七話「忍び勝ち」
私たちがそんな感じで仲間が眠る墓の前で話し合っていると、木の枝を鳴らす音が聞こえる。風でも吹いているのだろうか。それとも……。
「見つかったかな?歩いてる半透明の人たちに」
「あらあら、どんなに忍んでいたとしても半透明だなんてひどいですわね、ユキさん。それにあんな薄い方々がたくさんいるなんて忍び勝ちだと思っても何か勝ち損だわ、これ」
その声の主を見て確かに彼女が墓で眠っているのかについて確認することを忘れていた。そもそも一緒に宿の中に入っていたのかさえも不明な人物であった、ということはさすがにランバースさんに向かってなど言えるはずもない。それにしても彼女は私のことに気が付いてないのだろうか。
「あっ、さっきここを見つけた時に墓の前でどうしたらよいのでしょうか、とか嘆いていた人だ。彼女のことを知っているなら知り合いかな?」
「あのぅ、ユキさん。一人で何をなさってるのですか?まっ……まさかあなた様の裏切りですか!?考え直してください。今すぐに」
一人?そうか、どうやら町で歩いている輩は見えるのに花咲さんは見えないのか。というか裏切りとか。教えて……いや、待てよ。これは楽しめそうだ。
「ふはははは。そうよそうよ。今までの溜まったストレスなどを発散させるためよ。今から私の超能力を利用して墓に眠ってる彼らをぺちゃんこにしてあげるんだから。嫌ならあなた裸になりなさい」
「それでいいなら了承です」
彼女は自分の巻いてある布に手を掛けている。
「冗談よ。というかくのいちなら少しぐらい疑問に思いなさい……ってあれ?」
彼女は私をまるでゴミを見つめるような目でこちらを見ている。その近くには花咲さんがいて彼女はランバースさんの肩に手を乗せていた。
「吉田様。話に聞いたことがありますが、あなたはそこまで最低なお方だとは思いも知りませんでした」
「花咲さん。ランバースさんになんて説明した?」
「想像にお任せします。もちろん、ちゃんと見た通りに説明しましたよ、私にとってのいい意味で」
花咲さんにとってのいい意味は悪い意味でしかないような。初めて会った時の初めての町の武器や防具を買いに行った店で私に勧めようとしたあの道具の数々を思い返せば、そう思えるだろう。
「ランバースさん、彼女の言ってる言葉は半分盛ってるのでそんな目で私を見ないで……」
「女の人の格好って涼しいですか?」
「まぁ、メイドと言ってもスカートだし。涼しいね」
「外道」
「外道なんていう言葉はかわいそうよ、ランバースさん。"外道"って言葉の方がね。そうね、ゲボでいいわね」
「ゲボ」
「ゲボ」
ランバースさんの言葉に添えて繰り返すかのように花咲さんは言う。
「さすがに怒るよ?裸になってそこら辺、歩き回るぞ?」
「それが出来るのならどうぞ。ユキさんが自殺すると思いますがね。あぁ、かわいそうに。ユキさんがあなたと入れ替わったことで何も知らないまま裸にされるとは。えっ?彼女が見てないから大丈夫。私たちが証明しますから。それに……あっ、これは後にしておきますね」
「おい、花咲さん。今、何を隠した。まっ、いいが。それよりもこんな私たちのガールズトークに入りたいのかな?君たち?」
いつの間にか私たちの周りを囲むように集まり出す半透明の人々。その手には木の棒から剣や盾、銃などの武器を持っていた。
「さぁ、始めようか。今夜のナイト劇場を」
上から若い男の声が聞こえたが、半透明の人たちでその先が見えなかった。




