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室町ひょうすべ拾遺1  作者: ずずつすず
応仁の乱─ひょうすべ史観から─
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19/82

酒宴

 両軍は、その縄張りによって、東西に分けられた。細川軍は、勝元邸と花の御所を含め、京の北から東を占めた。

 山名軍は、堀川西岸の宗全邸、さらに京都中央部の義廉屋敷を含み、中央部と西部を占めた。

 京都は、東西両軍で真っ二つに分かれた。

 ここまでの情勢で、政長も、京都にやって来ている。

 

 五月二十六日、東軍の武田信賢(安芸武田氏、母波多野氏娘)と政長の家臣・成身院光宣(ジョウシンインコウセン、筒井順覚、筒井氏は大神氏より出る)が、西軍の陣地を奪い、そこから花の御所に隣接する一色義直邸を襲撃。義直は逃亡し、東軍が義政を確保した。

 ーー軍(いくさ)になったら急に後戸の客が進出してきた。やはり東国の武士団が発祥ということか。

 義政を得たことにより、東軍は西軍征伐の名分を得る。

 

 つづいて、西軍が勝元同族勝久の屋敷を襲撃。義廉が家臣の朝倉孝景と甲斐敏光らを率いて、京極持清、赤松政則らと戦った。

 ・京極持清(佐々木源氏、細川氏や畠山氏と縁組み)

 ・赤松政則(赤松姓秦氏、継室が細川勝元娘)

 ・朝倉孝景(日下部氏末裔朝倉氏、息長水依姫の夫日子坐(ひこいます)王の末裔)

 ・甲斐敏光(越前守護代甲斐氏は秀郷流佐野氏族より出る)

 ーー本当に、宇佐八幡宮の境内に奉じられている連中は、戦いとなるとしゃしゃり出るのだろうか?

 この戦いは痛み分けになり、斯波軍は撤退、細川勝久は屋敷を焼いて脱出。

 

五月二十八日、義政が停戦命令を発し、両軍は戦闘を止める。ーー東軍が花の御所を得たため、若干の優位を得る。

 

 東軍が御所を押さえて、いわば、御所巻きの形勢である。このため、六月三日には、将軍家の旗を東軍に授けることになった。だが、これには、義政も日野勝光も最大限抵抗し、義政は将軍職を辞するところまでかんがえた。花の御所の奉行衆も東西両軍を嫌って御所を閉鎖、義政は、超然と中立の立場を取ろうとしていた。

 

 将軍家の旗を下賜し、宗全追討命令を授けるところまで妥協させられた。だが、日野勝光・日野富子兄妹は、宗全との連携を狙っており、勝元も義政が内心宗全を頼っているのでは、と、疑心暗鬼だった。足利義視を幕府軍総大将にすべく動きだす。さらにこの時期、後南朝の皇胤が旗揚げした。これを西軍が迎え入れるという風聞が立ち、いよいよ事態は混迷する。

 

 八月、百三代後土御門天皇と後花園上皇が室町殿に遷り、ここを仮の内裏とする。ここから十年近く、室町殿が内裏となり、将軍と天皇の同居がつづく。

 この長い同居生活で、公武を分かつ一線があいまいになり、もとより蹴鞠を通じて後花園法皇(室町殿に遷ってすぐに出家)と義政は昵懇だったが、義政と日野富子夫妻は、たびたび禁裏に用意された部屋に出向き、天皇や法皇と宴会を開いた。

 この宴席で、義政は応仁の乱をよそに「大飲」していた。

 二十万を超える軍勢に包囲されながら、天皇や法皇と軟禁された先で痛飲しているのだ!!

 人間風景としては破天荒な魅力がある。

 じつは、この酒席で義政と並んで「大飲」していたのが、百三代後土御門天皇である。

 「征夷大将軍も皇位も、かくも不自由なものならば、いっそ南朝にくれてやりたいわい。ーー飲み暮らした方がどれだけマシか」

 「わが祖等持院殿〈尊氏〉も、つまらぬ因果をしょい込んだものでございます」

 「西軍が南朝を戴き京を占めたら、並んで出頭し罪を乞いましょうぞ」

 「おお。その折りは、是非にそれがしに供回りを。悪運強く栄達した一族の散り際としてはこの上のうございます」

 などと、酒杯の蔭でささやき合う時間をお持ちになられたかもしれない。

 この後どんどん困窮する朝廷の台所事情のため、崩御されてから四十日も葬儀を挙げることができず、ご遺体が放置された。「霊柩在黒戸四十日余、玉体腐損、而蟲湧出、古来未曾有焉」というひどい状態になったが、右のような時間を持ったことをかんがえると、この最期すら、なにか痛快な印象になる。

 

 この衆人環視のなか、文明二年(一四七〇)に、後花園法皇が亡くなられている。義政と富子は、その最期を看取り、細川勝元が戦乱を理由に徒歩の葬列に参加することに反対すると、それを押し切って法事のすべての行事に参加した。

 

 こんな状況下でも、彼らは帝王だった。

 

 


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