第18話〜わたしは誰?
させていただきました。ミステリーサスペンス タッチの文章になってきました。これは ラストのような豆につながっていくのでしょうか?お楽しみいただきましたならば幸いです。
彼女はいたたまれなさに顔を赤らめながらも、うつむき加減に空いている席を探した。教授が小さく咳払いをして「席に着くように」と促すと、教室内には再び教科書をめくる音や静かな私語が戻り始めた。鋭く射抜くような視線を所々から感じた。
彼はまず、出席表に名前を書いた。それは、スマホの電話帳に登録されらていた。
神崎綾━━。意外に女の子っぽい名前だった。
だが、その名前に安堵したのも束の間、彼の背筋に冷たいものが走った。スマホの画面に表示されている「神崎綾」の連絡先。その登録日は、彼女がこの教室に現れるよりもずっと前、半年前の日付になっていた。
しかも、プロフィールのアイコンに設定されている写真は、今まさに目の前で俯いている彼女とは、似ても似つかない金髪の男の顔だった。
じゃあ、いま席を探している「彼女」は、一体誰のスマホを盗んでここへ来たのだろうか。
周囲の視線を避けるように、彼女は講義室の最前列の隅、最も目立たない席に滑り込んだ。小さく丸めた背中が、まるで何かから怯えているようにも見える。
彼は手元のスマホと、遠くの彼女を交互に見つめた。画面の中の金髪の男は、挑発的な笑みを浮かべてこちらを睨みつけている。
(……待てよ。じゃあ、俺の体に入っている『中身』は誰なんだ?)
もし彼女が神崎綾ではなく、赤の他人のスマホを盗んでここにいるのだとしたら、自分と「入れ替わった」という前提そのものが崩壊する。背筋を伝う冷や汗が、東大の冷房の風に冷やされて、さらに彼を凍りつかせた。
その時、彼のポケットの中で、もう一台のスマホ──彼自身の本来のスマホが、短く震えた。画面に表示されたのは、通知ポップアップ。
『私のスマホ、勝手に見ないでくれる?』
送り主の名は、表示されていなかった。
御一読にしてていただきまして誠にありがとうございました。いただきます よろしくお願い申し上げます。




