69.ハーレムなんて良くないよ!でも⋯
つい数日前まで未経験だった俺は、強く思っていたことがある。
……ハーレム禁止!
そんなことになってモテる奴だけが良い思いをして、俺みたいな奴に彼女が出来なくて苦労するんだよ!
この国の制度は一夫一婦制だったはずだし……。
ただ、探索者の称号は遺伝することが知られてからは、その制度が形骸化してしまったんだ。
探索者同士の重婚はむしろ奨励されて、様々な制度により探索者同士の家庭は優遇されている。
そんな事情はあるが、声を大にして言いたかった。
……ハーレム禁止!
と。
◇◇◇
……狭いベッドに3人で寝ながら思うことではないよね。
ましてや「サオリのボンキュッボンならどんな感じなんだろう」なんて考えながら……。
うわぁ、超ゲスじゃん、俺……。
30過ぎて、新しい自分を発見してしまったよ!
【ゲスエイガ】
レベル: 2
体験人数: 2人
攻撃力: ?
持久力: ?
……。
まあ、それよりもクリスマス。シーナちゃんとのこと、ちゃんとしよう。
◇◇◇
クリスマス当日。
昼過ぎに家を出て、ショッピングを楽しんだりゲーセンに行ってみたり。
楽しいなぁ。
晩御飯だけど、去年の失敗を糧に予約をしておいた。
実は予約が取れなかったんだけど、ダンジョン協会に聞いてみたら、超高級レストランの予約が取れてしまったのだ。
協会に借りを作るようでイヤだったけど、超級パーティとはそういうものらしい。危険と隣り合わせの代わりに、色々なことにかなり融通が効くとのこと。
◇◇◇
「予約が取れたのは良いけど、緊張するね」
「はい。こんな高級なお店、初めてです」
まあテーブルマナーやなんかは個室だし、大目に見てもらおう。
一応調べてきたことは実践しているけどね。
「美味しい。でも、俺はシーナちゃんのご飯の方が好きかな」
「嘘はダメですよ、エイガさん!」
と言いながらも嬉しそうなシーナちゃん。
「まあ、このご飯だと経験値ないしね!」
「あ、それはそうですね!」
楽しい。楽しいんだけど……言わないとダメなことがある。
シーナちゃんとの約束を守って、お嫁さんにするんだよ。その前にちゃんと恋人になりたい。
……『やだなぁ。エイガさんとは遊びですよ。これだからおじさんは重くて困るんですよね』なんて言われたら泣くけど……。
そんなこと言わないよね。
◇◇◇
デザートが運ばれてきた。
美味しい……のか? なんだか味がわからない。
話さないと⋯。
ぐっと水を飲み干した。ヨシっ!
もう言おう。
「あのさ、シーナちゃん」
「えっ、何ですか?」
シーナちゃんはデザートを食べる手を止めて返事してくれた。
「あの、その、なんだっけ……いや……」
「だから何ですかって?」
「じゅ、順番がさ、その違ってたけどさ」
ユキちゃんに乗せられて、曖昧なまま抱いてしまった。順番が違ったと思うんだよ。
「ん? 順番ですか? スープ、前菜、メイン、デザート……順番通りでしたよ」
「あ、それはそうなんだけど……いや違う」
「へっ……なんでしょう」
「まあ、ユキちゃんが……いや、それは関係なくて。その、シーナちゃん」
ユキちゃんが誘ってくれたから3人でああいう関係になれたけど、今はそうじゃなくて。
俺はシーナちゃんに、ちゃんと言わないとダメなひと言がある。
「もう。エイガさん、言ってください!」
「スキッ……い、あ」
……。
「へっ……隙?」
スキアリ……じゃなくて!
「だから! 俺、シーナちゃん……薫の事、好きだよ!」
言えた……。
「えっと……ええっ!?」
「だから、薫の事好きだって!」
「えっ……エイガさん、名前で呼んでくれた……嬉しいな」
良かった。喜んでくれている。
◇◇◇
立ち上がり、シーナちゃんの座っている席に移動する。
「シーナちゃん!」
「ちょっと、エイガさん。名前で呼んでくれないの?」
「ふふふ。それは『とっておき』だよ」
「まあ、⋯それなら良いですけど」
シーナちゃんの肩を寄せて、唇を近づける。
シーナちゃんは目を瞑って、唇を向けてくれた。
今日、俺達は初めて「ちゃんと」キスができた気がする。
それにちゃんと好きって言えたよね。
「でも、エイガさん!」
「ん、どうしたの?」
「『好き』もキスも、その、あの時、いっぱい言ってくれてましたよ! 私、それでも嬉しかったんですよ」
「いや、あの最中は無我夢中だったから……」
「へぇ~。ふふっ、まあ、良いですけど」
「この後さ、じゃあ、この後さ、もっといっぱい言うよ。実は予約してるんだよ!」
「なんですかそれ……なんかイヤだなぁ」
「えっ……そんな」
「ふふふっ」
じゃあ、とっておきか。
「愛してるよ、薫!」
「エイガさん……それはズルいですって!」
――その後、初めての2人きりの夜を迎えたのでした。
ズルいが仕方がない。
エイガさん、頑張って幸せにしてあげてくれ!
⋯。
やっぱイヤだなぁ。




