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新東京からの脱出02

「援護するよ」


 ハエレティクスが武器を振り回せばひとたまりもないと考えてるのは自然だろう。蜘蛛の子が散るようにして、兵たちが散って行くのは、必然だろう。全員がコックピット内に入り込んだのは、モニターされている映像から確認。取りあえず、鉛玉で命を落とす心配が無くなった事に、胸を撫で下ろす悠斗。  

 全てのシステムが十秒ほど時間をかけて立ち上がると、操縦桿を握る。


「えっと、よろしく茉莉」

「うん」

『いちゃついているところ悪いが、シエルを援護しつつ、敵機の撃破が最優先だ。後悠斗、後で話がある』

「相当な親バカだった!?」

「パパ? 余計な事したら怒るよ?」


 ぴたりとジャンの威勢が止まる。娘の冷めきった声が相当堪えたのだろう。


「悠斗、踏みこんでみて」


 茉莉に促されるがままに、バーニアを吹かして、シールドの上からガンソードで叩き飛ばす。いくら機体は傷つかないとしても、攻撃された質量はごまかせないし、不意に飛ばされれば、コックピットにも衝撃はある。


「なんか、引っ張られてる気がする」


 困惑の声を上げる悠斗に返事を返す。


「変に逆らわないで、ボクに委ねて。一番大事な事は、違和感を覚えない事」


 この機体は茉莉と乗る事によって最大のパフォーマンスを発揮する。悠斗が一〇〇の力で踏み込めると言う事だ。

 本来なら、いきなりトップにスピードを上げるなんてことはしないが、茉莉の言葉通りに、委ねて、感覚だけとぎます。敵の持つESシリーズのアサルトライフルの射撃を違和感を何とか押し殺しながら、避け、距離を取る。


「うん、そう」


 それでも、一瞬だけの全開。


「やっぱり違和感が」


 補助を茉莉がしてるのだから当然なのだ。それを茉莉も理解してる。大きく息を吸い、吐くと、ゆっくりと言葉にし始める。


「あのね、最初は憧れだった。でも、今は違う。間違ってなんてなかったって。会った時改めて思ったんだ。間違いなく一目惚れ」

「え? え!?」


 いきなりの告白に戸惑うのも無理は無い。だが、この状態で茉莉が考えれる最善の手を打ったつもりでもあるのだ。


「お互いの事を知る事、それが慣れの一歩だよ。返事は無くても大丈夫。ボクんのだって言える様に頑張るから! ほらほら、倒さないと」

『オープン回線で告白などするから、お父様がもの凄い顔をしています。茉莉。後で、お父様を黙らせておかないとあの親バカは何するかわかりませんよ?』


 と、叶。それから、シエルからの音声通信も入る。


『ちゃんとエスコートしてもらわないと、私じゃ、固定砲台にしかならないのよ。ユウト、戻って来てる? 返事なさい。ユウト?』


「はっ!? 大丈夫」


 多少思考は停止していたが、十分に距離もあり、シールドもあるが故に、致命傷は無い。

 弾も、数発かすめた程度では、シールドの耐久値もそう減るわけでもない。

 即座に踏み直し、敵機に近づき、右のガンソードでもう一度揺さぶり、左の持つアサルトライフルで、射撃をする。これは、殆ど無意識に行ったものだ。


「TFS三〇五の三点バースト銃。以外に当たるでしょ?」

「これも茉莉が?」

「そう。こっちは得意な分野じゃないから、シエルに比べるとてんでダメだけどね」

「いや、それに、さっきの一連の動きは違和感が無かった」


 びっくりして一周したら、すんなりと受け入れられた。三点バースト銃の弾が当たったのもそれが原因の一つ。

 お互いに舵をきるよりも任せられる所は任せる。ジャンが想定した二人で動かすというコンセプトだ。

 だが、それには、大きな問題点がある。自分の理解が追いつかない部分の舵を握られていると考えれば、自然と強張るものだ。

 それを払しょくするのに一役かったのが、茉莉の告白。本気の告白をされて、茉莉に気を許したという面が大きい。


『シールドも剥がれたから、いただいていくわね』


 エリス顔負けの射撃。ブロイエリッターを綺麗に避けて、シールドが無くなった機体を撃ち抜く。


「すげえ。エリスのパートナーになるわけだ」

「余所見厳禁だよ。次」


◆


 一人、二人と撃ち抜き、ジャン達と合流すべくビルの屋上を駆け回る。


「全く、わりにあってないったら」


 追ってくる敵を狙撃銃で追い払っている。逃走ルートは念入りに練られていて、簡単に追いつかれる心配は無い。だが、それは狙撃銃の弾があるうちは、というだけなのだ。


「スペアマガジンは後一つね……もう、三十人は転がしたかしら?」


 頭を撃ち抜き、時には、逃走ルートに使った橋すらも、利用して、ビルから落とす。

 だが、追ってくる敵の数が多すぎるのだ。このまま行けば間違いなく、捕まるか、殺される。


「悠斗達の反応は、ポイントGにある。でも、動かないのは何故? 端末そのものがこわれたか、動けない理由があるのか……」


 スラスターを吹かすと聞こえる甲高い音がエリスの耳に届く。これは、ハエレティスク特有のものだ。


『悪い、エリス。手間取った。追っ手のハエレティスクがしつこくて』


 追っ手であろう敵のハエレティスクの四肢をブロイエリッターが撃ち抜き、止めを紅い機体が持って行く。彼女の待ち望んだお迎えだ。紅い機体レッドバレッド。彼女の機体である。

 コックピットハッチが開くと、シエルが顔を見せる。


「ゴメン。遅れたわ。まさか、こっちのビーコンが壊れると、そっちと同期が取れなくなるとか、思わなかったのよ」

「それが原因なのね」

「パパは、用心し過ぎるのよ」


 最悪の場合を想定しての処理だ。誰かが捕まったり、ジャンの端末を使われないようにするための対処。


「さぁ、反撃の開始よ、シエル」


 シエルに手を出され、それを手に取る。


「ええ、目に物を見せてやりましょう」


 二人には蒼い機体が、敵を蹂躙してる姿が映る。一対、五という数でありながら、押し込んでいる。ガンブレードならではの戦闘方法。シールドに刃が刺さらなくとも、ゼロ距離からの対シールド弾を三発。並みのシールドなら、見ての通だ。シールドが食い破られた所に一撃。


「ユウト。美味しい所は全部頂くわ。貴方は、シールドを壊せばいい。簡単でしょ?」


 悠斗の機体を見て、エリスは自分を鼓舞する。美味しい所を全部くれてやるわけにはいかないというライバル心をむき出しにして、狙撃銃を構える。


◆


「若干敵意にすら感じるほど勢いが凄かった。鬱憤でも溜まってたのかね」

「え? あれは悠斗にライバル心むき出しにしてただけだと思うけど」


 驚きの声を上げる茉莉。それに悠斗は自分の考えを言葉にする。


「エリスの方が凄いと思うんだけどな。俺とか博打みたいな行動が大きいんだよ。結果としていい方向に転がってるけど」


 悠斗はエリスを大きく評価してる。毎度毎度戦場で会う度に紙一重の戦いを強いられてきたのだ。だが、それはお互い様とも言える。


「それは勝ってる人の言い分だと思うんだけど……それにね、悠斗。言いずらいんだけど、回線オープンのままなんだ」

『あらあら、ユウトってばお世辞がお上手なのね。後ろから撃ってもらいたいのかしら? うっふふふふ』


 何やら作ったような笑い声を上げるエリスの声に鳥肌を立てる悠斗。


『こっちのお姫様がお冠じゃない。ユウト、しっかりとご機嫌とりなさいな』

『シーエールぅ?』

『ツンデレもほどほどにしないと理解して貰えないわよ? 心の声がきこえるわけじゃないのだし』


 既に、シエルの手の上でくるくる状態のエリス。何処か緊張感の無い会話に悠斗の頬が和らぐ。


「ほら、ジャンの所に行かないとダメなんだろ?」


 戦闘中だというのに、前代未聞の行為だ。緊張感のかけらもない。けれど、この程度の敵は、悠斗やエリスの敵じゃない。

 エリスの回収は完了。レッドバレッドも本来の力を発揮している。エリスは、美味しい所だけをいただくと言ったが、理に適っているとも言える。悠斗が前を荒らして、後ろからの信頼ある一撃が入ると確信があれば、前衛をやっている悠斗は、更に上手く動ける。


「パパ機体を確認。艦の上で戦ってるみたい」


 艦からのシールドの援護と、弾幕。ハエレティスクに囲まれて、撃墜されない理由である。


「こう言っちゃなんだけど、ジャンってハエレティスクの操縦出来たんだ」

「相当練習したみたいだけどね。それでも、中の上位。悠斗やエリスみたいには出来ないよ」


 茉莉の言う通り、数を押し返しているのは、圧倒的な武装で何とか維持してるだけに過ぎない。艦に積まれていた武器を大漁に取り出して、機雷やらミサイルやらを乱射して何とか、数を相手にしている。


『正直辛い。早く援護くれよ。艦のシールド残量だって大分減っちまった。これから、大逃走劇が始まろうってのに、半分切っちまってるんだ』

「そんなもの始まらなくていいです」

『あら、泣き言? ユウト』

『そういうなって、エリスの嬢ちゃん』

『まとめて倒してあげるから、シールドだけ何とかしてね。ユウトも、あんなへなちょこ弾に当たらないでしょ?』

「まぁ、当たらないと思うけど」


 形成が逆転した戦場で敵がとる行動は、一時撤退だ。たった三機。されど三機。それに怯えると、人は足がすくむ。


『地味に傷つくんだが』

  

 ジャン自身も、操縦はあまり上手い方じゃない事は理解しているが、叶達からもう少し励ましの言葉があってもいいんじゃないかと感傷に浸ると、叶からの激が飛ぶ。


『無駄口を言っていないで、どんどん撃ってください。艦の主砲で壁を撃ち抜きます。外に出ますよ」


 エネルギー砲を鉄の壁に撃ち当てて大穴を作り出し、そこから脱出する。

 追撃されているとはいえ、新東京の外に出てしまえばそう簡単には追ってはこれない。戦線を伸ばす必要があるし、追撃にもハエレティクスを必要とする。

 何よりも、敵地で戦わなくてもいいという点はかなり大きい。  


「九連装ミサイルつい……ハエレティスクの新たな反応あり。逃がさないつもりでしょう……』

「ちょっと待って。一機だけ、速度おかしいのが居るよ」

『こちらでも確認。映像を送るわ』


 シエルの一声で、モニターに、映し出される。黒い機体。武装こそ違えどこれは。


「これって、ハエレティスクの闘技場に居た機体。最悪だ……」

『蒼い機体! 俺と勝負しろ!』


 機体には、声を出すと信号通信にして、機体に送る事が出来るシステムがある。

 そのシステムを介して、彼の声が機体のモノクルを点滅させて、モースル通信を行ってる。


「何言ってるんだ、あの機体」

『いいじゃない。相手してあげれば』


 エリスは軽い感じで答えるが、悠斗としては得は一切ない。


「ゴメン被る。他を当たってくれ。好きで殺し合いをしてるわけじゃ無い」


 幾分かの静寂。そして、何かが弾けるかのようにして悠斗へ突撃してくる。


「話聞いてたのかよ、コイツ」

『そのパイロットも機体も一級品だろうさ。そいつの相手は頼む。正直な所手一杯でな』

「勝手な」


 この言葉は、ジャンに返した言葉ではなく、黒い機体へと返した言葉だ。

 弾けるようにして、突っ込んで来たかと思えば、御挨拶にシールドへナイフを突き立てて来た、相手へのけん制で、剣を振るい、ガンソードの弾を三発黒い機体へ向けて射撃をする。


「俺は、嫌だって言ってるんだ」


 自分こそが悠斗と戦う権利があると、それだけの力があると見せつけるようにして、弾を避ける。こんなマネが出来るのは、悠斗しかいないと誰もが思っていた芸当をやって見せたのだ。


「お前の剣技は知ってる。俺の相手になる奴がいままで居なかったんだ。やろうぜ、殺し合いをよぉ!」

「あのナイフ、刻印石から作ったみたいでライフルの弾と同じくらいシールドの耐久値が減ってる。完璧に避けるのは、無理なのも承知してるけど、出来るだけ、消耗は避けて」


 既に全開でブロイエリッターを操っている。それでも、ブロイエリッターに付いてくるどころか、対等の勝負に持ち込んでいるこの黒い機体がおかしいのだ。


「注意はしてみるけど、出来るかは分からない。てか、すでに全開なんだ」


 とは口にしているが、このタイプの敵は悠斗からしてみれば、初めてである。ブレイブワールドにおいて、接近戦は自殺行為に近い。弾が遠くから襲ってくるのだから、それを掻い潜って接近戦をしようとは思わない。例え、一撃必殺でも。

 悠斗は、失敗しても死なない世界で腕を磨けた。それは僥倖(ぎょうこう)だったと言える。現に、敵の攻撃を掻い潜れる手段を身に付けているのだから。

 腕から伸びているブレードラッシュを抜けたかと思って、距離をとれば手に持っているナイフを投げつけて来る。


「まったく、しつこいんだよ! 人の話聞け!」


 跳ね除けて、距離が空いた所に、徹甲弾を撃ちこむ。上手く躱して入るが、至近距離の弾を避けきるというのも、出来るわけがない。

 黒い機体の行動は、シールドが前提の思い切った踏み込みと言うわけだ。


「シールドなんて、くだらねぇもんさっさと剥がして極限の緊張を味わおうぜ。なぁ、一撃が決まれば、終わりの勝負こそ意味があんだろ。くだらない小競り合いほどつまんねぇもんはねぇ!」


 お互いがお互いのシールドの耐久値を削り合う。時には、斬撃で、あるいは、弾で。


「くだらないルールはお前だけにしろ。それに俺を巻き込んで喜ぶな!」

「んだよ。お前は、こっち側じゃねぇのか? あんな接近戦出来る奴が、狂って無いはずがないんだよ」


 お互いにシールドの耐久値こそ表示されていないが、どれだけ攻撃を当てたのか、どれだけの攻撃を耐えたのかで、ある程度は予想できる。


「チンタラやんのは、もう辞めだ」


 手に持っているのは、ハエレティスクサイズに作っただろう刀。


「構えろ! お互いに、そうシールドの耐久値は残ってねぇだろ」


 ガンソードを言われるがままに構える。相手の言う通り、恐らく一撃防げば、シールドのエネルギーは無くなるだろう。後は、どちらかが、機体に致命傷を与えるか。

 砂塵が巻き起こる。ハエレティスクが動くなら、今この瞬間だ。背を向ければ、倒されると、悠斗も自覚しているからこそ、戦う以外に選択肢が無い。

 スラスターを吹かして、相手が突っ込んで来るだろう所へと斬撃を振るう。伝わって来た感触は、お互いの獲物がぶつかり合ったものだ。遠くに居ても聞こえてきそうな甲高い咆哮が一撃目。二撃目を狙い更に、剣と刀がぶつかり合う。

 次に取った行動は、お互いがスラスターを吹かし合った鍔迫り合いだ。

 機体の重さと性能差。ブロイエリッターが上だとお互いが判断した瞬間に黒い刀は、鍔迫り合いを止る。ぶつかり合っていた力が解放され、互いすれ違うように距離が空くと、その距離を詰めるべくメインブースターとスライスターを吹かす。追撃戦だ。

 剣が離れたそこに隙はある。どちらが有利に運ぶのかは、次の一手に掛かっている。

 シールドを打ち破るのに、大それた技も威力も必要じゃないのを互いに理解している。薄皮一枚の脆いシールドが残っているだけなのだから。

 一手目でシールドを剥がし、二手目で致命傷を負わせる。そう考えたのは、悠斗だけじゃない。防御を無視して、お互いのシールドを砕く。互いの狙いが同じだからこそ、次の一手は、コックピット。意図せず起こる切り結び。


「いいねぇ、いいじゃねぇか!」


 狂ったかのように、笑い出す黒い機体のパイロット。


「コイツ、正気じゃない……」


 誰の目から見えても、悠斗の言葉は正しい。だが……


「正気で、こんな勝負出来るわけねぇだろ。一歩間違えれば、命が飛ぶんだ。イカれてるに決まってる」


 狂気にでも身を落としていなければ、戦場で生き残ると言う事も、難しいのだろう。常に死と隣り合わせの人間だからこそ出る言葉だと言える。


『ユウト、離れ過ぎよ』

「分かってる。そんな事考えてる余裕なんて」


 シールドが無いからこそ、紙一重の戦いになってる。距離を空ければ、お互いが飛び道具を使い、距離を詰めれば剣戟が始まる。

 機体の致命傷を避けて戦っているのが、不思議なほどに。


『エリスの嬢ちゃん。あの勝負に茶々を入れる事は出来るか?』

『可能かどうかで言われたら、出来るわ。シエルの援護は凄いもの。でも、直ぐに撃てと言われてトリガーは引けない』


 お互いに移動しているし、黒の機体と悠斗の蒼の機体も何から、逃げているんだと思うほどの速度で駆けまわって、剣を結んでいる。それを何も考えずに撃てば、フレンドリーファイアーだってあり得る。


『いい考えがある。それに合わせて撃ってくれれば、逃げるだけの時間は稼げるだろうよ』


 六連装ミサイルランチャーを二つ構えると、先ず右にあるミサイルが、悠斗達へ飛んでいく。あれだけの数を撃つわけだから、シールドが無い彼等からすれば避けられなければ、悠斗も黒の機体もタダでは済まない。


『いい考えもなにも、力技じゃない。エンジニアだったらもうちょっとまとも案をだしなさいよ!』

『だが、悪くないだろ?』


 それに、一度提示されて、そうだ。と思ってしまうと人はそれ以外には時間をかけないと答えが出せなくなってしまうものである。


『分かったわ。ユウトなら避けるだろうけど、一歩間違えれば巻き込んでるわよ? それでも、お互いの距離がこれだけひらけば』


 誤射の心配が無くなれば、機体の何処かに当たるようにして撃てばいい。シールドも無ければ、避ける以外の選択肢が無いのだから。


『チッ。横から、入って来やがって! ふざけるんじゃねぇぞ! そこの紅い機体』


 幾度なく、機体に無理をさせて、直撃ではないにせよ、攻撃だって掠っている。そこへ新たに装填した弾をブロイエリッターが、黒い機体へ向けて射撃する。


 レッドバレッドとの両方で回避を強いられれば、逃げる事だけで、精一杯だろう。

 機体にガタが来ていなければ、完全な状態でなら応戦出来ただろうが、悠斗のとの戦闘でそれだけ消耗している。次第に動きが鈍っている事をエリスが悟ると、それに合わせて射撃を行う。当たれば、どこでもいい。

理想は、コックピットだと思いならがら、トリガーを絞る。

 取った。間違いなくそう感じだが、刀で弾かれるという、悠斗さながらのことをやって見せる黒い機体。だが、それと同時に脆くなっていた腕も吹き飛ぶ。


『ここまでか。次は、必ず殺す。絶対だ』


 そう吐き捨てると、味方の機体を盾にしつつ後退をはかる。


『流石に、もう当てられそうに無いわね……』

『敵機の撤退を確認。作戦は、成功と思われます。デッキの方へ、ハエレティスクを収納後、ブリッジへ足を運んでください』


◆


 ここは、新東京の中央区にある指令室。ここの司令官は、簡素な造りが好みなのか、お金を持っている人達とは違い、最低限の物しか見られない。高級な物と言えば、大きく飾ってあるタペストリーであろうか。

 ノックも無しに、部屋に入って来たのは、ヘルメットを手に持ったパイロットだ。


「キミでも、倒す事の出来なかった相手か……やはり、厄介な相手だね。だけど、見つけた」

「悪いが捕縛なんて出来ねぇ。既にアレは、俺の獲物だ。分かってるよな?」

「キミがアレよりも優れていると証明出来るならば、それでもいい」

「言ってくれるな。あのシステムを扱えるのも俺だけだ。これくらいの我儘は聞いて欲しいもんだな。実験道具にもまだ理性の一つはあるつもりだぜ?」

「キミを使い潰すつもりはない。時間も金もかかってるからね。準備は二週間。件の施設に総攻撃を仕掛ける。それで、私の敵は居なくなる」


◆


 全速力で艦を走らせての撤退だ。追撃は無し。ジャミングが酷くなる域にまで逃げおおせれば、後はどうとでも逃げれる。


「一応、撤退はしたみたいだな。帰還すると同時に、反撃の準備に取り掛かる」

「俺達も、その手伝いを?」

「いや、お前さん達は、心身を休める事が最善だ」

「何も無い場所じゃ退屈よね、流石に」

「あぁ、その辺には考慮してある。面白いものが見れると思うぜ?」


 艦が向かう所は悠斗達の目が覚めた施設ではなく、荒野のど真ん中だ。


「何も無い所で止まりましたけど?」

「それでいい。周辺に飛来物の確認。無ければゲートを開いてくれ」

「大丈夫だよ、周辺には、鳥一匹居ない」


 周辺をモニターしている茉莉の言葉を聞いて、口元をにやけさせる。


「OK、ゲートの解放だ」

「了解」


 荒野に線が入り、それが浮き上がってくる。こここそがジャン達の本拠地。


「どうよ? この御自慢の秘密基地は」


 どや顔で悠斗に向き直る。こんなのを見せられれば、男なら心躍る。そういうものだ。


「言わんとしてる事分かります。実際、わくわくしますし」

「変にいろんな所こだわってたもんね」


 ゲートに艦を進ませると、入って来た道が塞がり、カラクリを知らない者から見れば、ただの荒野へと戻る。

 ドックに艦を固定させて、ドックの外に出ると、広がるのは町だ。


「ようこそ、私達の町へ。悠斗様、エリス様。歓迎いたします」


 と、叶が頭を下げると、ジャンは自慢げに、茉莉とシエルは笑みを見せて、二人を歓迎する。用意された車に乗り込み、車は走り出す。


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