第24話〜逃走
さて、どのようにしてこの背骨が凍りつくような窮地を脱するのでしよまうか?お楽しみいただけましたならば幸いです。
「どけっ!」
震は理性のタガが外れたような悲鳴を上げ、目の前に立ちはだかる男子学生の胸元へと体当たりを食らわせた。完全に不意を突かれた学生がよろめき、背後の引き戸に激突する。ガラガラとけたたましい音を立てて扉が開き、わずかな隙間が生じた。
震はその隙間に無理やり身体をねじ込み、廊下へと飛び出す。
「おい、逃げたぞ!」
背後から怒号が響く。振り返る余裕などない。心臓が早鐘を打ち、冷や汗が全身から噴き出す。
廊下のあちこちにある教室から、まるで連動しているかのように次々と生徒たちが顔を覗かせ、一斉に震へと視線を向けた。その目が、全員同じ無機質な光を宿しているように見えて、震は総毛立つ。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
階段を転がるように駆け下り、土足のまま昇降口を突き抜けた。初夏の突き刺さるような日差しが視界を白く染める。
校門を飛び出し、とにかく人が多い駅の方へとがむしゃらに足を動かす。ポケットの中では、まだスマートフォンが震え続けていた。
それにしても。流石は元自衛隊 志願者だ。骨も軋んでないし、筋肉が痙攣するような予兆も全くない。体重が軽いから動きが 俊敏だ。彼女もなかなかやるな。
走りながら、頭の中でそんな分析もしていた。
ご一読いただきありがとうございました。
教室という密室から始まった心理的恐怖が、学校全体、そして日常の空間へと侵食していく恐怖を描いた一幕です。信じていた「助けて」という言葉すら罠だったという絶望のなか、震の孤独な逃走劇がここから本格的に幕を開けます。果たしてスマホの振動が止まる日は来るのか、次章も緊迫感をもってお届けします。




