2.年初めの日記
白雪月の一日
今日から新たな一年だな!前回の日記は二ヶ月前。面倒臭がりな性格がここに来て発動してるな。これは性質だからな。どうにもならない。諦めよう。
この二ヶ月で変化した事は、まず住居を手に入れた。と言っても賃貸だけどな。そして、新聞を取ったな。以上。
改めて書くとこの二ヶ月何してたのか分からないな…。天八座の時の稼ぎは十分すぎる位に残ってるからな。家に籠ってたらいつの間にか新年だ。早いな。
新年の目標でも書いてみるか?
一、毎日歩く
二、毎日良く寝る
☆☆☆
「さっむいな……」
スティルは、自室の窓を閉めながら言い放つ。窓の外は青色の海と白銀の雪しか見えない。スティルは随分と海が気に入ったようだ。
(新年かぁ…去年は面倒だったな…)
スティルが昨年まで仕事をしていた場所は、国家の魔術機関、天八座だ。
天八座とは、アステリア王国にある各魔術体系の頂点に立つ八人の魔術師を指している。また、その八人が所属する国家魔術機関の名称でもあった。そして、大変高給取りだが、王国一ブラックとも言われている。
「今でもやれっかな」
スティルは窓から離れ、机を動かし、広い場所を作り出した。
そして、一礼をしてからゆっくりと動いていく。手を宙に伸ばし、ゆっくり下ろす。足も静かに滑らせる。
(去年地獄だったなぁ、雪の中舞とか正気かよって思ったな)
アステリア王国では、新年初日に天八座の一人が舞を奉納する事になっている。スティルは昨年、その役目を務めていた。スティルは、部屋の真ん中で舞っていく。とても様になっていると言っても良いだろう。
「いっっだ⁉」
調子に乗っていたスティルは、舞の途中に足を挫いた。床に蹲っている。
「俺…若くないのか⁉」
一人で騒いでいると、隣の部屋からドンッと壁を叩かれた。反射的にすいません!、と大きく返事をするスティル。
痛い、痛いと言いながら椅子に座る。目の前には読みかけの新聞二枚があった。
(読めば意識別に飛ばせるか?)
スティルは縋る思いで新聞を読む。一枚目はアステリア王国の。一面はやはり、今日の天八座の舞だった。スティルの元同僚の治癒術筆頭が舞っている瞬間のようだ。見出しには、『籠絡の聖女、舞を奉納』と書かれている。籠絡の聖女とは、治癒術筆頭についている別名の様なものだ。
「相変わらずだな、こいつは」
スティルは寒さを感じさせない舞の写真にイラッとしロイヤルヤードの一面を見る。こちらも新年の記事が書かれている。どうやら、ロイヤルヤードの東の方で花火を上げたらしい。
「うわ…見に行きたかった…」
スティルは残念そうに肩を落とす。しかし、ふむ、と顎に指を当て何か考えている。
(花火って何から出来てるんだっけか、硝石と硫黄と……木炭か…硫黄は薬種商で買えるな、木炭も多分近くの店に売ってるな。硝石……は難しそうだな)
「あー!」
スティルは頭を抱え、叫び出す。また、強く壁を叩かれた。
(硝石……硫黄と木炭を強く燃やすためだろ…だったら俺の魔術でいけるか?いや…流石に無理…まぁいいか。爆発と発色だけ再現してみるか)
思い立ったら吉日とスティルは、荷物を鞄に入れ、冬の街に出た。非常に寒いがスティルは動揺せず店を巡り木炭と硫黄を手に入れた。
「あとは、いい感じの山だな」
スティルは地図を開く。ロイヤルヤードに来て二ヶ月は経っているが未だに慣れていない様だ。指で場所と現在地の座標を求める。そうして割り出した後、スティルは店の裏に隠れた。
「展開、スティル・サイリックをヤード山に」
静かに術式陣を編み上げ、空間術の一つ、転移魔術を起動した。
やってきたのはヤード山。雪が沢山積もっている。
「よしよし、人はいないな!」
スティルは荷物から木炭と硫黄を取り出し、真ん中に置く。その後少し離れた。
「展開」
スティルが告げれば術式陣はまたもや作り出される。
「火炎!」
ドカン、と爆音が響いたと同時に積もっていた雪を何処かに吹き飛ばす。すると、周りの緑が一気に顔を出した。そして、花火も無事に成功させてしまった。
「よし、見れた!」
スティルは喜びから拳を上げた。少々暗い空にいくつもの星が輝いていた。
☆☆☆
あと、花火をしたな。ドカンと成功させたぞ!ただ、あの後王国は大騒ぎだったな。誰かが硝石を盗んだとか……。俺のせいじゃないぞ?俺は自分で魔術使ったからな!
だが、効率悪いな…。大きいのも悪くないが、もっと長く観察したいな…。手で持ってこう、できるやつとかあればいいんだがな。




