第69話 条件は大事だね。
「なんや、ばあちゃんのこと知ってたんか」
「ばあちゃん?」
「そう、お孫さんなのね」
「おまごさん」
「せやで。ま、ばあちゃんは今はどうでもええやろ?条件面の詰め、残っとるで?」
「そうね。給与は基本給百万プラス出来高払い。ダンジョン回数は上限なし、下限は月五回でどうかしら?」
「ふぅん、インセンティブ次第やな。他は?」
「いんせんてぃぶ」
「インセンティブも要相談ね。回数によって増やす累進制がいいと思うけど。福利厚生は、クランハウスの出入りくらいかしら。希望はある?」
「るいしん」
「恭平くん、お茶淹れますかぁ?」
「お茶飲みたい」
「はぁい、待っててくださいねぇ♪」
スミレが魔法で水球を作り、急須へとゴーシューティンしている。便利だなぁ。
「せやから、──が、──やろ」
「うーん、──は、──でどうかしら?衣食住も──」
「恭平くーん、お茶ですよぉ♪」
「わーい、ずずっ……あったまるぅ」
「良かったですぅ♪」
「え?あれがクラマス?ウソやろ?あんたちゃうん?」
「私はただの事務員よ。あれが、クラマス」
二人の視線(スミレも入れたら三人)が集まる。なぁに?話終わったの?
「いやいや……ほな、他の人は?パーティー構成、まだ聞いてなかったけど……」
「全員いるわよ」
「は?」
「全員いますよぉ?」
「へ?」
「全員いるぞ」
「マジなん?たった三人、しかも一人は冒険者ですらない、ただの事務員て……遠征より先にやることあるやん……」
あ、頭抱えてやがる。しょーがないなぁ。クラマスとして、最後のひと押しをしてあげようじゃん。
下を向いて悩んでいる様子の彼女の隣に座り、肩を叩いて話しかける。鎧かってーな。
「まぁまぁ、えーっと、城ヶ崎さん?」
「名字で呼ばんといて……名前で頼むわ……」
「あ、そう?ヒトハ、逆に考えるんだ」
「はぁ?逆って、何をやねん」
眉間にシワを寄せながらこちらを振り向くヒトハ。ははは、気になるかい?
「今入れば、君は組織のナンバーフォー、つまり、幹部」
「おお……幹部?ええ響きやん……!」
ちょっとソワソワしてるやん?目が輝いてるぞー?
「せやろせやろ。ええやんええやん」
「おい、似非関西弁やめろ、殺すぞ」
「あ、サーセン」
あかん。地雷やった。
◇◇◇
とりあえずお試し期間を設けることで合意した俺たちは、懇親会という名目でヒトハさんオススメの串カツ屋へとやってきていた。
「はー、リンちゃん魔神なんかいな。えらいこっちゃなぁ……」
「えへへ……」
「俺は?」
「ほんで姐さんは元販売所のエースかいな。粒が揃ってんなぁ」
「まぁね。クランハウスも、私が一括で買ったわ。十億だったかしらね?」
「俺は?」
「ウチもやる気出てきたわ。斧聖やからって、調子に乗ってられへんな!」
「なぁ、俺は?」
「あんたは死神のヒモやろ」
「ひどくない!?俺ヒモじゃねーし!!」
「私の方が恭平くんに尽くしてますけどぉ?」
「多分佐藤くんが言ってるのはそこじゃないわね」
「へーい、生中二つと、コーラと、オレンジジュースでーす」
俺の嘆きをかき消すように店員さんが割り込んでくる。
「あ、オススメ適当に揚げてくれるか?十人分な」
「あーい」
多くね?と思ったけど、健啖持ちだったな。じゃあ普通だな。
テキパキと注文を済ませたヒトハが、ジョッキを手にしてこちらへと目配せしてくる。
あ、後藤さんもこっち見てんな。なんだ?
「恭平くん、乾杯待ってるんじゃないですかぁ?」
「ああ、そういうことか?大人だな二人とも」
「いいから早く言いなさいよ」
「せやぞ、早よ言え」
「はいはい。えー、ヒトハさんと、俺たち個人企業勢の発展を──」
「長いぞー!校長かー!」
「うるっせぇ!かんぱーい!」
「「「かんぱーい!!」」」
ジョッキ同士がぶつかる、心地いい音が辺りに響く。
シュワシュワのコーラを一気に喉に流し込み──
「〜〜〜〜っ!!くはぁー!!うめぇー!!」
幸せぇ!!っぱコーラしか勝たん!!
「ぷはぁー!しみるでぇ!」
「くぅー!美味しいわねぇ!」
「んく、んく」
「つーか、ヒトハ、さん?って年上だったんだな」
「なんやねん、さん付けとかええて。ちょっと早よ生まれたかて、何も偉ないんやから」
ちょっぴりほっぺたが赤くなったヒトハが、一息で言い切った。
「ヒトハ、はずっとソロだったのか?」
「あー、まぁなぁ。初めの一年目は、色んなクラン転々として、まぁ、去年は、ずっとソロやったなぁ。その方が気楽やし」
「ふーん」
ちょっとだけ、寂しそうな横顔が──ほんとにちょっとだけ、気になった。
「さとー!!飲んでるかぁ!!」
「なんでだよ。早いよ。まだ一杯目だろ」
「うるはいわねー!酒は飲んでも!のまれるなー!」
「絶賛飲まれ中だろうがよ。自己紹介やめろ」
「あれー?さとーが二人いるー!あはははは!マヌケー!!」
「てめぇ後藤こら。あんま調子乗んなよ」
「あ、恭平くん、キャベツ美味しいですよぉ?このソースに付けるみたいですぅ」
「あははははは!!キャベツ!キャベツ!!さとーのキャベツ!!」
「もはやツボがわかんねぇ。どうしたらいいんだよこれ」
思わず頭を抱える。これ俺のせい?クラマスだから俺がなんとかしないといけないのか?マジで?
「あ、恭平くん、清子さんがおかわり頼んでますよぉ?」
「ダメに決まってんだろおおぉぉ!!止めろ止めろ!!」
「へーい、生中お待ちー」
「あいあとー!」
「くそったれええええ!!」
「なはははっ!楽しそうなクランやねぇ、ほんま」




