56.千姫戦
理不尽な暴行の跡が残る竜型モンスターの残骸を見て、
「エイガさんの敵に対する容赦のなさって……」
「まあ、コヤツ(東悟)らのと同じじゃろうな」
2人がドン引きしていた。
昔はダンジョン学園で「敵に対しては一切の容赦は要らない」と徹底的に教え込まれたものだけどね。ダンジョン学園にもゆとり教育の風が吹いてるのかな。
ユキちゃんはダンジョンマスターだから、一歩間違えれば探索者と戦う羽目になるもんな。
あんなおじさん(東悟)怖いよね。
「沙織は優しいよな……」
ギュっとサオリにひっつくユキちゃん。BBA言葉使いで偉そうなユキちゃんだけど、可愛いところもあるんだよな。
実際外見はめっちゃ可愛いしね。
◇◇◇
西の丸廊下は一本道。
終点に少しひらけた場所があり、そこがボス部屋になる。
ボス部屋に優雅に座っている小柄な女性が、遠目からも見える。
【姫路城派生ダンジョン:西の丸ボス】
個体名: 【千姫】
人物背景: 豊臣秀頼・本多忠刻の正室。父は徳川秀忠、母は浅井長政の三女である浅井江。
と、ということは、おじいちゃんが徳川家康で、義理の父が豊臣秀吉で、大叔父様が織田信長だとう!?
戦国マニアが生唾モノの血筋ではないか!
話を聞いてみたいものだ。
「あの、盛り上がっているところ悪いんじゃが」
盛り上がっているというか……。
「ん? どうした、ユキちゃん」
「アレはダンジョンボスであって千姫本人ではないのでな。話とかはできんぞ」
「えっ、そうなのか?」
「千姫は人間じゃった。それは間違いないが、姫路城に残った念みたいなのがモンスター化したようじゃな」
「あ、そっか。歴史上は姫路城にはずっといなくて、江戸に帰ったんだっけ……」
「そこら辺の事情は知らんが……。じゃが、その属性は、大魔王(信長)を大叔父にもち、関白(秀吉)の義娘にして、将軍(家康)の孫と言うことは変わらん」
なんかよくわからないけど……。侍が刃を向ける相手じゃないよね。
ユキちゃんは侍の東悟を見る。
「このボス……やっぱり俺……無理だわ。戦いたくないもん」
東悟が言うと、
「私も……光属性が全然効かないから……」
聖騎士の翼も自信なさげだ。聖騎士は光属性の魔力を纏って戦うもんな。
「聖属性も効かないのよね」
聖女のサオリは聖属性の魔力で戦う。
……なんということでしょう。
【瑛沙の東翼】の3人が役立たずです。
派生ダンジョンとは言え、超級ダンジョンのボス戦で、超級パーティの3人じゃなくて助っ人の上級パーティの俺達でやるのか……!?
◇◇◇
「バフは最大限かけるわ」
「回復役は私がやるわ」
聖騎士の光属性能力上昇バフと、聖女の回復。効果は申し分ないだろう。なら俺は攻撃に専念できるな。
さらに、聖騎士の翼が言った。
「タンク役も任せて」
よし、じゃあやれるだけやろう。
「スマンな、俺は……役立たずみたいだ」
東悟……。俺の気持ち、少しは分かってくれたかな?
まあ、今の俺は役立たずじゃないはずだ!東悟もできることがあるはずだし⋯
◇◇◇
ダンジョンボス【千姫】は光属性のモンスターだった。
初手を取られたが、光属性の攻撃魔法は聖騎士の翼が受け切った。
光属性の攻撃は、同じ属性で打ち消し合う性質がある。こちらの光属性や聖属性も効かないけどね。
「よし、ユキちゃん! いける?」
「うむ。じゃが、ただの闇魔法では仕留めきれん。タメを作りたい」
いつもバスターショットを撃つときは協力してもらっている。
「わかった。やってみよう」
攻撃は翼が受けてくれる。
「俺も及ばずながら守るよ」
ユキちゃんの守りは東悟がやってくれる。
じゃあ、俺たちは……。
やれるだけ、やってみよう。
今の俺がどれくらい、超級ダンジョンで通用するのかを!
超級パーティの実力は、エイガが今苦戦している上級ダンジョンを軽く蹂躙できるほどなんですが⋯
3人がイマイチ活躍できない現状が、不安でありつつ、どこか嬉しいエイガさんなのでした。




