第74話 強制コラボスタート☆
「……で?こんなところで待ち伏せして、何の用だ。やる気か?」
剣呑な雰囲気、脅してるだけかもしれねぇけど。だからってこっちが退くと思うなよ。
ポーチから片手剣を取り出し、身構える。その俺の姿を見て、ニヤリと不敵に笑う二人組。
「おう、やる気やなかったら、わざわざここまで来るかいな」
「そんぐらい考えたらわかるやろ」
口が悪いですねぇ!!でも、それだけ聞ければ十分だな。正当防衛だ。後悔すんなよ。
「おい、待て待て。なんでこっちに剣向けとんねん」
「おう、人に刃物向けたらアカンってオカンから習わんかったんか?」
「お前、アカンオカンて、韻ふんでるやん」
「やめろて、そんなつもりないねん。今そこイジんなや」
……なんだこいつら。なんかキメてんのか?
俺の冷たい目線に気付いたのか、気まずそうに咳払いをして元の空気に戻そうとする二人。いや、もう遅いよ。
「んんっ!ほな、いこか……」
「おお、そうやな──」
二人の姿勢が、低くなる。来るか。
「「────『ドキドキ!どっちが強いんD・A・I!!』」」
「は?」
「さぁ始まりました!今回はこちら、えー、お前、名前は?」
「俺?佐藤恭平だけ──」
「はいっ!挑戦者の佐藤恭平くんです!というわけでね、我々『双聖ちゃんねる』の蒼い弾丸、拳聖のヤジマと戦います!ヤジマさーん!?」
「はい、ヤジマです。今回はこちら、大阪城でどっちが足軽オーガをたくさん倒せるかをね、競っていきまーす」
「うおおおっ!サトやん!負けんなよっ!!」
バイザーをバチ上げ、両手を振り上げてヒトハが叫び出す。
「あれ?俺がおかしいのこれ?」
めちゃくちゃヒトハもノッてるな。なんでノレてんの?これビッグウェーブ?うそだろ?
「はい!それでは始まりますよ!制限時間は三十分!レディー……ゴー!」
「へ?へ?」
「ひゃっはー!!」
ヤジマと名乗った拳聖が、奇声を上げながら走り出す。そしてそいつに付いていく、もう一人の男。
「サトやん!急ぐぞ!負けてられん!!」
「足軽オーガを倒すの?」
「何聞いとってん!当たり前やがな!とりあえずウチはあっち見てくる!釣ってくるからサトやんが倒すんやでっ!」
「あ、はい」
「ぬおおおおっ!やったるでぇ!」
ガシャガシャと音を立てながら二人組とは別のルートへと走っていくヒトハ。
えーと?とりあえず足軽オーガを探して倒せばいいのね?足軽オーガってなに?
「わけわからん……とりあえずドローン付けよう」
ポチっとな。
『おい!コラボしてんじゃん!』
『双聖とバトルだろ!何やってんだよ!』
「は?」
『もう始まってんだから、早く倒せー!』
『向こうはもう戦ってるってー!負けちゃうぞ!』
「ええ……?」
『走れ走れ!あっち!右!』
『負けるなー!』
いまいちノッてないんだよなぁ。なんでみんなそんなに順応できてんの?
ドローンからの怒涛の要求に流されるように、城内の通路へと走り出すのであった。納得いかん。
◇◇◇
通路をジョギングしながら、周りをキョロキョロと見回す。あ、あれか?
赤笠を被った緑色のオーガが、竹やりを持ってンガンガ言いながら歩いている。
『いた!やれ!』
『はよ!はよ!』
「ええ……やればいいの?」
背は俺より小さい。百五十センチくらいか。それにひどく痩せてる。腕はオーガらしく筋肉質だが、アバラが浮いていてすごく不釣り合いだ。
落ち窪んだ瞳でギョロギョロと周囲を警戒していたが、ドローンと俺のやり取りに気付いてこちらへと駆け出してくる。
「ウガァ!」
竹やりの鋭い一撃。まともに食らえば腹に穴が開くだろう。食らえばだけど。
「ほい」
突き出された槍を、右手に握った片手剣でくるりといなす。俺の横を通り過ぎる竹やり。ビックリした顔の足軽オーガへと、すれ違いざまに剣を振るう。
目を見開いたまま、首から血を流して倒れていくオーガが魔石へと変わっていく。
足軽だからか、結構弱いな。
『何カッコつけてんだよ!』
『はよはよ!』
『バサカれ!』
無責任に煽りまくってきやがる。でも俺はもう大人なのだ。冒険者二年目、クランマスター。もはや昨年までのひよっこではない。
『ビビってんの』
「は?」
『ああビビってんのか』
『じゃーしゃーないな』
「おお?」
『はよ帰ってどうぞ』
『ごめんね?』
「あああああんっ!?」
だぁれぇがぁ、ビビってるってぇぇぇ!?
『効いてて草』
『図星やん』
「上等じゃおらああああ!矢でも鉄砲でも持ってこいやああああ!」
『わかりやすぅ』
『熱しやすく、熱しやすい』
声を上げて周囲を走り回る。どこだオラ!姿見せろオラ!
「オガ?」
廊下の角から出てきたじゃん!二匹ィ!
目を見開いてる足軽オーガちゃんの顔面に闘気と気功を併用した左拳をめり込ませる。
「こんにちはぁ!」
ビクゥ!と体を硬直させる足軽オーガくん。スキだらけだなぁおい!
「さようなラァ!」
もはや半ば癖になりつつある魔剣術で片手剣に魔力をまとわせながら、残った足軽オーガくんへと斬りかかる。
「グガ──」
白目を剥きながら魔石へと変わっていくオーガくんを見送りながら、辺りを見回す。
「足りねぇ足りねぇ、足りねぇなぁ!」
『おお……』
『わぁ……』
「こいオラァ!どこだぁ!足軽ぅ!」
悪いオーガはいねえがあ!!
◇◇◇
ダンジョンの中に、今までにない芳醇な薫りが満ちる。
これだ。
これを待ち望んでいたのだと、一瞬で確信できる。
待ってなどいられない、今、ここで──
「俺のものだ、全て、全て──」




