61.息抜きは必要だよ!
とにかくレベル上げだ。
畑や田んぼで除草をして、秋植えの野菜の準備に肥料をやって耕して、ご飯はダンジョン畑産のモノを中心に食べまくった。
自家産の野菜は美味い。文句なしに美味いけど、同じものばかりじゃ飽きる。シーナちゃんは工夫して料理してくれるけど、限界があった。
でも、レベルを上げるためだし……。無理にでも詰め込もう。
それでも、レベルはかなり上がりにくくなっていた。
1ヶ月ほどそんな生活をして、ようやく2つレベルが上がった。
俺はこの時、「ようやく2つ」とか「まだ2レベルしか上がっていない」とか考えてしまっていた。
ここに来るまで全く上がっていなかった生活を忘れたわけじゃ無かったんだけど……。
◇◇◇
「エイガさん。ここ座ってください!」
梅雨が明けて夏本番といったところ。朝御飯を食べて畑仕事に行こうかと準備していると、シーナちゃんに呼び止められた。
「ん? 何かな? 草刈り行くんだけどな」
「草刈りも良いんですが、まずお茶飲みましょう。コーヒー淹れました」
早く畑仕事に行きたいが、他でもないシーナちゃんの言う事だ。さっと飲んで行こうか。
「あちっ!」
コーヒーは熱々で一気には飲めなかった。少し火傷しちゃったな。
「エイガさん。そういう所ですよ!」
「ん? 何が……」
「焦っちゃダメですよ。なんか最近のエイガさん……違ってて」
ん? 何が違うんだろう。
畑仕事して、野菜食べて、レベル上げて、ダンジョンに挑戦して……。
……ん? 焦っていたのか、俺は?
◇◇◇
シーナちゃんとユキちゃんが何よりも大切だったはず。これまでまず2人の事を考えて行動していたはずだった。
「えっと……あれ? 俺……」
ここ最近、「俺がレベル上げないとダメだ」とだけ思っていた。
俺が、俺が……。って。
……なんでだろ。
ユキちゃんを見ると、ゴロゴロしながら高校生が野球をやっているのを見ている。
「まあ、儂はダンジョンコアでしかレベル上がらんからの」
なんて言いながら、ずっとくつろいでいた。
だからこそ、俺がレベル上げして……。
「秋にはお米が採れて、嫌でもレベル上がりますって。大丈夫です!」
シーナちゃんの笑顔……癒されるなぁ。
そうだよな。今焦っても仕方ないんだよな。
「ははは。俺、間違ってたかな……」
「はい。間違ってましたよ」
「はっきりと言うじゃん。でも、そうだよな。ありがとう、シーナちゃん」
「私は、エイガさんには楽しそうでいてほしいんです! なんか食事も無理やり食べてる感じだったし……」
シーナちゃんが悲しそうな顔をしている。
……。もしかして、食事の度にこんな顔させていたのだろうか。
気付かなかった……。
俺⋯。
◇◇◇
「シーナちゃん、ゴメン。ホントに俺が間違ってたよ」
「じゃあ、これ食べましょう。昨日買ってきたんです」
出されたのは、3切れのケーキ。
シーナちゃん、ユキちゃん、そして俺の分。
「おっ、椎名。ケーキじゃな」
匂いを嗅ぎつけたのか、ユキちゃんも来た。
経験値が一切無いモノを食べるのは、久しぶりかもしれない。最近はご飯やパンですら「経験値が入らないから」と避けていたから……。
「美味い……美味しいよ、コレ……」
なんか涙が出てきた。
19歳の娘みたいな女の子に諭されて涙するなんてな。
「焦らなくても良いんだよな?」
俺がモタモタした分、パーティもここで停滞してしまう。そう思ってた。
だってシーナちゃんは、もっと上を目指せる人だからね。
「良いんです。エイガさんはずっと遠回りしてきたんですから、今さらですよ」
「何を焦ってるのか知らんが、エイちゃんはエイちゃんで良いのではないかの」
そうだね。俺は俺だよな。
◇◇◇
早く上級ダンジョンを攻略したくて焦っていた。
ユキちゃんを一刻も早く18にして、ムフムフしたいから焦っていたわけじゃない事だけは、言っておきたい!
シーナちゃん。やっぱりいいコだよね。
エイガさん、反省してくださいね!




