14.ダンジョンとは
ダンジョン――。
それは数十年前に、突然地球上に発生したものらしい。
このじいちゃんの庭は昔からあったし、他にも「パワースポット」と呼ばれるような場所としてのダンジョンなら、古来より存在していたとも聞く。
だが、現在「ダンジョン」と呼ばれているものの多くは、古い建物や天然の洞窟などが元になっていることが多く、後発的に発生している。
内部は亜空間に繋がっており、その広がりや構造はダンジョンごとの特性に依存しているのだ。
第二次世界大戦後、日本が高度経済成長期に入り、世界が東西冷戦の真っ只中にあった頃。突如としてそれらは世界中で同時多発的に発生した。
最初、各国の政府の方針は「発生したダンジョンは封鎖一択」だった。
しかし、入り口を物理的に塞いだ程度では内部から溢れ出すモンスターを止めることは出来ず、さらにダンジョン自体も次々と新しく発生していく。
また、銃器などの現代兵器がモンスターに効きにくく対策には困難を極めた
(畑ダンジョンの蜂はただの蜂だったので、殺虫剤が効いた)
そんな混乱の中、特殊な力を持つ「探索者」として覚醒する一般人が現れ始めた。
折しも石油危機などのエネルギー危機に直面していた世界において、ダンジョン内からは「魔石」や未知の「鉱物」といった莫大な資源が採掘できることが判明。
政府は方針を180度転換し、覚醒した探索者によってダンジョンを管理・攻略させる方向へと舵を切ったのだった。
そして設立されたのが、現在の『ダンジョン協会』である。
探索者は基本的に協会へ登録し、依頼を受けてダンジョンを攻略する。登録されるとスマートフォンに似た専用端末が配布され、情報の検索や依頼の受注ができる仕組みだ。
「エイガさんやユキちゃんのことは信じてるんですけど……ここのお庭、この端末には登録されてないのよね」
そう言ってシーナちゃんが自分の端末を見せてくれたが、画面には何も表示されていない。
確かにダンジョン教会には、申請はしたが受理されていない。端末にダンジョン情報が反映されていないことが、ダンジョン認定されていない理由なのだろう。
だが、俺の端末にはしっかりと『エイガのダンジョン』と表示されているのだ。
「ここは『エイガのダンジョン』だからのう」
というユキちゃんの訳の分からない説明があったのだが――
「そっか。まぁ、エイガさんだもんね!」
となぜかシーナちゃんは一瞬で納得してしまった。素直で良い子すぎるだろ。
と、端末の検索画面に一つの初級ダンジョンが引っかかった。
近所の川がダンジョン化しており、協会からも討伐依頼が出ているらしい。田舎すぎて誰も攻略に来てくれないようだ。このまま放置すると「ダンジョン氾濫」と呼ばれる、モンスターが外へ溢れ出す災害に発展してしまう。
「シーナちゃん。早速なんだけど、近くの川が初級ダンジョン化しているみたいなんだ。この討伐依頼、受けてみてもいいかな?」
「はい! じゃあ明日ですね。準備もありますので、明日の朝また来ますね!」
「あ、じゃあ――」
「はいっ! 今日はこの辺で帰りますね。お疲れ様でした! ユキちゃんもバイバイー!」
手を大きく振って、元気よく帰っていくシーナちゃん。ユキちゃんも、幼女の姿並みにバイバイと手を振って、なんだか可愛い。
シーナちゃん。あんなに優秀で可愛い子なんだから、俺みたいな追放されたオッサンなんかと一緒にいない方が本人のためなんだけどな……。
でも、ダンジョン攻略の感覚を取り戻すまでは、パーティーにいてくれると本当に助かる。
まあ何より、単純に可愛いし明るいから一緒にいて楽しいしね。
明日からのダンジョン探索。不安もあるけれど、楽しみな気持ちの方が遥かに大きくなった。
ふと見ると、ユキちゃんからどこか生温かい視線が送られてきている。
「エイちゃん。カワイイ子で良かったのう」
「……。まぁ、そうなんだけどさ。ユキちゃんのレベルを上げて、大きくなってもらうっていう目標は変わらないよ?」
あの夢にまで見た『アレ』のお相手……は、まあ本当にユキちゃんが成長してくれたらだけどさ。
「本当に、儂が大きくなる前に椎名に卒業させてもらっても全然良いからのう」
「はいはい……」
そういえばシーナちゃん、完全なペタンコだと思ってたけど……控えめではあったが、実は隠れてたというか、以前の探索用の服の上からだと分かりにくいだけで、今日はノースリーブで、⋯そうじゃなかったな……。
デッカくはないが、無いこともない⋯、可愛い感じで俺は好き!
いやいや、あのコに対してそんな邪心を持つなんてダメだろ俺!
雑念を振り払うように、立ち上がる。
「さ、畑の水やりに行ってこよ」
なんだかんだで、野菜をしっかり育てるってのが俺のメインクエストだからね。
まだ探索せんのか!
これは、ラブコメだから⋯?
ち、違うよ。これは、ダンジョンを無双する話ですよ!




