第66話 なんとか誤魔化せ!
「恭平くぅん?何があったのか、教えてくれますよねぇ?ぜ、ん、ぶ」
どこから取り出したのか、昔使っていた杖でパシパシと手を叩きながら、ハイライトの消えた目で喋るスミレ。
「私も気になりますね。とても心配していたので。ええ、とても」
何故か腰に下げた刀の鯉口を切りながら、無表情なまま迫るユキナ。
「待て待て、弁明させろ。あ、いや説明。弁明じゃない」
「何かしたんですか?ねぇ、何したんです?ねぇ」
「スミレ、まずはハイライトを取り戻そう。話は落ち着いて、理性的にすべきだと思わないか?」
「言葉は重ねるほど薄くなりますよ?恭平さん、まずは、事実を詳らかにすべきではないですか?」
「とりあえず刀から手を離さないか?あまりに俺に不利すぎると思うんだ」
二人がジリジリと俺に近寄ってくる。もはや風前の灯か?
スミレが俺の首筋に顔を寄せて、息を大きく吸う。
「すぅーーーー……死神の匂いがしますねぇ」
「い、いやいや、だってほら、戦ってたしね?」
ユキナが俺の後ろに回り込む。
「恭平さん、アキラさんの髪の毛が付いてますね?」
「ほら、小脇に抱えられてたしね?髪の毛くらい付くよね?」
ああ、ユキナの目がジト目になっていくぅ……。
「スミレさん。連れて帰りましょう」
「そうですねぇ、これはちょっと……清子さんに相談しないとですぅ?」
お、帰れる?生きて帰れるのか?
「じゃあ帰ろうぜ。ほれほれ」
「……少し引っかかりますが」
「とりあえず帰りましょうかねぇ」
◇◇◇
「あんた、なにやってんの?」
「正座だよ」
「いや、なんで?」
夜が明けて、後藤さんが起床して、部屋から出てきての第一声がこれです。
なんでだろうね?俺もやれって言われたからやってんの。意味なんか知らないよ。
「清子さぁーん!聞いてくださいよぉ!」
「後藤さん、もしかすると由々しき事態かもしれません。一度話をしましょう」
「へ?へ?」
魔神と剣神に両腕を掴まれて、そのまま個室へと拉致されていく後藤さん。
お、これは正座止めてよさそうだな。ラッキー。
「あー、足の感覚がねぇ……だるぅ」
三人はしばらく戻ってこなさそうだな。今のうちにマイナンバーカード確認しとくかー?
「よっ、と……うわぁ……なにこれぇ……」
『冒険者適性アリ』
『職業: 』
『スキル:早熟・遅咲・剣聖(50)・遠見(20)・気配感知(24)・マップ(20)・危機感知(23)・気配遮断(20)・超回復(34)・鎚聖(50)・挑発(20)・空間把握(26)・槍聖(50)・斧聖(50)・死聖(50)・盾聖(50)・弓聖(50)・拳聖(50)・杖聖(50)・魔力操作(30)・魔力回復(38)・疾走(20)・跳躍(20)・魔剣術(27)・暗殺術(20)・収納(20)・魔力感知(20)・剛力(24)・不壊(22)・縮地(26)・健啖(22)・基礎魔法(21)・気功(20)・闘気(20)』
えーっと……なんか、武器スキルが軒並み、聖スキルになって、る……?しかもレベルが跳ね上がってるな。全部マックスまで上がってやがる。
気功と闘気はまぁ、アキラからパクったようなもんだけど。
つーか、ここまで上げても俺はまだ職業空欄なんだな。自分のクランを作った以上、自己PRも何もあったもんじゃないし、もうどうでもいいけど。
「わからんこと考えても仕方ないか」
と、一人で納得していると、個室の扉が開いて、三人が出てくる。
先頭を歩いている後藤さんが、こめかみを押さえながら眉間にシワを寄せている。相変わらず苦労人だな。
「えー……佐藤くん?あなた、死神との戦いは、勝ったのよね?」
「え?えー?勝った、のかなぁ?引き分けじゃねぇかなぁ?とりあえずアキラは満足してたぞ」
「ま、満足ね……。ま、まぁ、無事に帰ってきてくれてよかったわ。それで、佐藤くんが死神に連れ去られてからは、えーっと、何してたの?」
「あー……まぁ、うん。アキラの隠れ家みたいなところに連れてかれて、トリックスターに来ないかって、スカウトされたよ」
三人の目の色が変わる。
「トリックスターに行くんですか?なぜ?神の祝福ではダメな理由でも?」
「恭平くん!い、いかないですよね!?」
「そのパターンあるのね……ビックリしたわ。まぁ、個人の自由ではあるけど」
「待て待て!行くわけねーだろ!俺はここのクランマスターだぞ!?そんな不義理できっかよ」
「……本当ですか?では神の祝福に?」
「そういう話じゃなかったですよぉ!?恭平くんは、個人企業勢のクランマスターですからぁ!!」
「あ、断ったのね。ま、そのほうが佐藤くんらしいわね」
勝手に俺を神の祝福に入れようとするユキナと、それを制止するスミレ。その横で納得したように手を叩く後藤さん。
「そーゆーこと。で、話の流れでなんだけど、このクラン、もっとデッカくしようと思ってんだけど」
「ん?デカく?……いいんじゃないかしら。死神との一件に片が付いたなら、スカウトもしやすいでしょうし。ただ、そうねぇ……」
うーん、と首をひねりながら何かを考えている後藤さん。
「なんだ?何かあるなら、はっきり言ってくれよ」
チラリと、ユキナとスミレの方を見てから、後藤さんが観念したかのように口を開く。
「ぶっちゃけ、東京近辺の有望株は軒並み大手クランに取られてるわよ。それ以外も普通は中堅クランに入ってるし、スミレちゃんの件もあるからね」
「じゃあどーすんの?」
「遠征したら?大阪とか」
「はぁ?」
遠征編ってか?おいおい……マジかよ。




