58.真・勇将牙!
聖なる石は石と言っても、所々不自然に平らになっている。
ここに剣を当てて擦ってみる。包丁を研ぐ感じでシャッシャッと動かしてみる。
刃物を研ぐと言うと砥石やヤスリで削っていくものだけど、聖なる石で研ぐと削るというより、聖なる石を刀身に溶け込ませていくような感じだ。
20cm四方くらいだった聖なる石が、どんどん小さくなっていく。
数時間こすり続けただろうか。聖なる石が小さくなって無くなった後、とうとう俺の剣が完成した。
【真・勇将牙】
種別: 聖剣(刀)
効果: 攻撃力[大]/1体への攻撃時、攻撃力倍増/勇者がスキルを使用した場合に攻撃力倍増
特徴: 勇者が扱う片刃の聖剣。刀身は細長く、聖剣でありながら「無属性」で全ての属性スキルが使える。
……凄い剣を手に入れてしまった。
これで勇者スキルのバスターショットを撃てば、攻撃力4倍ということなのか!
刀身は美しく光り輝いている。
超級ダンジョンのレアドロップ品で、いくらするかわからない聖なる石を全て吸い込んでしまった。神々しくもあるが、たとえ闇属性スキルを使ってもその実力を100%発揮してくれそうな懐の深さもある……。
◇◇◇
試し斬りしてみたいと思い、裏山へ行く。
左手に乱斬丸。右手に真・勇将牙。二刀流である。
二刀流とは、左手に短めの刀を持ち牽制したり防御に使い、利き手に長い得物を持って攻撃する刀法。
ピッチャーとバッターをやるってのは二刀流とは違うよね。いや、元々野球ってのは投げて打って走るスポーツだから、本来ピッチャーとバッターをやるのは当然と言うか……。
子供の頃から「エースで4番」っていうもんね。
うわ、めっちゃ話が逸れたな……。
それだけテンション上がっちゃってたよ。二刀流!
ロマンだもんね。
ただ、切れ味を楽しむのは雑草相手である。
イマイチ締まらないが、経験値は入るし良いか……。
◇◇◇
あ、そうだ。
邪魔な木があったんだ。
ユキちゃんのダンジョンは今や畑だけじゃなく、果物が採れる裏庭、田んぼ、そして裏山までもがそのテリトリーになっている。
裏庭に果物のならない普通の木なんかもあって、切り落としたいとは思っていた。
左手の乱斬丸を鞘に収め、両手で真・勇将牙を持つ。
タメを作る。ここに敵はいない。いくらでもタメられる。
「断木斬!」
スパンと斬撃が通った。
あれ?
キレてない……ですか?
「キレてないっすよ」
いや違う。
「キレちゃいないよ」
だったかな。
まあ、俺をキレさせたら大したもんだよ……。俺をキレさせたらリングから降ろしちゃいないよ、マジで……。
マジでどうでもいいかな。
◇◇◇
えっ、ホントに切れてないの?
確かめようと木を触ったその時――木が倒れてきた。
うわ、やっぱキレてんじゃん!
切れ味が凄すぎて、木が切られたことに気付いてなかったのかな?
ってか、キレた木が俺の方へ倒れてくる。
当たったら⋯。リングから降りれんとはこう言う事?
じゃなくて、なんとかしないと。
倒れてきた木を勇将牙で切り刻む。
その後、乱斬丸で細かく切って薪にしておいた。
もうすぐ来る夏、この薪でバーベキューしようかな。
でも、切った跡を見ると面白い。
乱斬丸で切り刻んだ跡は、ややガタガタしている。
勇将牙で切った跡は、スッと平らになっていて。
最初に勇将牙のスキルで切った跡は、滅茶苦茶キレイでツルッツル!
器用Sのステータスをもっとエピソード作りたいんだけどね。
畑作りにはめちゃめちゃ役に立ってるし、今回刀が研げたのも、このステータスのおかげ!
とぶぞっ!




