4.春到来の日記
秋桜月の二十日
大事件発生だ。久しぶりに恋をしてしまった。ついに春到来か?今までは魔術ばかりだったからな。日記なんて自分しか見ないのだし書いていいよな!相手は、アリア・リブロ。病院の一人娘らしい。久しぶりに定期検診に行ったら彼女に診てもらった。自分で書いてるがやはり照れるな。少し頑張ってみるか?未来の俺は何をしているんだ?教えてくれ!!
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「あー、遂にか…」
スティルは手にハガキを持っている。ロイヤルヤード王国に来て、もうすぐ一年が経つ頃だ。
スティルには、毎月定期検診のお知らせが届いていた。しかし、大の病院嫌いであるスティルは一向に行こうとはしていなかった。だが、それは一通のハガキによって終わりを告げた。
速達状が来てしまったのだ。
ロイヤルヤードは、医学関係が非常に発達している国である。そして、国民の病院への受診率も群を抜いて高い。
お陰で毎月、病院への受診を勧めるハガキが届くことになっている。
「行きたくねー」
スティルは椅子にもたれかかった。
(嫌だ嫌だ…)
結局スティルは受診を決意した。そして、病院の前までは来たのだが、やはり嫌な様子。そのまま体を百八十度後ろに回転させ、病院から逃げようとした。
「患者さんですね」
数歩歩いた所で後ろから声が掛けられた。
(…用事を思い出したので今日は帰ります…これだ)
スティルは受診を断る為の案を思いついた後に後ろを振り返る。和やかな笑みを浮かべ、少し困った顔を作り出した。
「いやー、すいません。今日は用事が……」
断る為の決まり文句は最後まで言い終わらなかった。
「予約番号、もしくは受診ハガキをお持ちですか」
後ろにいたのは女性。凛々しく、白衣を着ている。片手には鞄。きっと出勤直後なのだろう。むしろ、まだ院内にすら行っていないのかもしれない。
「……どうかいたしましたか」
女性は首を傾げている。スティルは、それにハッとし言葉を紡ぐ。
「い、いや…い、今から病院に行こうかと…あ、ハガキありますよ」
そう言い、カバンからハガキを取り出す。適当に入れてきたので角が折れ曲がっている。
「そうですか。では、こちらに」
女性はすたこらと病院に向かって行く。スティルは慌てて女性を追いかける。
院内に入ると思っていたよりも綺麗な病院だった。
(…アステリアよりも綺麗だな。流石医療国)
スティルが感心していると女性は突如振り返った。
「受付はあちらになります。では」
それだけを告げ女性は離れていく。スティルはただ、見送るしか出来なかった。
受付後、呼ばれるまでスティルは椅子に座ってた。何も持っていないのでただ、ぼーっとしている。
しかし、思い出すのは先程の女性。
(…綺麗だったなぁ)
数十分後、スティルは呼ばれ病室に入った。するとそこには、先程の女性がいたのだ。
「先程は、ありがとうございました」
スティルはお礼を言うも女性は見向きもしない。カルテを片手に診療を始めていく。
「脈拍は正常、顔色も悪くはない…」
医者をしている彼女にスティルは妙に惹かれたのだ。惹かれてしまったのだ。
「これにて検査は終わりです。毎月の検診をオススメします」
「は?な、なんで…ですか」
彼女は冷めた目でスティルを見つめる。
「脈は正常ですが、栄養不足、睡眠不足、運動不足、水不足の疑いがあります」
淡々と自分の体の足りないことを言われスティルは絶句していた。
「それと、見せ物にされたくないなら歯は大事にしてください。これにて終了です。おかえりください」
彼女は、カルテに文字を書き込んでいく。スティルは一向に動かなかった。それを彼女は、目で動け、帰れ、と促している。スティルはやっと立ち上がり、扉に手を掛けたが、振り返った。彼女はまだ、万年筆を持っている。
「な、名前ってなんというんですか」
スティルは少々緊張した面持ちで聞いた。女性はだいぶ怪訝な顔をしたが、スティルの方は見ずにカルテだけを見て答えた。
「…アリア・リブロ」
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にしても今日の検診はやっぱり地獄だった。病院の匂いダメなんだよ…。なんつーか、エタノールの匂いがしてさ、頭痛くなんのよ。
いやー、でも、今度から毎月…行っちゃうか?




