四話「信用のために」
私たちが町を駆けていると、建物の壁と壁の間の隙間道から声をかけてくる者がいた。
「吉田さん、こちらです」
「ランバースさん?」
「……(奴は忍びか?殺されるぞ?)」
「彼女なら平気だよ。それに彼女自身もそれなりに私たちに頼りたいことがあるみたいだね」
私は彼女に近寄る。ただ言葉とは裏腹に私の手には剣の持ち手を添えられていた。信用はしているつもりだった。しかしこの町に来て色んなことが起きているので信用しづらかっただけであった。
「あら、言葉と真実は裏と表ね。そうだわ、ならこうしましょう。私のクサイとあなたの剣を交換しましょ?そしてその剣であなたが私にして欲しいことをさせるの。もちろん、心臓を貫いてなんて言われたら躊躇いもなくなるわ。だってそれがあなたへの証明になるから」
彼女はそう言うなり、クサイが詰まった腰に巻いた袋を私の方へと投げつける。それも荒っぽく。彼女の行為から「なんで信用してくれないの?」みたいな強い思いが感じられて歯痒かった。だが、私は敵がそれを利用して私を狙う可能性を考える否定は出来なかった。だから私は国境を投げ捨てるなり、そこに落ちてるクサイを受け取る。そんな私を見て、彼女は躊躇なく国境を手にする。
「さぁ、何でもいいから命令して」
その言葉に「信用してくれないならこの命いらない」という思いが隠れているかのように聞こえた。しかし私の中の「騙されてはいけない」という思いが信用する気持ちを害する。だからと言って命を落とさせる気は元からない。
「なら、切り落とさない程度に軽く血が流れる程度に左手首をそれで斬ってよ。軽くでいいんだからな?」
私の心の中で「騙されるな」と「甘い」という言葉が脳裏を弄くり回す。それでも信じたかったのだ。仲間の言葉や思いを。
「御意」
彼女は躊躇なく、左手首をさらけ出し例の剣を軽く当て横に軽くスライスした。するとみるみる溢れ出す赤い血が地面へとこぼれ落ちる。
「これで……はぁはぁ。信用してくれましたか?」
「……あぁ、もう十分だ。悪かった」
私はよろめく彼女を抱き寄せて彼女の左手を自分のローブの端切れをちぎって止血をさせた。そして側にあった壁を右手で強く殴った。




