ジャン
連絡先の交換などをしていないとなると、あの怪しいオッサンに会えそうな場所に行かなければならない。その場所は、バトルアリーナーだ。次もここに来れば会えるだろうという安易な考えて来た感じは否めないが、事実こうして会えることに成功している。
「いたいた」
今日もホログラフで浮かび上がっているモニターを凝視しながら、頭を抱えている強面のオッサン。エリスが見たところ、こっぴどく負けている。
「貴方、賭けの才能ないんじゃない?」
「ひでぇな。当たる時は当たるんだよ。って、お前さん達か。そういや、六日後には新人戦だろ? そこの坊ちゃんには期待してるぜ?」
「ええ、それなりに戦えると思います。それで、商品にそれがあるかどうかは分からないんですけど、ちょっと聞きたい事が」
お客と分かると、強面のオッサンがサングラスを取る。
「OK。商談とあらば、お前さん達をお客として扱わなきゃなんねえ。俺はジャンだ。お前さん達は?」
「悠斗です」
「エリスよ」
「そうだな、商談をするんだ、場所を変えるか」
移した場所は喫茶店。飲物と、軽食を頼むとジャンが切り出す。
「でだ、悠斗の坊ちゃんにエリス嬢ちゃん。どんなものをお求めで? その辺の店よりも、いいもんを扱ってる自負がある」
ジャンからしてみれば、極上のスマイルなのだろうが、日ノ本人である悠斗からしてみると、堀が深い外人はそれだけで威圧感が凄まじいのだ。
少し顔を引きつりながら言葉にするのも、ご愛敬といった所だろう。
「ハエレティスクの整備って頼めますか?」
「そんなもん、何処でも出来るだろう」
「そうなんですけど、俺はよそ者ですから、ここの町の人から見れば良い目で見られていないかもしれません。その対処ですかね」
「なるほど。同じよそ者ならば、よそ者同士の好ってもんがあると踏んだわけか。良いぜ。整備くらい請け負ってやるよ。俺の方も面白い奴とは縁を結んでおきたい。商人ってのは、そういうもんだろ?」
白い歯を見せる極上の営業スマイルを見せるジャン。何処でお金になるのかは、誰にも分からない。だからこそ、気になる縁は結んでおいた方がいいのだ。
「あと、聞きたいのだけれど、バトルアリーナーに置いてあるパーツ以外のパーツってあるのかしら?」
「そうだ、俺はそういう商談がしたかったんだよ。俺の持ってくるパーツは、西で作られてる代物だからな。こっちに無いものもある。機体の売買もあるから、機体も見てくれて構わねえぜ?」
「えっと、品物って何処に?」
「お前さん達は、ハエレティスクのハンガードックに通されたんだろうが、艦で来た奴は、違うドックに通される。実物を目で見て判断してくれも構わない。どうだ?」
付いていく危険性もあるが、それ以上に実りのある話だ。悠斗とエリスは、顔を見合わせて、頷き合うのを見たジャンが悠斗達の出す答えを察して気分良さそうに言葉にする。
「決まりだな」
町にでて、西通りを抜けると、そこは三番ポート。そこにジャンの船がある。
「叶お客だ。一番デッキに行くから詳細の載った端末を持ってきてくれ。商売だ。後、茉莉にはお客の機体を取りに行ってもらってくれ」
「はい。かしこまりました」
頭を下げたのは、いつぞやのメイドである。その後ろではスタイル抜群の青髪の女の子に、にっこりと手を振られれば、やはり、悠斗からしてみれば悪い気はしない。鼻の下は伸びっぱなしである。
通されたデッキのハンガーには一体の機体。その横では機械が、一枚の鉄の板をレーザーで加工している。レーザーで板を焼き抜き、プラモデルの部品の様に、形を形成している。
「茉莉の奴、やりっぱなしで拾いに行きやがったな。ったく」
仕方ない奴だとジャンが息を吐くと、今度は悠斗が声を上げる。
「SCシリーズの最新機?」
VRゲームだった頃は情報のみの未実装機体だったのだから、思わず声も出るというもの。
「こら、ユウト」
不用意にゲーム内の知識を表に出すのは危ない。戦争後に何がどうなって、こんな世界になったのかを二人は知らないのだから。変な知識がおかしな誤解生む可能性もあり得る。
「気になるか? そいつは、西の最新機体だ。横では、ユニットを製造している。基礎フレームだけだからな。ある程度こんなもんだって、数字を出しておこうと思ってな。その方が商売もしやすいってもんだ」
反応速度など、一括で管理するのではなく、個々でユニット化した方が対応はしやすい。
「こちらがスペックになります」
渡されたデーターに目を通す悠斗とエリス。対比で比較されているのは、この新東京における凡庸機体のSS06Aの標準スペック。
「かなりの蓄積量に、ブースト回り。装甲もですけど、対比されてる機体よりも性能がずっと高い」
「なにせ最新鋭だ。劣ってる所は一つも無いと断言できる。なんなら、試乗してみるか? 俺としても、機体が売れれば儲かるってもんだ」
そこに表示されている額は、一億。目玉が飛び出るほどの値段なのには変わらない。
「うわぁ、たっか!」
「値段と性能は比例する。間違ってないだろ?」
それも事実だ。オンリーワンの機体などあっても、コストだけがかさむばかりで、扱える人間も居なくなる。必然とコンパクトに、高性能にとなるのは自然の流れだ。
「凡庸機体に一億出すつもりは無いわ。それに、細かく指定したら、二億はくだらいんじゃないかしら? これ、殆ど基礎フレームの値段じゃない」
動かすのに問題ないものしか組み込まれておらず、ここから、機体の方向性を決めていくことになる。
何の目的も無く、車のオプションの様に付け足していったら、きりがないのは確かだろう。
「手厳しい嬢ちゃんだな。ま、その通りだ。ある程度自由にするってコンセプトもある。値段は高くなるが、不満のある機体から、何とか答えようとした結果がこれだ。オンリーワンの機体と比べると見劣りするが、多少弄れないと、パイロットが育ったの時に困る。乗り手もいい具合に弄れるからいいと思ったんが、売れ行きが悪くてな。このザマだ」
折角遠い所から運んできた製品が売れないとなれば、ジャンじゃなくてもため息の一つは出るものだ。
機体の性能イコール値段なのだとしても、買い手が満足しなければ、売れないのは世の常というものだろう。
「エースパイロットでもない限り、このスペックは出せないわよ。一般のパイロットには宝の持ち腐れね」
「痛い所を突くねえ、嬢ちゃんは。その通りだ。その辺の考慮が無かったか。ま、その辺も経験だ」
エンジン音にトレーラー。そこに積まれているのは、悠斗の機体にエリスの機体だ。ハンガーにはナンバーがあり、業者に頼む時に使う一度限りのインスタントナンバーを発行してハンガーごと移動できる仕組みになっている。
「来たか」
「取って来たよ? 何処に置けばいいかな?」
トレーラーから姿を出したのは、また女の子。何処か叶に似ている子だ。
「この二人があの機体の持ち主さんか。ボクは、叶姉の妹の茉莉」
帽子を取って、肩まである髪をゴムで縛って、ポニテを作ると、手袋を外して、悠斗の手を取る。
「うん。よろしく。あ、名前は悠斗ね」
一人称がボクなのに加えて、帽子をかぶっていると、ボーイッシュに見えた茉莉も、それを取って、ポニテ―ルにすると、女の子なのだと感じさせる。そんな子に手を握られれば、やっぱり、ドギマギするしかない悠斗である。
「この船には可愛い子か、綺麗な子しか居ないのかしら? ジャン? 貴方の見方を変えないといけないのだけれど?」
強面のオッサンに容姿のいい子が三人。あり得ないと考えるのが普通である。
お金か何かで抱え込んでいると考えられても不思議ではない。
「まてまて、誤解だ。養子なんだよ。知り合いの娘達でな。理由あって引き取ってる。この御時世、世の中を知らない、生粋のお嬢様ってのは生きづらい」
それにはエリスも思う所がったのか、取りあえず納得をする。
「ま、信じてあげるわ」
「そう、人生経験を積んでる最中なんだ。ちょっと前までは楽に生きてた。今は、お仕事の勉強中。幸い機械いじりは好きなんだ。よろしく、エリス」
満面の笑みを見せられて、毒気を抜かれていくエリス。こうなれば、素直にならざるを得ない。
「ま、眩しいわね……よろしく、茉莉」
「うん。早速見せて貰ってもいいかな? 機体」
「ええ」
「じゃあ、まずは蒼い機体から」
悠斗の機体によって、よじ登ると、コックピットで足を止める茉莉をみて、予想と違ったのか、思わず声に出すエリスの姿がある。
「あれ? 私の機体からじゃ……あ、知らないものね……」
少し肩透かしを貰ったものの、気を取り直して何でもなっかったかのように、咳ばらいをして平然を装う。
「機体そのものはハンガー事移動できるようになってるからいいんだけど、この機体って、オンリーワンの機体だよね。コックピットのハッチも凄く頑丈なプログラムで出来るみたいだから、開けて欲しいんだけどー!」
と、手を振ってる茉莉の大きめな声が響く。機体の持ち主である悠斗に、手持ち沙汰のエリスが近寄る。
「お、開いた開いた。まずは機体チェックから始めるね」
手に持っているタブレットをメインコンソーラーに繋げて、機体の情報をダウンロードしていく茉莉。
「うわぁ、本当にオンリーワンの機体なんだ。凡庸の機体に比べると、やっぱり尖ってるよね。ピーキーとも言えるけど。機体の損傷は……目立った所は無し、簡単にチェックして、バーニア、スラスター周りを見てあげて、推進剤を入れれば元気に走り回れるよ。後は、ジェノヴァシールドのエネルギーの充填だけかな」
「あぁ、バリアー」
「そんな呼び方かっこ悪い。ジェノヴァシールド」
ぴしゃりと言葉にする茉莉。技術者として、譲れないものがあったのではなく、かっこ悪い。ただそれだけ。ようは、茉莉に取って語呂がいいかそうでないかは重要なのである。
「お、おう、ジェノヴァシールド」
若干引き気味の悠斗をよそに、ジェノヴァシールドの説明が始まる。
「火星から取れた通称ジェノヴァ鉱石を精製、今の武器の弾や特定の結晶体にしてるんだ。徹甲弾なんて呼ばれているけど、AJS弾アインチジェノヴァシールド弾。簡易的にシールドを発生させてシールドに対してぶつけてるんだ。弾はジェノヴァシールドに対して効果が見込めるし、結晶にすればハエレティクスからエネルギーが供給されればシールドも発生させられる。この時のエネルギーっていうのが一筋縄じゃいかなくてね。結晶体の中にあるエネルギーを解放してあげる為の出力がもの凄く必要なんだよ。だから基本的にはエネルギーは使い切り。システム回りのエネルギータンクは別ものだし、整備はこまめに。戦い方を変えた鉱石でもあるけど、褒められたものじゃないのも確かのかな。凄い発明が必ずしも人の為になるわけじゃないって事だね。受け売りだけど」
ビクリと体を跳ねらせると、姿を現した人物に安堵して、息をつく。
「シエルかぁ。びっくりした」
「なによ、折角手伝いにきたのに。茉莉? しっかりお仕事してる?」
顔を出したのは、この艦に入った時悠斗へ手を振った子である。手には、工具、先ほどとは違い、あの青い髪には不似合いの作業着を来て姿を現す。
「うん。今ブロイエリッターのチェックを済ませたところ」
「あら、てっきり熱が入って、聞いても無い説明を長々とし始めたのかと思ったのだけれど?」
事実な上に、シエルは饒舌に語る茉莉の話を耳にしてる。なので、ばつが悪そうに訪問者から目をそらして端末へと視線を戻していく茉莉。
その時点で察しはしたのだが、確認を取るために悠斗とエリスの表情を見ると納得した表情へと変わり、ため息をつく。
「やっぱりしてたんじゃない」
「悪い癖だっていうのは分かってるけど、でも、スイッチが入ると止まらなく……叶姉には言わないでぇ、シエル!」
「いいわよ。後で甘い物奢りなさいよね?」
「まいどありー」
満面の笑みを向ける茉莉。
「その笑顔を禁止したいわね」
「で、シエルはなんで作業着? 今日はオフだったような?」
「紅い機体は私が見ようと思って、ね」
ウィンクをして、端末を手に取る。
「あぁ、うん。その方がいいかもね。ボク一人じゃ整備も大変だし」
「そう。それに、私も茉莉の補佐役よ? 紅い機体のパイロットさんは誰かしら?」
「エリスよ、よろしく頼むわシエル」
「ええ、エリス」
ブロイエリッターのチェックを終えて、紅い機体、レッドバレッドへコックピットへと場所を移る。
茉莉が行ったように、レッドバレッドに端末を繋いで、情報を読み取って行く。
「装甲はペラペラなのね。でも、今はシールドがあるからポジションによっては問題なし。機体には複数のスラスター。過剰なほど付いているけれど、これじゃ、踏んでいられる時間が少なくなる。そんなに機体制御をしたいって事かしらね。この機体はライフルを持っているけれど、本来はスナイパーってところかしらね」
「わぁお。当たりだわ。機体をチェックしただけでそんなのが分かるとは思わなかった。じゃあ、複座があるのは何でかしら?」
驚きの声を上げるエリス。機体だけのスペックを見ればただの軽量機体で、どの武器が適切なのかを考えるとその選択肢はそれなりにある。
「うーん、そこまで設計者の意図を汲むのは流石に無理ね。私が分かったのも、これがオンリーワンの機体だからこそよ。私よりも、茉莉の方が凄いわけだし」
「え? ボク? うん、機械いじりは好きだけど、ここでボクに振る!?」
「面白そうなお話でもありましたか?」
と、飲物をもって姿を出したのはメイドさん事、叶だ。
「あ、いえ、仲がいいんだなと」
「二人は仕事をサボってまたおしゃべりですか」
叶のため息一つでうろたえ始める二人。
「してた。してたよね? シエル」
「ええ、レッドバレッドのチェックを終えたから、後は整備をするだけよ」
そっちのけでおしゃべりならばお小言の一つでも飛んでいたのだろうが、する事はしっかりと進行していたのを確認すると、表情を和らげる。
二人のまとめ役にして、お姉さんなのだ。二人に飲物を渡すと、悠斗達に向き直る。
「このような姉妹ですが、実力の方はありますので、ご安心ください。お値段の方をお話させて貰いたいので、よろしければ御足労願えますか?」
「はい」
「しっかり者のお姉さんが居ると難儀ね、二人とも」
悠斗からすると始めて見るエリスが頬を綻ばせた顔。どこか大人っぽくて、物事を見据える力がある女の子だ。
だが、それがあまりにも大人すぎる行動故に遠い存在にも感じていた。けれど、さほどの笑みは年相応の女の子のものだ。
「なによ?」
「そんな顔もするんだなぁと、ね」
「そんな顔ってどんな顔よ」
「さっきみたいな顔」
無自覚だったのか、悠斗に言われた自分の表情の想像がつかない。おかしな表情じゃないにしても、頬を綻ばせただけ。つまりは微笑ましいと思ったからこそ出た表情のはずなのだ。
「私がしていた表情って、こんな感じよね?」
「違う。している事は一緒かもしれないけど、全然違う。今してるのは、相手を不快にさせないための顔だと思う。上手く言えないけど」
「エリスさんは、交渉などを上手く運べる素質があるのかもしれませんね。ここです。お客様をお連れしました」
艦の客室に通されると、そこには、ジャンが座っている
「おう、来たか。パーツに、機体。それらを見て貰ったわけだが、気になるもんでもあったか?」
「お財布事情もあるので、これが欲しいとはなかなか」
「そうね、私もユウトと同じ返事しか出せないわ」
二人の事情を考えれば、簡単にグルーブは崩せない。
「ま、どのみちお金は大量に必要になるからな。でだ、整備するからには勝ってもらいたいってのが、商人としての心情だな。お前さんが勝てば俺の名が売れる。ついでに、売り物も売れるってもんだ」
「もっともだけれど、そこまで入れ込んでくれる理由は?」
目を細めて、ジャンの瞳を覗き込むエリス。何を企んでいるのか、何かに巻き込むつもりなのか、それらを思考し次の言葉を選び始めるエリスに両手を上げて、無害をアピールするジャン。
「オーケー、そう怖い顔をしなさんな。エリスの嬢ちゃんが疑い深くなるのも分かる。だが、整備した機体を速攻で壊されるのも癪なんでな」
「悠斗の対戦相手がヤバイ奴って事?」
ジャンの言葉から察した答えだ。エリスの出した答えに首を縦に振るジャン。
「なんて貧乏くじを引くのよ、まったく……」
エリスは嫌というほど悠斗の腕前は知ってるが、ルーキー潰しと言われて、不安が残る。それは、初日に黒い機体を見てしまったからだ。あのレベルが出てきた場合、悠斗でも楽には勝てない。
「実力は中の上。間違いなく実力者の類に入る。ルーキー狙いの愉快犯だ。運営側も見逃している以上、この試合にケチは付けられない。相手のランクも高い方じゃないからな。正直な所、どういう試合になるのかが想像がつかない。最悪、事故に見せかけて殺される事もあり得る。なにせ、ハエレティクス同士が戦い合うんだ。狙わずとも、不慮の事故はあり得る。その場合には罪に問われない。それがバトルアリーナーのルールだ」
「ようは勝てばいいんですよね?」
緊迫感の無い言葉に、本人はけろっとしている。肝が据わっているのか、それとも、危機感が無いのか、悠斗を除く三人がどれだけ観察しても分かることは無い。
「簡単に言うな坊ちゃんよ。実力が確かなのは分かるが、相手にも経験がある。しかも金もあれば、装備だっていいもんを揃えてるんだ。取りあえず、映像を見ろ」
再生されているのは開始と同時に、誘導ミサイルと遠くからの射撃。なす術もなく、シールドを剥がされて、白旗。機体は大破して、パイロットはタンカーで運ばれている。
「うわぁ、ミサイルの雨ですか。えげつない事しますね。装備イコール強いのは分かりますけど、これだけじゃ良く分からないっていうか。最後に勝負を決めるのはやっぱりパイロットだと思うんですよ」
次々に見せられる動画は敵を痛ぶって遊んでいるようにしか見えない。ハエレティクスサイズになったミニガン、グレネードで火の海するなど、悠斗の目から見れば、毎度武器を変えて、初心者狩りを楽しんでいるようにしか見えないのだ。
「言い切りやがったな。相棒としてはどうなんだ? エリスの嬢ちゃんよ」
「不安はあれど、ユウトならやってやれないことは無いと思うわ」
「もっと信頼があってもいいと思うんだけど」
悠斗なら、出来ると断言されなかった不満でもある。
「それとこれとは話は別よ。ミスをすれば最初に見せられた人と同じようにしてタンカーで運ばれて行くもの」
勝負事に絶対はない。ミスは誰にでもあり得るのだ。それが限りなくゼロだとしても、ゼロじゃない限り起こりえる。
「心配のしすぎってのもスナイパーの性だろうよ。悠斗が一流のパイロットってのは理解した。心配性の嬢ちゃんじゃないが、当日は気を抜くなよ?」
「それは勿論」
「うし、値段の話からは反れたがこれが俺が請求する金額だ」
提示された値段は、以前アリーナーで見た数字よりも大きい。が、安全をそれで買えるなら、安いと考えるエリス。
「妥当な所かしら」
「これだけ情報を貰ってるわけだし」
「決まりだな。試合が上手くいって、お得意さんになったら値段の方は下げる。初回料金だ。情報も色々くれてやったしな」
「そうね。ルーキー狩りの事は感謝してるわ」
「そうだ、折角だから俺がセコンドも務めてやる。サービス料金だ」
「ほんと、上手い商売しますね」
「それが商人ってもんだ。叶。車をまわしてくれ。お客を送りどける」
「分かりました」
車に乗って、悠斗達の泊まっている宿へと車を走らせる。これも、縁繋ぎの一つだと。




