33.祭〜シーナちゃんの過去
お祭りに行くなんて随分久しぶりだな。最後に行ったのって学園を卒業して、探索者として初級ダンジョンを討伐できるかどうかって頃かな。
ダンジョン災害から守ったお礼にと、とある孤児の施設に招待されたことがあった。
施設の小さい女の子からはモテてた記憶はあるけれど、探索者としては全然レベルが上がらなくて、足手まといになりつつあった頃⋯
うぅ、涙出てきたよ。
ここのお祭りは、いわゆる田舎の祭りだった。
神社に、近所の人たちが運営する数件の屋台ができて、金魚すくいとか綿菓子とかお好み焼きなんかを売っている。そして、子どもたちがお神輿を担いで、村を練り歩くのを見物する。
神社では、出し物があって五穀豊穣を願う舞いなんかが披露される。
家でゆっくりしていたら外が賑やかなので、出てみると丁度お神輿が家の前まで来ていた。
あれ?
神輿の上に乗ってるの、ユキちゃんじゃねぇ?
「シーナちゃん。アレって……」
幽体のユキちゃんが、神輿の上でふんぞり返っている。
「ユキちゃんですよ。なんでもユキちゃんって、あの神社の御神体らしいです。『お祭りは、ある意味仕事じゃ』って言ってました」
お、思い出した。
子供の頃もここのお祭りに参加したんだけど、ユキちゃんに連れられてお神輿に登って滅茶苦茶怒られた事があったなぁ。
あの時も、神輿の練り歩きの時はユキちゃんが上に乗っていたなぁ。俺は神輿に登った罰として、一番重いところで担がされたけど。
あれも今となっては良い思い出だ。
ユキちゃんは御神体業が忙しいようなので、シーナちゃんと二人で神社に向かう。
まあ、軽く屋台でなんか食って、獅子舞の踊りとかの出し物を見て終わりかな。
「ふふふっ。エイガさんと二人でお出かけ……」
シーナちゃん、なんか楽しそう。
「まあ、こんなおじさんじゃなきゃ、デートなんだろうけどな」
「ふふっ。二人なんですから、もはやこれはデートですよ」
「シーナちゃんがそう思うなら良いけどね」
ふと手を繋いで楽しそうに歩いていく、中学生くらいのカップルが目に入った。
……これ、デートなら手、繋ぐのか。いやいやいや。俺とシーナちゃんはそんなんじゃないし……。
シーナちゃんと並んで歩いている。手を伸ばさなくても手が触れ合う距離。近いかなと思うけど、今さら離れるのも変だし、さっきから小指が触れたりするけど……。
えっと、どうするのが正解なのかな。
◇◇◇
【椎名 薫】
さり気なく(?)デートってことをアピールして、ほぼゼロ距離で寄り添って歩いてるのに。
小指にワザと触れて、「手を繋ぎませんか」って……。
伝わらないのよね。このヒトには。
さっき通りかかった中学生カップルが羨ましいよ。
私も⋯って思うけれども。
私とエイガさんが初めて会ったのは、探索者のパーティなんかじゃない。
当時の私はまだ小学校にも行ってなくて、施設に入っていた。
パパとママはいない。度重なるダンジョン災害でたくさんの大人が死んで、私のような孤児がたくさんいた。
ダンジョンのせいで滅びかけたこの社会は、今度はダンジョンから採れる資源で復興し始めていた。
各地に孤児院が建てられて、親を失った子どもたちにも行き場ができたけど、寂しさまでは埋まらなかったな。
そんな時、大規模なダンジョン災害が発生して、私がいた施設もダンジョンに巻き込まれた。
ただ大規模な災害だったらしく、端っこの孤児院まで手が回ってなくて、探索者の助けもなくて、モンスターがそこまで来ていた。
そこを助けてくれたのが、エイガさんがいた学生パーティだったの。
今は超級だという、エイガさんが初めてに所属したパーティ。
攻撃は他の人が担っていて、エイガさんは泥臭く走り回っているお兄さんだった。カッコよくは無かったかもしれないけど……私がモンスターからの攻撃を受けそうになった時、身を挺して守ってくれた。
「お兄さん……血が……」
と言うと、ニカッと笑って、
「大丈夫だよ。立って走れるか?」
優しく言ってくれた。
そんなの絶対に惚れちゃうじゃん。
幼稚園の私にはあまり理解できなかったかもしれないけど……。
……ううん。ちゃんとわかってた。何か雷に打たれたようなショックと輝くようなエイガさんの笑顔が、強烈な記憶として残ってる。
一目見て、ビビッときたんです。
そんな感じらしい。




