表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

3.夏の日記

快晴の三十日

 前に書いた時から約半年。日記ではないな。まぁいいだろう。

 今日は、アステリアの新聞に書いていたことに不満を言いたくて日記に書くんだ。

 どうやら、やっと天八座攻撃術筆頭が決まったらしい。遅いな。俺が辞めさせられて九か月は経つぞ。だが、腕はかなり良いらしい。新聞で見るだけに留めておこう。

 あと二日で、月が変わるな。夏が更にましていくな。

 海が近い分、まだ良いはずだ。


☆☆☆

 

「おぉ、ついに決まったか」

 窓を開け放ち、風を感じているのはスティル。椅子に座り、新聞を読んでいる。足を組み、お茶を飲んでいる。読んでいるのはアステリア王国の新聞。一面には『新たな攻撃術筆頭就任』とデカデカと書かれている。写真も写っている。スティルは、興味深そうに新聞を顔に近づける。

(…四十近いな、顔は…あ、騎士団にいたな。団長候補とか二年前に聞いたな。へぇー、この人、魔術が使えたんだな)

 スティルは新聞で自身の後継を見た。どうやら、新たな攻撃術筆頭は騎士団にいた人の様だ。スティル自身は一度みたか見てないかくらいの認識だった。

(任命理由は…魔術の高度な扱いと騎士団の経験。あとは、魂術筆頭の推薦。あいつ…推薦だしやがったのかよ)

 魂術筆頭は、スティルの元同僚だ。一族が代々筆頭をしている。天八座ではとても珍しい人たちだ。しかし、スティルは魂術筆頭と仲が悪い。自分の次は居ないからな、と平然と言ってくる人だ。

「でーあとは?」

 スティルは、新聞記者が書いている天八座の事を目で追いかけていく。『魔術は努力で手に入れられます。皆さんも努力していきましょう』記事の最後は国王の言葉で締められていた。

 新聞を投げ、スティルは椅子にもたれかかる。外からは楽しそうな声が聞こえてくる。

「あー外出るか」

 スティルは何一つ持たずに外に出て、海に向かった。夏の海はやはり青く、ロイヤルヤードに来た観光客が海で泳いでいる。

(あの人たちすごいな。俺なんて泳げなかったのに)

 数日前、スティルは海で泳ごうとした。しかし、波の力と自身の絶望的な運動音痴を発動し諦めたのだ。だが、泳げないがスティルは毎日のように海に来ている。

 スティルはここ数日で定位置となった草むらに腰を下ろす。夏特有の蒸し暑さもあるが、海からの風によって少しはマシになっている。

(海はいいな…そういえば海に住む姫の話とかあったな…)

 少々どうでも良いことを考えている。すると何処かで悲鳴が聞こえた。

「誰か!きて!!」

 女性であろう悲痛な声が聞こえてきたのだ。

 スティルは、飛び起き、草むらから浜辺に向かった。浜辺には大勢の人がいた。海に入ろうとしている女性を必死に止めている。

「なにかありましたか?」

 スティルは、荒い息のまま聞く。するとすぐ近くにいた男性が顔を青白くして海を指した。

「お、女の子が…波に流されてるんだ!あ、あそこ足、付かないんだ!」

 その言葉を聞いた後、即座に自分自身に遠視魔術をかけるスティル。突然魔術を使ったことに驚いたのか、周りにいた人は腰を抜かし離れる。  

 魔術は、基本的に危ない物として多くの国が認識している。アステリアだけが異質なのだ。なのでスティルも人前では魔術を控えてきた。しかし、緊急事態だ。命にかかわるのなら魔術も行使するのがスティルという人間である。

(約五十メートル弱。身長百cm以下。五歳くらい。溺れるまで残り十秒から三十秒ってところだな)

 沈むまでの時間を計測し、スティルは手の甲を海の方に向けた。

「展開」 

 術式召喚の詠唱を唱えれば、スティルの前には大きく美しい術式陣が創り上げられる。魔術師にとって術式陣は芸術に近い。力がある者ほど大きな術式陣を、技術が高い者ほど美しい。魔術師でない人にも美しいと思わせる。スティルはそんな術式陣を編み上げたのだ。

 スティルは、右手を振りかぶり人差し指を海に向けた。

「疾風」

 そう告げると、どこからか風が巻き起こり矢のように海に向かっていく。風が通りすぎた場所は海が壁のようになっていた。

──スティルは、海を割ったのだ。 

 まだ終わらない。疾風を行使した後は左手の人差し指でクルクルと宙を回す。

「桜花」

 時季外れの沢山の桜の花びらが疾風の後を追いかける。

 先に行使していた疾風が女の子の元に届くと重力に伴い、地面に落ちる。浜辺からは悲鳴が聞こえたがスティルは、顔色一つ変えない。真剣そのものだ。

 そして、地面にぶつかる直前に桜花が届き、女の子をふわりと風で上げる。そのまま、元の海に戻ったところを撫でるように女の子は風に乗せられ戻ってきた。

「ママ!!」

「無事でよかった…勝手に何処か行っちゃだめでしょ!!」

 無事に再会できた親子だった。


☆☆☆


 にしても暑いな。海は冷たいかもしれんが、浜辺熱くないか?特に砂。暑すぎだろ。 

 てか、そうか。新任の人、馬鹿暑い中任命式やったのか。大変だな。そうすると俺はいい感じの時期に任命式やれたな。紅葉もあったし、果物美味かったし。あー、柿食べたいな。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ