表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/31

4.ダンジョンマスターのユキちゃん


子供の頃、俺は長期休みになるたびに、よくこの祖父の家に遊びに来ていた。


畑からは、いつも驚くほど美味しい野菜が採れた。オジイの作った野菜は不思議な魔法でもかかっていたのか、重度の野菜嫌いだった俺でも、なぜかパクパクと美味しく食べることができた。


ここでの虫捕りや川遊びには、都会のゲームでは決して味わえない泥臭い楽しさが詰まっていた。


けれど、今になって思い出してみると――俺はここで、一人で遊んでいたわけじゃなかった。


ゲームより楽しいと思えたのは、いつも『あのコ』が一緒にいてくれたからだ。


ここへ来ると、いつだって一緒に遊んでくれる近所のお姉ちゃんがいた。


そのお姉ちゃんは、数年経つと俺と同い年の女の子になり、さらに年月を経て俺が中学生になる頃には、まるで妹みたいな年齢の見た目になっていた。


そう、あの娘は、出会った頃からまったく成長していなかったのだ。


今思えばあまりにも奇妙で不可解な話だが、子供だった当時の俺は「田舎ってそんなものなのかな」と純粋に受け入れていた。


初めて、そのコと遊んだ日のことを覚えている。

『ジーちゃん! 今日ね、ユキちゃんって子と遊んだよ!』

『ユキちゃん……? そんな娘、この近所にいたかのう?』

『うん、あのコだよ! あれ? ……いなくなっちゃった』


俺が指さした先を見つめ、オジイは少しの間、何事かを深く考え込むようにして呟いた。


『……そうか。エイちゃんには、見えるか。そうか、そうか……』

『ん? ジーちゃん、どうしたの?』

『いやな、主様ぬしさま……いや、ユキちゃんと言ったかの? エイちゃん、そのコと仲良くしてな』

『うん! 俺、ユキちゃん大好き!』

『そうか、そうか……。なら、良かった』


それ以来だった。夏休みや冬休みになるたび、俺は必ずこの家に足を運び、ユキちゃんと遊ぶようになった。


オジイが遺言状で、親戚一同を差し置いてこの家の管理人に俺を指名したこと。それは今思えば、あの不思議な女の子・ユキちゃんと何か深い関係があったのかもしれない。


◇◇◇


「……さて、すっかり日も暮れちゃったな。家に入ろう」

ダンジョンマスターの事はさておき、このタイミングでなぜか思い出した「ユキちゃん」と、小さく呟いてみる。


この家に帰ってくると、どうしても当時の記憶が鮮明に蘇る。中学に上がったあたりから、なぜかパタリとユキちゃんとは会えなくなってしまい、それと同時に俺もこの家へあまり来なくなってしまった。


けれど、幼い頃の少し不思議で、温かい大切な思い出として、この家とユキちゃんのことは今でも俺の心に残り続けている。


ふと、我が家の縁側に目を向けた。


「……あれ?」

暗がりの中、縁側に小さな人影がぽつんと座っているのが見えた。

丈の短い着物を身に纏った、7〜8歳くらいの女の子だ。


「エイちゃん。呼んだか?」


鈴を転がしたような懐かしい声が、夜の静寂に響く。

その顔を見て、俺は息を呑んだ。


「ユキちゃん……?」

「おお! わしの事、ちゃんと憶えていてくれたか!」


満面の笑みを浮かべて立ち上がったのは、あの頃から10年以上が経ったというのに、何一つ、一ミリの狂いもなく当時のままの姿をしたユキちゃんだった。


ユキお姉ちゃん。ユキ。ユキちゃん。


俺の成長とともに呼び方は変わっていったけれど、彼女だけはあの日のまま、ずっと変わらない。


「本当に……やっぱり、ユキちゃんだ……!」


嬉しい。理由も理屈もどうでもよくなるくらい、素直に歓喜の感情が胸の奥から湧き上がってくる。


「儂もまたおぬしに会えて嬉しいぞ! エイちゃんが大きくなって、儂のダンジョンに帰ってきてくれるなんてな」

「……え?」


嬉しさに浸っていた俺の思考が、一瞬でピキリと凍りついた。

いま、なんて言った? 儂のダンジョン……?


脳裏をよぎるのは、さっきハチの巣をマグナムジェットで爆破(駆除)した直後に端末に届いた、あのクエスト報酬のシステム通知。


『特別報酬:ダンジョンマスター出現』。


「っえ? えええええっ!? ユキちゃん、君……ダンジョンマスターだったの!?」


俺の叫び声が、夜の田舎の庭に虚しく響き渡った。

ダンジョンマスターは幼女でした。

これからよろしくです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ