二話「吐き気天使」
私たちは町に入っていく。不気味な目に入ってくる光景に加えて不気味な声が耳に入ってくる。この中にやはり花咲さんはいるのだろうか。いたとしたら……。
「ちょっと何よ、最低男さん。私の顔を見て。もしかして私に悪趣味を?」
「うっせいよ、ダメイド」
こんなユキさんとの会話が久しぶりにできることが私にとっては嬉しかった。
「よし、疲れたから今日はこの町の宿で寝るか」
「は?何言ってんだよ、ボケルファ」
「ボケてねーよ」
「ゲボルファ」
「ユキさん、吐いてないよ?吉田、彼女に何を言わせんねんがな」
「おえー……」
近くで足をすくめて桃姫さんは気持ち悪そうにしている。
「ほら、あなたを見たから桃太郎だったか、織姫だったか忘れた子が吐いちゃったわよ。汚らしい」
「ゲボルファってそういう。というか桃姫だし。というか汚らしい言うなよ、かわいそうだから。てか、ユキさんのせいでツッコミ三昧だな」
「それがうちのダメイドです」
「なるほどー」
「納得しないで下さい。吉田さんは生きないで下さい」
「おい、今すぐ死ねってことか?それ?あん?やんのか?裸にして十字架に立ててここに置いていってもいいんだぜ?」
「アルファさん、聞きました?私のぅ、麗しぃこの体を痛めつけてやるだってぇ。ユキ、悲しい……ぐすん」
泣くふりをする彼女。さすがのアルファもわかっただろうと思っていたが、彼は私を腐った生ゴミを捨てに行くのが面倒だから家で流れてくる雲を見つめる暇人のような目で見てくる。私が内心卑怯と思っている中で一人の声が大きく響く。
「ちょっとあんたら?桃姫がこんなに苦しんでるんだから私と共に助けてあげなさいよ」
ユリさんのその声に促されて見た彼女は羽はしわしわに萎れていて青ざめている。吐いてはないらしい。そしてそんな彼女をユリさんは背中を撫でたり、水か何かを飲ませたりして落ち着かせている。この光景を見ていると、有川さんが私たちのために戦って羽がボロボロになりながらも私たちで何とかしようとしていた中での対応の光景に似ている。うちの天使はどこへ飛んでしまったのだろうか?遠くに行ってないことを祈るのではない。ただただまた共に私の側にいる光景を祈るばかりである。




