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6.転機の日記 No.2

 あとは、あ、街をぶらぶらしたな。デートって交際相手じゃないと言っちゃだめだっけか。まぁいいか。少なくとも今は俺の妻だ!気が早いか…?いいか、とりあえずアリアとデートしたな。一応片手で数えられる程度にはアリアとデートしたが、あいつ世間慣れてないだろ。医者の娘だから確かに知識はあるが…慣れてない。そこも可愛いぞ!!


☆☆☆

 

「ねぇ、わたしを何処に連れて行く気なのよ」

「え、露店」

「この手は何?」

「人多いだろ。お前ちっせぇから迷子になったら魔術使うしかないんだよ」

「なんでも魔術に頼るのはよしなさい」

 スティルとアリアは二人で露店へ続く石畳を歩いていた。一方的だがスティルがアリアの手を握っている。とても、何とも言えない表情をアリアはしている。

「にしても多いな。この祭りそんな有名だったんだな」

「…一年もここに住んでるんでしょ。毎年何してたのよ」

「海眺めてたな。あと花見」

「暇なようね」

「暇だ」

 そんな会話をしているとやっと露店の出ている開けた場所に出られた。人はそこまで多くない。きっと山に登っているのだろう。

「お前、何食う?」

「え、えっと、露店って物を売ってるの…?」

「…まじか」

 スティルは薄々アリアは箱入り娘なのだろうと思っていたがここである程度確信した。アリアは、世間知らずの箱入り娘だ。スティルはコテンと首をかしげているアリアにどう楽しむのかを考える。

(食べもの…いや、潔癖の可能性が…雑貨か?いや、良い所の娘だし、大体もってるな…ショーか?)

 グルグルと考えていると、アリアの視線が一つの屋台に止まっている事に気づいた。

「…雑貨?」

 スティルがそう呟くとアリアは直ぐに視線を外した。

「いいえ。なんでもないわ」

「ふーん」

 アリアは少し頬を染めている。スティルに視線の先を見られた事への羞恥だろうか。

 一方、スティルはアリアの手を取り雑貨を売ってる露店に近づく。露店で売っているのは指輪や髪飾りと言った女性に受けそうなものだった。

 初めは見ようとしていなかったが、スティルの視線が露店に向いているからかアリアも品物に視線を向ける。

(やっぱ気になってんじゃん。言えば良いのにな)

 そう感じながらスティルは、露店の周りを見てみる。少し離れた所で、旅芸人が抜歯のイベントを行っている。それを見てスティルは、秋に言われたことを思い出した。

『それと、見せ物にされたくないなら歯は大事にしてください』

 初めてアリアと会った際に言われたことだ。あれは、遠回しに言われているのだと思ったが…。

(マジで見せ物になるのかよ…)

 顔を青くするがスティルは、視線を逸らし隣のアリアを見る。アリアは一つの棒に水晶なような物が飾られている品に視線が釘付けだった。心なしか、目をキラキラさせているような気がする。

「なぁ、おやっさん、これなんだ…てか、ここの品この辺では見ないよな」

「おぉいい観察眼だな。この露店では、東のお国の物を置いているんだ」

「へー」

 スティルは興味深そうに眺める。キラキラとした冠らしきものや、花が模されている櫛…等々。この辺には絶対に作ってない品物だ。

 スティルは、アリアが見ている品物をひょいと取り、露店の店主に渡す。

「これ、包んでくれ」

「はいよ!」

「え…?まって、聞いて…」

 アリアがアワアワしている事を無視し、スティルは金額を払い品物を受け取る。そして、アリアの方を向き近づく。

「え、ええ、あの、何…」

「ちょっと、動くな」

 スティルは真剣そのものでアリアの纏められた髪の毛に水晶の付いた棒──簪を差し込む。黒色の髪の毛から水晶が揺れる。

「お、似合うじゃん」

 スティルはそれだけを言い、露店から離れる。

「ねぇ、ちょっと…これ、どういうつもり」

「え、気まぐれ…いや、プレゼント」

 スティルは少し悪い顔をして言い放った。アリアは、顔を逸らした。

(…気に食わなかったか…?すまん!だが、似合うな…)

 アリアは、少し経った後に視線をスティルの方に戻す。少し頬が赤い気がする。スティルは気にせずにアリアの手を取る。

「よし!次行くか!」

 

 しばらく二人はデートを続けた。最後に訪れたのは海だった。夕日が海と砂浜に反射している。

「いやー、やっぱ海は綺麗だな…」

「…そうね」

 アリアは、手に持つものが色々増えている。全てスティルが勝手に買い、勝手にプレゼントしたものだ。

「てか、今日は鐘鳴りっぱなしだったな…。何人…いや、何百人が愛を深めたんだろうな」

「あれ信じてるの?ただの迷信でしょ」

「お前…夢が無いなとか言われないか…」

「失礼ね。夢くらいあるわよ」

 スティルは、砂浜に腰を下ろす。しかし、アリアは腰を下ろさない。風がアリアの髪の毛とスカートを泳がせる。

「座んないのか?」

「…まぁ」

「砂が付くからか?」

「目だけは良いのね」

 アリアはフワリと少し微笑む。少し困ったようだ。スティルは一瞬貶され怪訝な顔をしたがすぐに元に戻った。

「ねぇ、貴方。わたしにそこまで構わなくていいのよ」

「は?」

 スティルの気の抜けた声を気にも留めずアリアは言葉を紡ぐ。

「それとも、肩書きが欲しい?」

「まてまて、なんでそうなる」

 スティルは慌てて割って入る。幾らなんでも、日中の様な奴と同じ部類にされるのは勘弁して欲しい様子だ。

「ねぇ、なんで」

 アリアは真剣そのものだ。

(そんなに俺が信用ない…いや、不安か。ならそれなりの誠意を…)

 スティルはゴホン、と咳払いし立ち上がる。アリアはそれに驚いたのか少し体が固まっている。夕日が二人を照らす。遠くではまたもや鐘が鳴っている。

「好きだからだ」

 スティルはアリアの手を握り想いを告げる。アリアは、本当に動かなくなった。

「こんな俺でよければ、どうか、結婚して欲しいです」

 スティルは、鞄から花冠を出しアリアの頭に乗っける。スティルの生まれ故郷、アステリア王国では砕いた宝石を散りばめた花冠または、指輪を送るのがセオリーだ。指輪は、アリアに了承を得てから買おうとしていたのだ。

 花冠を乗せられたアリアは何かを言おうと口を開き、閉じるを繰り返している。そして、少し困ったようにスティルを見上げる。

「……その、な、なんて言うか…あのねぇ、恋人すっとばすの…?」

「…確かにな…」

 格好つかない…とスティルは独りごちる。しかし、アリアはとても嬉しそうだ。アリアは、スティルの裾を引っ張り、引き寄せる。つま先を上げ、口を耳元に寄せる。

「…そんな所が好きなのよ」

「…は⁉」

「こんなわたしだけど…よろしくね。スティル」


 ☆☆☆

 

 まぁ、恋人っていう関係は飛ばしたが…成功してよかった…。冠も似合ってたな…。無事に成功して良かった…。

 アリアには、全てを言った。アステリア時代もな。それでも受け入れてくれた。

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