63.稲刈り
待望の稲刈りである。
近所のおじさんからコンバインを借りて稲を刈る。いや、これでも経験値が積み上がる。狩るという表現が正しいか。
途中、シーナちゃんと交代する。
華奢な女の子が農機具を扱うのは、やっぱりめっちゃカワイイね。まあ、シーナちゃんという超級美少女が扱うってのが大きいが……。
「エイガさん! これ楽しいですっ!」
これだよ。この笑顔が見たいんだよ!
うん、俺は袋の入れ替えや運搬に徹しよう。
これも経験値だよ!(意味不明)
◇◇◇
米と言うのは、稲を刈ったら終わりではない。
脱穀まではコンバインでできる。おっちゃんの小屋に持っていって、籾摺りして乾燥機に入れた。
米は出来るだけ混ざらないようにしてもらった。
「そうだよな。出来るだけ自分の作ったやつが良いよな。わかるよ」
「はい! 今まで分けてもらっていたお米も滅茶苦茶美味しかったんですが、ホントに楽しみなんですよ!」
ホントに世話になりっぱなしだけど、神社のダンジョンを解決したことで豊作にもなり良いこともあり、持ちつ持たれつだそうだ。
俺たちが越してきてからイノシシなんかの獣害も減ったそうで、なんか感謝もされている。
これは気のせいだとは思うが……。
山麓の家に俺達探索者がいると、野生生物も警戒するのだろうか?
◇◇◇
そして出来上がった、25kg入りの米袋が20袋。
玄米なので、精米すると若干減るだろうけど……。
5kgで23万粒の経験値……じゃなくて米粒があるという。
これ全部食べたら……全部で2300万の経験値だよ!
3人で分けても700万。
とんでもないな……。
とりあえず1合のコメ6500粒……。そして一粒が最低経験値とは限らないだろ!
いきなりレベル上がりそうだよ!
一番底辺のモンスターの経験値が、最低の経験値として入るとされている。肌感では、ユキちゃんのダンジョンで入る経験値の最低値も同じ。
初級探索者がゴブリンとかスライムを死に物狂いで倒した経験値と、雑草をピッと抜いた経験値が同じ。
ユキちゃんのダンジョンが、いかに規格外なのかがわかるよな。
通常よりレベル上げに100倍とか1000倍もの経験値が必要なユキちゃんの称号が、全く問題なくなる。
そして、膨大な経験値デバフと引き換えに得たのが、様々なスキルと高ステータス。
いける。いけるぞ!
◇◇◇
村の精米機で精米する。米ぬかも回収しておいた。ぬか漬けもコレで作ったら経験値倍増したりして……。
◇◇◇
米は俺が炊いた。
シーナちゃんがカレーを作った。
ユキちゃんは……まあ良いや。クライマックスシリーズで忙しいようだ。
なんか野球好きみたいだね。
カレーには自家産の玉ねぎがタップリ入っていて、ニンジンやじゃがいもも自家産である。
【経験値1万倍カレー】が出来上がった。
シーナちゃんとハイタッチする。
ユキちゃんはお目当てのチームが負けてしまったようで少し暗かったけど、カレーを見たら――
「カレーライスじゃな。米ができたのじゃな!」
「うん。まあ、今週ずっと頑張ってたんだけどな」
「はい。私も頑張りました!」
「すまぬ。ちょうどアレが始まってしまっての」
アレとか言われると変に聞こえるよ。ユキちゃんもそんな機能あるのだろうか⋯。子孫がいるとも言っていたような気がするが、今はどうでも良いね。
アレって、野球のクライマックスシリーズだもんね。
「でも、初めはユキさんに食べてもらいたいです」
「そうだな。ユキちゃん、食べてみてくれよ」
日本人は収穫物を神様にお供えしたりするという。
俺とシーナちゃんにとっての神様は、間違いなくユキちゃんだよ。
「良いのか? 儂には経験値と言う概念が無いのじゃが」
「そういう問題じゃねえよ。ユキちゃんにまず食べて欲しいんだよ」
◇◇◇
米ができるまでの長い道のりを思い出す。
ダンジョンを攻略して、ダンジョンの領域を増やし、土地を耕し、水をやり、草を抜き……大変だったな。
ん? 大変だったか?
シーナちゃんの弾ける笑顔と、ユキちゃんのクールな微笑み。どんどんレベルが上がって強くなっていく喜び。
去年までの、全然強くなれなくて役立たずだと罵られる日々に比べたら……。
いや、比べるまでもなく……。
めちゃめちゃ楽しかったよな!
もうすぐ稲刈りの季節。
美味しいお米が取れるといいなぁ。
スーパーでは新米が出回っていて、買って食べてみたら美味しかった!




