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3.クエスト1 蜂退治

【ステータス】

名前: 三雲 瑛雅ミクモ・エイガ

レベル: 6(UP!)

称号: 勇者

戦闘力: 14(+2)

持久力: 14(+2)

魔法力: 14(+2)

魔力量: 14(+2)

器用さ: S

運: S

成長型: 超晩成


よし、またレベルが上がった。

試しに、物置から持ってきたクワで庭の土をゴツンと耕してみる。


「……うおっ、すごっ!?」


面白いようにザクザクと土が掘れる。土中に埋まっていた重そうな石も、片手でひょいと持ち上がってしまった。


いける。いけるぞ! 本当にレベルが上がって強くなっているんだ。

そのままの勢いで、あっという間に畑の予定地を一通り耕し終えてしまった。


ステータスが「14」になったということは、一般人の平均「10」と比べて、複雑な係数があるようで単純に能力が1.4倍になったという話ではないが、身体能力のベースそのものが、目に見えてビルドアップされているのを実感する。


身体能力だけじゃない。視力や認識力まで格段に上がっているようだ。


ふと庭の隅に目を向けると、今までなら見落としていたであろう、小さな羽音がはっきりと聞き取れた。


夕暮れ時。道具小屋のほうに、何かが集まってきている。

……ハチだ。10匹ほどだろうか。よく見ると、小屋の軒下に15センチほどの立派な巣が作られていた。

その瞬間。


――ピコン!


小気味いい電子音とともに、視界の端末画面にウィンドウがポップアップした。


【クエスト発生:蜂退治】

概要: 小屋に発生したアシナガバチの巣を退治せよ。


「お……? このお庭ダンジョン、クエストまで発生するのか」

『ダンジョンには意志がある』


現役の探索者時代、そんな仮説を耳にしたことがある。

世界中の探索者は、例外なくこの身分証代わりの端末を持っている。どういう仕組みかは解明されていないが、端末はダンジョンからの情報を受信することができるのだ。


ダンジョン内で特定の条件を満たしてクエストが発生すると、攻略中の探索者の端末に通知が入り、見事達成すればドロップアイテムや特別な報酬がもらえる。


通常なら、見つかったダンジョンは「ダンジョン協会」という公的組織に報告し、危険度を査定して登録する義務があるのだが……。


「まあ、経験値になる虫や雑草、微生物はいるけど、凶悪なモンスターは出ないしな。別に危険はないし、報告は後回しでいっか」


さて、問題は目の前のハチである。

……どうやって倒したものか。


かつて実家の庭にハチの巣ができたとき、軽い気持ちで長い棒でつついたら、怒り狂ったハチが一斉に襲いかかってきて死ぬほど怖い思いをしたトラウマがある。


というわけで、スマホを開いてお気に入りのAIちゃんに相談してみることにした。


『アシナガバチの駆除ですね。市販の蜂用殺虫スプレーが非常に効果的です。巣から少し離れた安全な距離から噴射してください』

「なるほど、殺虫スプレーか」


さっそく最寄りのホームセンターへと車を走らせた。

殺虫剤コーナーへ行くと、仰々しいパッケージの商品が目に飛び込んでくる。


「……マグナムジェット? なんか名前からして凄そうだな。これにするか」

念のため、予備も含めてまとめ買いしようとレジに5本持って行ったら、お会計が1万円近くになって目玉が飛び出そうになった。

た、高い……! よく考えたら1〜2本で十分だったかもしれない。出費に少し冷や汗を流しながら家に引き返す。


すっかり暗くなった庭へ戻り、防護用に長袖長ズボンを着込み、説明書の注意書きを熟読していざ出陣。


道具小屋の軒下、ターゲットの巣に向けてノズルを構える。


「オラオラオラァーッ!」


トリガーを引くと、凄まじい勢いで薬剤がブシューッと噴射された。

強力な霧が巣を直撃する。すると、ハチたちが羽を震わせる間もなく、ボタボタと次々に地面へ落ちていった。


「お、めちゃくちゃ効いてる! 効果はばつぐんだ!」


最近の市販の殺虫剤の威力、パねえな。完全に現代科学の勝利である。


数十秒ほど勢いよく噴射し続けたあたりで、突然、シュー……とガスだけが空噴射されるような音に変わった。


「えっ、嘘、もう1本終わり!? コスパ悪っ!」


焦って周囲を見回したが、すでに生き残っているハチの姿は一匹もなかった。

俺は足元に落ちていた適当な木の棒を拾い上げ、もぬけの殻になった巣を綺麗に叩き落とす。


その瞬間、端末が激しく明滅した。


――ピロン♪


【クエストを達成しました】

報酬: 経験値(大)

ドロップアイテム: 魔力の蜂蜜

特別報酬: ダンジョンマスター出現


「おおっ、経験値(大)だって!?」

期待してステータスを確認するが……残念ながらレベルは上がっていなかった。


まあ、ここはいつもの通りだ。『超晩成』と『勇者』という、二重の経験値大食いジャンキーを抱えている俺の宿命である。


いつもなら泣きそうになるところだが、虫を潰しても草を引いてもレベルが上がる今の俺には、驚くほど心の余裕があった。


それよりも、気になるのはドロップアイテムだ。やっぱりハチだけに蜂蜜だろうか?


目の前の空間に光の粒子が集まり、小さな小瓶がコロンと転がり出た。


【ドロップアイテム:魔力の蜂蜜】

効果: 疲労回復(大) / 全ステータス永続+2


「は……? 全ステータス、永続プラス2……!?」

思わず声が裏返った。


探索者界において、ステータスを永続的に上昇させるアイテムなど滅多にお目にかかれない超一級品だ。もし市場に出せば、数十万……いや、ヘタをすれば桁が一つ違うレベルで跳ね上がる。


とはいえ、今の俺にはそんな高額な品を安全に裁く裏ルートもコネもない。

それに、さっきから慣れない庭仕事をして体はガチガチに疲れている。何より、とにかくステータスが欲しい。


「……よし、自分で飲んじゃえ!」

えいっ、と蓋を開けて一気に口に流し込む。


濃厚で上品な甘みが口いっぱいに広がり、喉を通った瞬間、カッと全身が熱くなった。体の芯から、凄まじいエネルギーが満ち溢れてくる。

慌てて画面を更新する。


【ステータス】

名前: 三雲 瑛雅ミクモ・エイガ

レベル: 6

称号: 勇者

戦闘力: 16(+2)

持久力: 16(+2)

魔法力: 16(+2)

魔力量: 16(+2)

器用さ: S

運: S

成長型: 超晩成


「おおお、いい感じだ……!」

疲れも完全に吹き飛び、体が羽のように軽い。

最高の報酬にホクホク顔を浮かべていた俺だったが、ふと、視線が画面の最後の一行に留まった。


――『特別報酬:ダンジョンマスター出現』。


「……ところで、これって一体どういう意味だろ?」


次回、ダンマスが登場!

ハチジェットで蜂の巣対峙したことがあって、その感動を書いてみました。

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