蒼の機体ブロイエリッター、紅い機体レッドバレッド
『所属部隊と、シグナルコードの発信を願い致します。当施設へのアポはございますでしょうか?』
侵入して来た機体が攻撃、もしくは撤退を選択していないのは、防衛システムが働いてないからに他ならない。逆にこの施設が稼働している事で警戒心を強めている。
そこで、蒼の機体を見ているかの様にして頭部のモノクルが動く。
「見られてる。動くべきか……」
悠斗は思考する。動けばどうなるのかを。一つは、敵とみなされ攻撃を受ける。
二つ。この施設に人が居ると知って声をかけて来る。
そのどちらも、あり得るという可能性でしかない。そもそも、コックピットが一緒だからと、操作まで一緒とは限らないし、VRとは違う部分も出て来るだろう。
それらのイレギュラーを想定するならば、動くべきではない。そう決めてるとコックピット内で、だんまりを決め込む悠斗。
「適当に撤退してくれるのが理想。仲間を呼ばれて、囲まれるのは勘弁願いたいところだけど」
既にシステムが立ち上がっているし、メインジェネレーターが動いている事を察すれば、攻撃の可能性は高い。
何も起こらない事を願って今の悠斗が出来る事は、だんまりを決め込むだけ。
『機体、DS〇七番タイプの機体に告げます。貴方が観察しているその機体は、我々が保持する機体です。機密事項に触れるため、これ以上の滞在は敵対行動として基地の防衛システムを起動、迎撃。速やかに立ち去る事を推奨します』
友好的な会話が出来るならまだしも、この施設は立ち去らないと迎撃をすると言い始めたのだ。
何処にそんな戦力があるのかは置いておいて、この言いように悠斗は声を上げる。
「何言っちゃってくれるのさ、このシステム! あぁ、こっちに銃口が向いてるだろ」
悠斗は、バーニアを吹かす為に足にあるペダルを踏み込む。
これは、銃を向けられて咄嗟に取った行動で、悠斗からしてみればそれ以上はない。
バーニアに光が灯り、推進力を得た機体が高い音をたて始め、急加速したその機体を宙へと浮かすと、傍目からみれば吹っ飛んだように、敵機がぶち破って出来た穴を目指す。
敵機からしてみれば、この狭い施設内をこのスピードで駆けるなどあり得ない。あり得ないが、目の前の蒼い機体は真っ直ぐと外へ出ようとしている。
敵機がどう判断したのか。それは明白で、敵機の突撃銃のフルバーストという形で銃弾の音が鳴り響く。数発弾がかすめるが、問題はなく例のバリアがしっかりと動いてる。
機体は十分と言ってもいいほどのスピードを上げていて、それに対応する手段を敵機は持ち合わせていない。
敵機がぶち破って来た穴を通り、外へ出る。
「一緒だ。戦える」
自分の身を守るため、そして高揚感。それらが悠斗を攻撃へと転じさせる。
機体の制御、レティクルに表示されているロックオンカーソルを出て来た敵に合わせる。
悠斗は、FCS制御を機体の方で殆ど行わない。それは、機体に異常をきたした時に当てられなくなるからだ。FCSは学習機能も持ち合わせている。依存すればするだけシステムに頼る形を取ってしまう。
いくら凄腕でもレッドバレッドがそうだったように、性能に依存すると、当てられなくなるのを知っている。
それでも狙いをすぐさま合わせて来たのは、レッドバレッドのパイロットが、凄腕だからに他ならない。
「レッドバレッドだったら一撃なんだろうが、俺はある程度ばら撒かないと」
のこのこと飛び出してくる敵機に射撃を開始する。ブロイエリッターが持ってるライフルは、けん制兼、当たれば確実なダメージの入る三点バースト。バラバラに飛んでいかない分、ただトリガーを絞っただけじゃ当たらない。
「おー。システムで分かってはいたけど、俺から見るとああ見えるのか。スゲーな、バリア」
敵機に当たった弾は何か硬い壁に当たってかのようにして、弾いていく。
「でも、出来れば、さっきので何処か壊れて欲しかったんだよな」
その理由は簡単だ。あの機体を破壊すると言う事は人を殺す事。
悠斗の倫理からみれば、人を殺める事をそう簡単に良しと出るはずがない。例え、コックピットが見え
ないとしても。
「悠長な事も言ってられないか……」
更に三機、同型の機体が映し出されてる。そのうちの一機は足を付いて姿勢を整えると、大型のライフルを蒼の機体に向けている。
狙撃ライフル。距離にして三キロはあろう距離だが、ブレイバーに事おいては遠い方ではない。弾を飛ばすだけならば、三キロ以上でもでも飛ばせるが当てられなけば意味が無い。その適正距離と言うわけだ。
現に狙撃ライフルを持っている機体は既に蒼の機体をロックしている。後は好機をひっそりと待っている。狙撃は待つのが仕事だ。
ブロイエリッターは、背にあるハンガーにライフルを収納。それとは別に、エネルギーブレードを新たに手に持つ。
「このエネルギーブレード、いや、ガンブレードか? デカすぎだと思うんだが。まぁ、文句は切れなかった時だ」
悠斗がガンブレードだと判断した理由は、システムによる武器の能力提示のおかげだ。
突撃銃の乱射を避け、時には斬る。フルバーニアからの一閃。遠くから見るその光景は、流星に見えただろう。
機体を破壊されたパイロットは、何が起きたのか分からないまま命を落としたはずだ。
「やっちまった……」
爆散こそしなかったが、コックピットを狙った一撃は確実にパイロットを殺している。
「そんな余裕がなかったとはいえ」
仲間の機体がやられたことに焦りを見せた狙撃手の弾も、ブロイエリッターの前では狙いの甘い弾でしかでしかない。
「味方があぁも簡単にやられたのに、まだ向かって来るのかよ!」
だからこその弔い合戦が始まっているとは、今の悠斗には考えられていない。
狙撃手からの弾を避け、悠斗の思考はどんどんと狭まる。殺さなければ殺される。
心臓のうるさい鼓動を押さえつけ、次の目標を定めて大きく息を吐く。
「レッドバレッドに劣るとはいえ、ぱかすかと一方的に撃たれるのは好きじゃないんでね」
バーニアを更に吹かす。並みのパイロットなら、制御すら出来ないスピードを物にして。
狙撃の弾は確実にブロイエリッターを狙ってる。だが、当たらない。FCSがいくら良くても、最後にものをいうのは、結局経験。それに伴う、腕なのだ。
「二機目」
下からの逆袈裟で斬りつける。
「アレがブレイバーなら、コックピットは外してる。運が良ければ助かるはずだ」
これは、最初に破壊してしまった者へ、そして、悠斗自身に対しての言い訳。
狙撃手が壊されると、残りの二機は逃走を図る。
「やっと逃げた。最初からそうしてればいいのに」
逃がすと言う事は、逆に自分がまた狙われる事を意味してる。だが、命を奪う行動を悠斗はやはり取れない。今まで生きて来た自分の価値観をそう簡単には変える事など出来るはずがないのだ。
「レーダーには艦が一隻。多分、あのブレイバーの母艦だろう。逃げるならそれでよし。俺に敵意が向くなら迎撃、だよな」
内心では、逃げてくれる事を期待しつつ、レーダーの反応を見続ける。逃げる様子もなければ、攻撃してくる様子もない。そこから動かないと言った方が正しいだろう。
レーダーと睨めっこを始めて早々にレーダーに反応がある。もう一隻艦が増えたのだ。つまりは増援。
「悠長に構えてたのが裏目にでたか? さっさと逃げるか追撃をするべきだったのかも」
レーダーに映る機影は全部で五機。それに加えて、艦も戦闘に加わるつもりだろう。ブレイバーと共に前進を始めている。
「なんで逃げないんだよ」
それは、彼等にとってブロイエリッターもその機体が置いてあった施設もがお宝だからだ。犠牲を払ってでも欲しいと思わせる場所なのだろう。
二機のブレイバーを簡単に破壊した機体。他にもあるかもしれないと。
「残弾は、ライフルが予備マガジン含めて八三発。ガンブレードの大型弾が六発。後は、ガンブレードのエネルギー次第か。話し合いの一つでもするよな、普通」
残りの戦力を確認しつつ、この現状を不可思議に思う悠斗。一方的に倒されても尚、戦力を整えて、攻め込む理由が何処にあるのか。
それだけの理由が必ずあるはずなのだが、今の悠斗にはその余裕がなく想像がつかない。
「回線はオープンになってるし、こちらからも呼びかけてはいる。それでも、通信一つ無い。なんで攻撃されないといけないのか分からないけど、やるしかないか」
左にライフル。右にガンブレードを持って、敵陣のど真ん中へと突撃をする。
本来なら自殺行為にも等しいこの行動も、ブロイエリッターと悠斗だからこそ出来る。
狙撃をする機体が二機に増え、回避行動が増えてはいるがその二機ともレッドバレッドには及ばない。艦から出るミサイルや、機関銃もけん制の為だろう。
狙って飛ばしてるというよりは、逃げ道を無くす意味合いで撃ちだされている。
「集団戦をよく分かってる。撒き散らすくらいなら、俺にも出来るけどね」
ライフルの弾を撒き散らす。最悪、ライフルの弾は全部撃ちつくしてもいいと悠斗は考えてる。彼のメイン武器はあくまでも剣。
「やっぱり、じゃまな狙撃手から倒すべきか」
などとぼやくと、エネルギーライフルの光の残滓が通り過ぎ、そのエネルギーライフルの弾は、二機居る狙撃手の一体をバリアーの上から大破させた。
すこし遅れれて機体からのアラーム。それは、友軍機が現れた事を知らせるものだ。その友軍機の名に目を疑う。それは悠斗がライバルだと思っていた相手の機体名が表示されているのだから。レッドバレッドと。
『動かない機体なんてただの的ね』
女の子の声が悠斗の機体に届く。それは自信に満ちていて、知らないはずの相手が誰なのかが、感覚で理解できるほど。
「まさかの援軍。中に乗ってるのって、本人、だよね」
『ええ、間違いなく本人よ。ブロイエリッターのパイロットさん』
映し出された映像は、悠斗と歳はそう変わらないブロンド髪の女の子が映し出されてる。
「アバターが女の子だから、中の人は女性だとは思ってたけど、俺と、そう変わらない歳の子」
驚いている表情をする悠斗にレッドバレッドのパイロットはおかしそうに笑って見せる。
何故ならそれは、お互い様だからだ。
『それを言うなら、私もよ。まさか、二冠達成のブロイエリッターのパイロットが私とそう変わらない歳の男の子だとは思わなかったもの。それよりも、目の前の敵を蹴散らすんでしょう? 施設のシステムに、敵だって言われたのだけど』
「そうだろうね。理由は分からないけど、攻撃を受けてる」
『なら、それは敵よ。倒さなければ、私達がどうなるのかさえ分からない。起きてみれば、こんな場所にいるのだから、信用できるもの以外は全て疑わないと』
それは至極当然な思考だ。右も左も分からない状況で攻撃を受けている。投降するという手もあるが、どのように扱われるのかを考えれば、良い手段とは言えない。
「なら、お互いに信頼できるのは――」
悠斗とレッドバレッドのパイロットの声が重なる。
『「キミだけだね(貴方だけね)」』
大会で一位と二位が手を組めば、怖いものはない。
お互いの同意があれば、これ以上に無い戦力になる。有象無象が手を組んだところで、この二人に適う相手は数少ないだろう。
レッドバレッドからの二射撃目。それは二機目の狙撃手をしていた機体、右斜め上を全てエネルギーライフルで削り取られ、艦から落ちる。
「邪魔者は居なくなった。となれば、俺も仕事をしないとな」
『艦隊戦。期待していいのよね?』
「俺流の戦い方でよければ」
『期待してる』
余計な回避行動が減れば、それだけブロイエリッターは自由になる。戦場の最前戦で、敵をかき乱す事と、それらを打ち取るだけの力を持っている。
邪魔な狙撃は無い。バーニアを吹かして、艦からの対空射撃をあざ笑うかのように避けていく。艦内の火器システム担当の者が見れば、悪夢でしかないだろう。
どれだけ撃っても当たらずに、弾だけが消費されて行く状況を受け入れて、なんとしても、ブロイエリッターをあの蒼い機体を倒さなければと。
そこまで必死になっているのは、勿論撃っても当たらない事もあるが、母艦の一隻はレッドバレッドのエネルギーライフルによる攻撃で既に対空火器の殆どは機能を停止。搭載していたブレイバーも三機も出撃の瞬間を狙われて、大破。
『食べごろよ、ブロイエリッターさん』
「ここまでお膳立てしてもらわなくても、大丈夫だったのに」
『一応よ』
左手に持つライフルを所かまわず撃つが、艦に損傷は見られない。大型のバリアーが積んであるからだ。何もブレイバーにだけ搭載されているわけではない。
「なるほど。ヘタすればブレイバーよりも堅いわけか。なら」
今しようとしている事に若干のと戸惑いはあるにせよ、アドレナリンの分泌と、自分の命。それらを天秤にかけた上で、一隻に近づく。
左のライフルは最早けん制にしかなっていない。だが、本命はガンブレードにある。
対空射撃とミサイルを掻い潜り、ブリッジへとエネルギーブレードと化したガンブレードをバリアーに突き立て、ライフルのゼロ距離射撃。暴れるライフルを押さえつけて、徹甲弾を射撃し続ける。バリアは次第にひびが入り、ガラスの様に割れ、マガジンを撃ちつくす頃にはブリッジへと突き刺さり、火の海へと変えて行く。
『大胆な事をするのね』
「俺だってしたくてしたわけじゃない。これからの事を天秤にかけただけだ」
『ま、そうよね。もう一隻も叩くんでしょ?』
「そうしないと、仕返しが怖いじゃんか」
臆病なまでの思考。明日は我が身である可能性。それらは身を守るためのもの。例え他者の命を奪ったのだとしても。けれど、悠斗はまだ、他者の命を奪っているという感覚が鈍い。
驚いて、攻撃されて、攻撃してしまった事にまた自分自身も心が驚いて、機体を操っている。
『なら、逃げる前に叩くわよ』
エネルギーライフルの射撃が追加で五つ。エンジンへと全て当たり、ただの棺桶となる艦に追い打ちをかける形で、エネルギーガンブレードを艦に切り刻む。
『あの、エネルギーライフル、弾はマガジンの一発打ち切りで十発しか無かったみたいなのよ。残段数ゼロ。サブ武装は、豆鉄砲玉が出そうなサブマシンガンが一丁。どうする?』
「後は五機だから俺の方で何とかするよ」
『なら、特等席で見てるわ』
これまでの戦いで、ライフルが使い物にならないのは、悠斗も理解済みだ。バリアーに効果があったのだとしても、手間がかかりすぎる。
バリアーを剥がすまでに一体何発必要なのか。それを考えれば、けん制以外で撃とうとは思わないだろう。
ガンブレードから放出されるエネルギーも無限じゃないが、五機を倒す分には、十分と考えて、隊列を組んでいる五機の中へと突っこみつつ、リロードを行う。
隊列を組んで射撃を行うのは攻撃パターンに合わせて応戦がしやすい。が、それはお互いがお互いをフォロー出来る距離に居るという事でもある。それは悠斗にしてみれば都合がいい。
残弾を気にしない射撃をしつつ、弾の雨を避け、そして、斬り、バリアーに頼って、最小限かつ、最短で進んでいく。敵側も想像もしなかったのだろう。
隊列の右端からブロイエリッターのエネルギーブレードが襲う。
一機目の胴体を二つに分け、それに動揺した機体が射撃を行うが、ブロイエリッターを捕捉しきっているわけではない。弾は反れていき、一回転したブロイエリッターは確実に距離を詰め、二機目も同様に胴体を二つに分け、三機目は、頭部から二つにされる。
そこで、ガンブレードから放出されていたエネルギーが切れた。
「このガンブレード型のエネルギーブレードも大きさのわりに、直ぐにエネルギー切れで無くなるな。でも、ちょうどいい」
ライフルの射撃。弾をどれだけ当てれば、バリアーが剥がれるのかの確認。
それが、ブロイエリッターのバリアーもどれだけの攻撃を受ければ剥がされるのかという目安にもなる。
一マガジンの乱射。避けられたり、狙いが甘かったりと当たった弾は全部で十二発。
バリアーが剥がれた所をすかさず斬る。これで四機目
エネルギーが放出されていなくても、十分に威力がある事を確かめて、自分の残りのバリアーの耐久値を犠牲にして、最後の敵へと一気に近づき、ガンブレードからの大徹甲弾、残り全てをゼロ距離から撃む算段だ。一発目、二発目で、バリアーに亀裂が入り、三発目で、ついに着弾。四発目で、爆散する。
その光景を特等席で見ていたパイロット。レッドバレッドのパイロットだ。
「ファーマメントライン。やっぱり、綺麗ね」
ブロイエリッターの通った場所は、蒼い軌跡になる。
宿敵であった機体への羨望の眼差し。ライバルだと思っているからこそ、信頼も出来るし、嫉妬もする。 彼女も、彼が一番なのだと理解もしているからこそだ。
『お疲れ様。戦闘終了よブロイエリッターのパイロットさん』
「あぁ、お疲れ。援護射撃は流石だったよ」
『当たり前じゃない。誰だと思ってるのよ』
そこまで言葉にして、お互いに顔と機体以外知らない事に気づくと、こう続ける。
『そうね、自己紹介しちゃいましょうか。名前が無いと不便ですものね。私は、エリス=カーバイン。日ノ本人はファミリーネームで呼ぶ習慣があるみたいだけど、エリスって呼んで頂戴』
「分かった、エリス。俺は高瀬悠斗、よろしく」
『ええ、よろしく、ユウト』
起きて早々に戦闘をこなした二人がコックピットのハッチを開けて、顔を見ながら話している。遠い人物や、顔を合わせられないなどの理由が無い限り、人は現実に存在する顔を見て話した方が落ち着くものだ。
「見渡す限り、荒野なわけだけど、行くあてもないし、施設に戻ってみる?」
戦闘を終えて、どうしていいのか分からずにいる。起きた時点で、医者やら、関係者が居るはずなのだが、それが彼等には無かったのだ。
「そうね。本来は説明があってもいいのだけど、それすらない。どころか、分からない場所に居る。その原因が恐らく戦争。それが起こった後だって、信用できる?」
呆れるようにして、言葉にする。エリスも見た全てを信じているわけではないが、信じざるを得ないと感じている。
「出来るわけない。人がそんなに愚かな事をするのか? 一瞬で焦土にする兵器だってあるんだ。そんなもの投げ合ったらどうなるのか位、どれだけバカでも理解できるはずなんだ」
「私は、そんなバカの集まりだと思うわよ、権力者なんて。皆、アホと、バカばかりで、金と権力の事以外考えてなんていないわ。汚職なんて日常茶飯事じゃない。熱意ある人ほど、汚い人間に食われる世の中よ。でも、戦争をするほど愚かではないと私も思いたいわね」
エリスがこう答えのも、理由がある。彼女はそういう世界に居たのだ。故に、大人とは信頼出来ない者になる。
「ま、立ち往生してても仕方ないんだ。施設に戻るか。行くあてもないまま彷徨って、推進剤切れはマズい」
ブレイバーもエネルギーが切れたからといって放置というわけにもいかない。彼等の生命線でもある。
「あっ、追加で一隻来たのは東の方だったか。俺のレーダーじゃ、何も引っかからないな。エリスは調べられない?」
『まってね』
最初はレーダーの感度を上げての索敵。狙撃手が乗る機体は基本的に索敵能力が高い。それは、味方を確認するため、敵を見つける為だ。
次いで弾の入ってないエネルギーライフルのスコープの倍率を最大限にまで上げる。北から時計回りに、見回すと、東に都市を見つける。
『あった。影みたいのしか見えないけれど、町よ。スコープの倍率と合わせて、五十キロほどっていった所かしら』
「ブレイバーならわけない距離か。推進剤もまだあるし、施設へ戻のは後でも出来る。何より、あの施設は何処かおかしいし。町へ向かうか」
一言で表すなら不気味の一言につきるだろう。それはエリスも同意の様だ。
『賛成。あの施設、何処か変よ。だから町がいいわ』
「確かに、侵入者だからといっていきなり敵認定だからな。このブレイバーが機密だって言ってた気がするけど」
「機密、ね。なら、町へ行った後でもう一度戻ってくればいいじゃない。ブレイバーの修理だって必要でしょ?」
戦闘で減った弾薬の補充に、エネルギーの充填。それらを済ませて、足場を固めない事には、この辺一帯を調べるのもままならない。
「それもそうだ。一端町へ向かって、門前払いなら戻ってこよう」
『それでいいと思うわ』
エリスの同意も得て、東へとブレイバー向ける。




