11.再会
ズルズルとラーメンを啜りながら、ユキちゃんがふと呟いた。
「しかし……良かったのかの?」
「ん? 何の話?ネギは入れ放題だよ
」
ネギなら畑で腐るほど採れたからね。今日は入れ放題だよ。
ちなみに、葉物野菜はあんまり経験値が入らない。やっぱりタネの部分が良いみたいだ。
「なんか、スキルを使って隠れておるヤツがいるぞよ」
「えーっ!? 早く言ってくれよ!」
「いや、てっきり気づいておると思っておったのじゃが……」
「勇者って戦闘特化だから、そういう隠密系の察知には弱いって知ってるだろ!」
「すまぬ。お腹が空いておったからのう」
……。まあ、それなら仕方ない……のか?
「なんだろう? まさか俺の命を狙って……?」
「追放された底辺勇者を狙うほどの価値は、無いと思うがの」
「なんだと……。そんな事実でも酷いこと言わないでくれよ!」
なんて軽口を叩き合っていると、ユキちゃんはズルズルっとラーメンを食べ終えた。
「ごちそうさま。……ふむ、まだおるようじゃな」
そう言って、トコトコと玄関の方へ歩いていくユキちゃん。
そして玄関の前で、何かの服の裾をグイグイと引っ張るような仕草を見せた。
『えっ、何!? 何かに引っ張られる……ヤダっ!』
女性の情けない声が聞こえたかと思うと、【隠蔽】が解け、そこにはショートカットでやや中性的な可愛らしい若い女性が姿を現した。
「あれ……? シーナちゃん?」
さっき思いを馳せていた元パーティーメンバーの、椎名薫さんがそこに立っていた。
「ははは……エイガさん。お久しぶりです……」
「いや、『お久しぶり』というか……どうしたの?」
「はい、探しましたよ! ……って言うか何ですかコレ、何かのスキルですか!?」
見ると、まだユキちゃんがシーナちゃんの服の裾を引っ張っている。
シーナちゃんにはユキちゃんの姿が見えないみたいだから、服だけが引っ張られる現象に焦っているようだ。
「あ、ユキちゃんっていう女の子だよ」
「へぇ~……って、どういう事ですか!?」
「まあ、座敷わらしみたいなものらしいよ」
「エイちゃん、この娘は悪い人ではないようじゃからトクベツじゃ――」
ユキちゃんがそう言って姿を現すと、シーナちゃんは目を丸くした。
「あれ!? 女の子……今までいなかったよね?」
「儂はずっとここにおるがの」
「えーっ! 何その話し方、カワイイ〜〜!」
「あー! もう、ウルサイのう!」
「あ、また見えなくなった!?」
ユキちゃんはイタズラっぽい笑顔を見せている。
「カワイイ」と言われたのが満更でもないのだろう。姿を消したのは照れ隠しかもしれない。
「まあ、立ち話もなんだから、家に入るか」
……あ、若い女の子を家に招き入れるなんてダメだろ俺。田舎だから近くにはないけれど、ファミレスかどこかに移動した方が――
「良いんですか!? では、お邪魔しま〜す!」
嬉しそうに靴を脱いで家に入るシーナちゃんを、止めることはもうできなかった。
こんなオッサンの家に入るのに、そんな無防備な笑顔を見せなくても……。
◇◇◇
居間のちゃぶ台にちょこんと座る美少女。
まあ、年は高校を卒業して18歳と成人してはいるけれど、シーナちゃんは童顔で少年っぽく、中学生に間違えられてもおかしくない見た目だ。
……どことは言わないけれど、素早い動きが必要な斥候職には不必要な「2つの山」も控えめで、美少女という言葉がピッタリである。
無いことも無い⋯か。
「……。エイガさん、久しぶりに会ったのに失礼なこと考えてません?」
「!」
あ、目線でバレちゃった。ゴメンね。
いやー、エイガさん!つい見ちゃいますよね。
どことは言いませんが⋯




