44.前向きな別れ
庁舎のダンジョンは消滅。
役所には平和が戻った。
「それじゃあ、私はここで。楽しかったわ」
「うん。東悟や翼たちにもよろしく。東と岩沙も元気なんだよな?」
少しだけ、サオリの笑顔が陰った気がしたが……。
「ええ、超級ダンジョンで待っているわ」
「必ず追いつくからな」
「ふふっ。【瑛沙の東翼】はアナタのパーティだからね。席は空いてるわよ」
サオリは笑って言う。冗談を言う時の彼女の顔だ。
「まあ、俺には今のパーティがあるからな。もう戻らないよ」
「そうですよ。エイガさんは渡しませんからね!」
「ははは。そういう事だよ」
握手して、サオリは去っていった。
来週から超級ダンジョンへの挑戦を続けていくのだろう。
◇◇◇
【東藤沙織】
楽しかったな。エイガも楽しそうだった。
あのシーナちゃんが少し気にはなるけど……まあ、アイツの好みは分かっているし、大丈夫かな。
今まで邪魔で煩わしくも感じていたモノが、頼もしく思える。
まだ学生の時、成長するにつれてエイガの気を引けるのが嬉しくもあり、恥ずかしくもあり……。
まあ、そんなのは昔のこと。
エイガとは別々の道を歩いた。
……はずだったのに。
エイガたちと別れて、1人で家路に就く。
冷静な外見とは裏腹に、心は乱れていたけれど……。
明日ゆっくりして、来週は姫路城まで行く。
つい去年のことだけど上級ダンジョンを攻略して、日本で5組しかいない超級パーティになった。
瑛沙の東翼の担当ダンジョンは【姫路城】
ダンジョン化して数十年経つ最古のダンジョンの一つ。
上級ダンジョン攻略まで10年以上を要したパーティにとって、超級ダンジョンは一筋縄ではいかなかった。
堀を越えて、攻略のとっかかりを作るための西の丸攻略すら、ままならない状況。
まず西の丸を攻略して、そこを足がかりに本丸を攻める予定なのに⋯。
加えて、斥候の岩沙歩と魔法使いの東希美の2人に限界が見えつつあり、2人ともかなり悩んでいるようだった。
ずっと一緒に戦っていたいけれどね。
せめて、欠員を1人埋めるべきなのかな。
とは言え、超級に挑戦できるくらいの実力があってフリーの人間なんて、性格が破綻した人ばかり……。
しばらくは、このまま頑張るしかない。……けど。
エイガ……。
待っているってのは、冗談じゃないからね。
相変わらず胸ばっか見てて、思いっきり童貞っぽかったけど……。
私だって30過ぎたけど、ちゃんと守ってるんだからね!
◇◇◇
——ドウテイ、ドウテー五月蝿いよ。お前だって処女だろうが!⋯だよね?
って、誰にツッコミ入れてるんだ俺?
「どうしたんですか?」
助手席に座るシーナちゃんに聞かれる。わざとではないと思うが、小柄なシーナちゃんには見上げられる感じになり、上目遣いな感じになってカワイイ。
「あわわ、前見て運転してください!」
「あ、ゴメンゴメン」
……。
「サオリさんとは、どんな関係なんですか?」
「む、昔のパーティメンバーだよ。それ以外ないよ」
す、好きだったけどね。一度だけでも触ってみたかった……。
「エイガさん……元のパーティに戻っちゃうんですか?」
「無い無い。このパーティを解散させることは無いよ。絶対に!」
「信じてますよ」
「特に、ユキちゃんから称号を貰った俺たちは運命共同体なわけだしね」
「運命……私とエイガさんが、運命……」
「あ、いや、そんなに重く受け止めないで。シーナちゃんが抜けたいって言ったら、いつでも大丈夫だからね」
「そんな事は絶対にならないですって! ……っ重く受け取りたいですっ」
「えっ? なんて?」
「私は重いですっ! って言ったんですよ!」
「えっ? シーナちゃん軽いじゃん。小柄だし、40kgくらいじゃないの?」
「そんな訳、無いじゃないですか!」
それからは、冗談を言い合って帰路に就いた。
若い女の子を助手席に乗せてドライブ。ユキちゃんは疲れて眠ってるけど……。
笑い合って会話が弾む。
楽しいなぁ。
エイガさんは、大きいのが正義な人です!
⋯そんなんだから童貞なんだよ!
と言うわけで、シーナちゃんは私が⋯
シーナ「ヤです。私はエイガさんのものですから」
⋯特権を発動して、シーナちゃんに瑛史さんスキって言わせたい⋯




