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室町ひょうすべ拾遺1  作者: ずずつすず
十代将軍義材
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35/82

西海鯨波

 延徳三年(一四九一)四月二十一日、というから、政知が没してすぐだ。義材は六角行髙討伐の号令を発し、親征軍を編成した。「大名共悉以罷上者也(大名ども悉く以て罷り上がる者也)不仰出躰も面々罷上云々(仰せ出されぬ体も、面々罷り上がり云々)」尋尊の『大乗院寺社雑事記』だ。仰せ出されぬ、つまり、特に招集命令を受けていない大名まで馳せ参じた。

 義材と対立する立場にある細川政元さえ、しぶしぶ家宰の安富元家を派遣している。他に、細川義晴、彼は足利家の「義」の偏諱を授かった、政元に対抗する寵臣だ。

 畠山尚順(ひさのぶ、妹が大内義興室)

 斯波義寛(よしひろ、守護代・織田敏広、織田寛広とともに参加)

 武田元信(若狭武田氏、妻は伊勢氏娘)

 赤松政則

 京極政経

 彼らは、応仁の乱で東軍に属した大名だ。義材が「西軍大将軍」の子供であることを考えると、まさしく、声をかけられないものも馳せ参じていたのだ。ーー個人的には、あの徹底した西軍対決派だった赤松政則が参加していることに驚きを禁じ得ない。他ならぬ佐々木源氏からも京極政経が参加。ーー武田氏は、安芸武田氏以外は、やはり秦氏カラーが薄いか。

 そして

 大内政弘

 政弘が来た。第一次六角氏討伐では、家臣を派遣させて間に合わせていた。

 (大将軍《《御嫡男》》のお召しとあらば)

 こたびは、政弘自身の出陣である。

 

 ーーそれは、後ろ盾を欲する大内氏の事情、海の国の指針があるにせよ、どうも、作者はこういう「中国者の律儀」には感じてしまう。ーー由来、貿易業者が、自分たちに利益をもたらしてくれる陸の要人を遇する態度というのは、信用に値する、懇誠なものなのではないか。

 そして、この美風は毛利氏にも受け継がれ「中国者の律儀」は、江戸幕末時代まで、清新な印象を与えることになる。

 

 政弘が動いたから、でもあるだろう。

 元西軍からは、土岐成頼、一色義寛も参加。彼らも、第一次討伐は家臣を派遣していたが、こたびは自身が兵を率いている。それなら山名氏はどうかといえば、山名政豊は、家臣を派遣して済ませている。

 ーー一族単位で考えるのは良くないのだろうが、どうも、新田氏、その分家山名氏は、圭角(かど)のある印象である。新田義貞も、もっと、山名宗全寄りの性格だったのかもしれない・・そんな配下が自分より大いなる功績を上げていれば、ますます等持院尊氏は消耗していただろう。

 義材は、先代義尚よりも、慎重だった。あらかじめ、朝廷から錦旗を得て、六角行髙が朝敵だという体裁を整えた。

 

 八月二十七日、出陣。

 三井寺(圓城寺)を本陣に定め、十月一日には金剛寺(滋賀県近江八幡市金剛輪寺)まで侵攻した。ーーつまり、湖東まで征服したのだ!!

 六角高頼は、甲賀へ撤退、またゲリラ戦を展開した。だが、赤松政則重臣・浦上則宗と尾張守護代・織田敏広の活躍により、六角氏一族・山内政綱が降服、義材は赦さず処刑している。

 延徳四年(一四九二)三月、細川政元家臣・安富元家が、金剛寺を奪還される失態を犯したものの、義材は赤松政則・武田元信・斯波義寛に出陣を命じ、六角勢四千を打ち破る。赤松・武田軍を甲賀へ進ませる一方、自らは拠点を金剛寺へ移し、さらに六角氏を追い詰める。

 

 たまらず、六角軍は甲賀から伊勢へ移るが、そこには伊勢国司・北畠家がいる。北畠軍に打ち破られ、六角軍は敗走。

 義材は、六角時綱養子虎千代を近江守護に任命、彼の叔父に、鯰江高久

 三井高久がいる。

 三井財閥創業者一族の祖だ。ーーたいがい、日本も物持ちのいい国である。

 

 義材は、赫々たる戦果を上げ、兵を解散。明応元年(一四九二年七月十九日に延徳から改元)十二月、京に凱旋した。

 

 


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