚名を被ろう
超級ダンジョンをクリアしたことだし、区切りとケジメだ。
シーナちゃんとユキちゃんとは一緒に住んじゃってるし、シーナちゃんとは指輪までしてる。シーナちゃんは二十歳になって、俺との子どもが欲しいと真剣に考え始めてる。
だから、結婚式を挙げることにした。
ユキちゃんがいるから神前式かなと思ったら、
「よその神の事は知らんが、アレを着てみたいんじゃ!」
と指さしたのは、白いウエディングドレス。
神には誓わないけど結婚式か……。
「それなら、人前式やガーデンウェディングが良いんじゃないか」
東悟が言ってくれた。
「それなら私達もあやかりたいわね。ね、東悟!」
「そうだな……翼。俺達も結婚式やろう」
「うん!」
なんか相談した俺をそっちのけで盛り上がっちゃってるよ!
「じゃあ、エイガももうひと頑張りだな!」
「そうね。三雲君、ちゃんとしてね」
ん? もうひと頑張り? ちゃんとするとは?
◇◇◇
「結婚式なんて何回やっても良いよな?」
「そうね。私達も混ざっちゃお」
次に相談したのは岩沙と東……。お前らもう赤ちゃんまでいるのに……。
って、俺が相談しているのだが。
まあ良いか……。
「それはそうと、エイガはどうするんだよ?」
「決まってるじゃない。やる時はやる男よ!」
ん? 俺はどうするって……。やる時にできなかったから、30過ぎまで童貞拗らせていた訳で……。
何言ってるんだろ、コイツら。
◇◇◇
変な奴らほっといて、ユキちゃん、シーナちゃんと結婚かぁ。嬉しいなぁ、幸せだなぁ。
……。
嬉しいんだけど、引っかかるものはある。
けれど、それは仕方がないことだ。彼女とは、そういう縁では無かったということだろう……。
これからも仲間としてなら、ずっと一緒にいられるんだし⋯
◇◇◇
「てな感じで、みんな来てくれるみたいだし、混ざって一緒にやりたいんだと」
「良いと思いますよ。楽しそうです!」
「そうじゃな。他の奴らは、儂が誓いを聞いてやろうかの」
よくわからないけど、ユキちゃんはダンジョンマスターだけど近所の御神体でもあるもんね。
結婚の誓いくらい聞いてくれるのだろう。軽いなぁって思うけど。
ってか、御神体にあんな事やこんな事までしてる俺って、めっちゃ罰当たりだよな。
好きだから、やめないけどね。
「後は、エイガさんの問題ですね!」
「うむ。そういう事じゃな」
「なんだよ? 俺の問題って……」
コイツらまで何か言い出してるよ。
「エイガさん!」
「なんだい、シーナちゃん」
「エイガさんは、ゲスでダメな男です!」
うっ。分かっちゃいるけど、最愛の人にそんな事言われるとヘコむよ。泣いちゃうよ!
「なんだよ、急に」
「私は、そんなエイガさんが好きだから問題無いです!」
「……」
「エイガさん。ゲスエイガになっても私を捨てないですよね?」
「ゲスエイガってなんだよ? 俺が薫の事、捨てるわけないだろ!」
大切なシーンっぽいので、シーナちゃんを名前で呼んでみた!
「じゃあ良いです!あの人の事、好きなんですよね?」
「へっ?」
なんで分かったんだ?あの人の事とは?……ユキちゃん?
「まあ、儂は心を読めるからの。このまま儂らだけ幸せになるわけにはいかんのじゃ」
……。
「このまま沙織さんを放っておくエイガさんなら、私、好きになってないです!」
「思い出の場所で待ってるそうじゃよ」
えっ.......。待っている?俺を?
「ゴメン。行ってくる!」
無意識のうちに駆け出していた。
◇◇◇
沙織……。思い出の場所……。
初めて会った駅の改札。
沙織が定期を落として困ってて声をかけたんだっけ。俺が見つけたんだよな。学生の時は、いつも待ち合わせした場所。パーティを脱退すると決めて別れたのもあの場所……。
沙織に恋して、ユキちゃんと会わなくなった。
「そのおなごを好きになったから儂に会えなくなった」とユキちゃんは言った。
パーティを脱退して、それでもいつかまた沙織と肩を並べる事諦めないで踏ん張ってたけど、探索者を辞める事を決意して沙織の事も諦めたら、ユキちゃんと再会出来て今がある。
今⋯俺は、沙織と肩を並べて戦えている。でも……。
◇◇◇
思い出の場所に行くと、沙織がいた。いてくれた。
聖女というには相応しいキレイな顔、ボンキュッボンな完璧な……
いや、それは関係ない。初めて会ったあの時から好きだったんだから。聖女でもボンキュッボン美女でもない、沙織がただの少女だったときから……。
「待たせたな」
「もう、待ちくたびれちゃったよ」
「ゴメン。遠回りした」
邪な心を捨て、学生の時にユキちゃんに会えていれば、また違った未来があったと思う。
「ふふふっ。ホントにね」
「ずっと沙織の事好きだったよ」
「私もよ。エイガの事、ずっと好きで待ってたんだからね」
ギュっと抱き合い、キスを……
「ちょっと待って。椎名さんの事よ」
「ん?」
「椎名さんは良いって言ってくれたけど、エイガ、意味わかっているの?」
「シーナちゃん……薫は俺にゲスになってくれと……」
……。少し間が空いて、沙織が笑った。
「ゲスって⋯。ふふふ。私、あのコには勝てそうにないわ」
「勝つ必要ないって、仲良くしてやってくれ」
「……こんなゲスに、初めてのキスを奪われる身にもなって欲しいものね」
「まあ、なんだ。イヤなら……く、俺はどうすれば……」
「イヤじゃないわよ。エイガ、愛してるもの」
「俺もだ。沙織、一生愛し続けるよ」
長い長いキスをした。
今までの長いすれ違いを埋めるかのように!
エイガさん。
良かったのかな⋯。
コレ今までの主人公の中で、初めてのハーレムエンドな気がする。これも幸せの形なのだろうと思う。
次回で完結します。よろしく!




