↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
65/75

第65話 危ないのは世界、違うわ、俺だ


「一緒ぉ?俺が?アキラと?」


 一緒に、ってお前。俺はまだ成人したてだぞ。将来のことなんか考えてもない──


「ああ、一緒に──へへ、別にそっちの意味でもいいぜ?」


 俺の顔を見て、真面目な顔からニヤリと表情を変えるアキラが、ローブを荒々しく脱ぎ捨てて、こちらへと近付いてくる。


 あれ?捕食される?


「待て。待て待て。おい、脱ぐな。俺はまだピュアでいたいの。双方の同意に基づけよ!」


「ああ?合意形成済みだろ?」


「今!現在進行中で異を唱えてるだろ!俺を見ろ!」


 俺の拒否を受けてか、アキラの動きが止まり、肩をすくめながらベッドへと座り込む。……ローブを羽織るつもりはなさそうだ。


「つれねーなぁ。ま、アタシはいつでも歓迎だからよ、その気になったら言えよ?」


「なったらな。……で?一緒に、ってのはどういう意味だ?」


「そのままの意味だよ。恭平、アタシのクランに入れよ。一緒に日本をダンジョンから解放しようぜ」


「解放?なんでだよ。日本はこれでうまく回ってんだろ?よそはダメだったけどさ」


「いや、海外はどうでもいいんだよ。でも、日本も結構ギリギリだぜ?ま、パンピーには伝えてねーだろうけど」


 ギリギリ?いや、海外が全滅したらしい、ってのは世界史の授業で腐るほど聞いたけど、日本は国土の狭さと人口密度?とかでイケてたんじゃねーの……?ギリギリ、なのか?


「ピンときてねーか?まぁ……東京にいたらあんまりわかんねーか。東京は冒険者の数も多いからな。地方はそろそろヤバいぞ。手が回らなくなってきてる場所もある。どっかが溢れたら、すぐだぜ?」


「いやいや……え?だから俺たちが──適性持ちがダンジョン抑えてるんだろ?その間に上位クランが、ダンジョン潰して……それで回ってるから、日本は──」


「それが限界って話だよ。上位クランにも勘付いてる奴はいるんじゃねーか?神の祝福の篠原とかな。だからアタシたちは、この国のガンを潰しに行かなきゃいけねーんだよ。手遅れになる前にな」


 ──授業で聞いたことがある。この国のダンジョンを生み出す原因。日本におけるダンジョンたちの母。


「マザーダンジョン、富士山麓第ゼロダンジョンを、神スキル持ちでぶっ潰す。それがアタシの目的だ。恭平、トリックスターに入れよ」


 マザーダンジョンを、潰す。


 正直考えたこともない。っていうか、あれは潰せるのか?そもそもデカすぎて何層あるかもわかってないんじゃなかったっけ……。


 いや、今はそれよりも、アキラに返事しないとだな。


 アキラの言いたいことはわかった。言ってることが本当なら、確かにそうすべきだろう。


 ──でも。


 俺の中に残ったプライドが、わずかに邪魔をする。


 俺のやりたいこと。俺たちがやるべきこと。やらないといけないこと。


 日本を存続させるために、俺たちは職業選択の自由を取り上げられた。まぁ、それはいい。就職先が限定されるだけで、勤労の義務なんてみんな課されてるわけだし。


 でも、俺を受け入れてくれるクランはなかった。当然トリックスターにだって、応募はしてる。というか、東京中のクランに応募したんだし。


 ……それに、俺のために仕事を辞めた後藤さんを裏切るってのは、ナシだ。


「アキラ、答えは一つだぜ。──今更スカウトしたって、もう遅い!だ。俺はこう見えても、クランマスターだからな」


 アキラの顔が、一瞬だけさみしそうに陰る。


「……そうか。へへ、半年なんて言わずに、すぐ襲えばよかったな」


「いや、やめて?っていうか、襲ってるからな?初めのやつなかったことにすんなよ」


「はははっ!でも待った甲斐はあったぜ?最高にな」


「そーかよ。……まぁ、協力はするよ。俺だって日本が滅ぶなんてのは嫌だしな」


「……そっか、ありがとな」


「どういたしまして。まだ何もしてないけど」


「へへ、そうだな。…………なぁ」


「ん?」


「そっち、行ってもいいか?」


「……ご自由に。アキラの隠れ家だしな」


 ◇◇◇


 ついでとばかりに、アキラとの戦いでボロボロになった服を着替える。


 ミスリルの防具も壊されちゃったし、またなんか考えないとなぁ。


「なぁ」


 ベッドに寝転がったアキラが、こちらを見つめながら話しかけてくる。


「どした?」


「もう行くのか?」


「おう、さすがに帰らないとな。みんな心配してるだろうし」


「……そっか」


「なんだよ、急に殊勝になりやがって。別に今生の別れでもなんでもねーだろ?」


「……それは、そうだけどよ」


「つーかよ、俺たちはライバルだぜ?アキラはユキナと神の祝福だけじゃなくて、俺とスミレの個人企業勢にも追いかけられんだからな!覚悟してろよ?」


「……へへっ、じゃあ、うかうかしてらんねーな!」


 少し元気でたか?アキラがションボリしてると調子狂うわ。


「じゃーな、アキラ」


「ああ、またな、恭平」


 ◇◇◇


「あ〜、ようやく入り口が見えてきた……」


 よく考えたら、アキラに抱えられて隠れ家に行ったから、帰り道わからないんだよな。


 マップスキルあってよかったよ。なかったら迷ってた。自分のスキルでも最近存在感の薄かったスキルに、命を救われるとはね。


「今日はもう帰って寝よう。その後はご飯いっぱい食べ──」


 危機感知にド級の反応が入る。理由は一つ、いや、二つ……。


「恭平さん、ようやく、戻ってきましたか」


「恭平くぅん?今まで、どこで、何してたんですぅ?」


 入り口で腕を組んで、こちらを睨む、二人の女神。


「当然、説明、してくださいますよね?」


「当たり前ですよぉ。ずっっっと、待ってましたからぁ。心配しましたよぉ?」


 すまんアキラ。もう会えないかも。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。