第58話 いや、神の方が触ってくるんだが?
「ああ、それは多分、竜胆さんのせいでしょうね」
「ああーん?なぁんで私のせいなんですかぁ?」
「それは私も知りません」
「スミレ?俺たちがお邪魔してんだから喧嘩売るのはやめよ?」
「むぅぅぅ……」
ダンジョン討伐をした翌日。ユキナとトレーニングをする前に昨日のことを伝えたら、これだ。
スミレは導火線短すぎるし、ユキナは火花飛ばしすぎ。
相性悪い……いや良いのか?それはどうでもいいか。それよりも……。
「ユキナ、なんでスミレのせいって思ったの?」
「…………まぁ、いいでしょう」
なんでちょっと嫌そうな顔するんですかねぇ?お前が来いって言うから来てんだぞ!
「…………まぁ、いいでしょう」
「なんで二回言ったん?謝ったほうがいい?」
そういうやつ?謝るまでイベント進まないの?ここはオープンワールドだぞ!
「いえ、私が竜胆さんのせいだと言ったのは、私にも経験があるからです」
「経験?エンペラーが出たってこと?でも子どもっぽかったぞ、小さかったし」
「それも経験がありますが……つまり私が言いたいのは、ダンジョンは私たちを警戒しているようだ、ということです」
私たち?ってことは、ユキナとスミレか。共通点なんか、考えるまでもねぇな。
「神スキルか」
「そうですね。そうだと思います。神の祝福で討伐に出たとき、私がいたときの方がボスのランクが上がるようなのです」
「ふぅーん。たまたまじゃないですかぁ?」
「スミレ、喧嘩腰やめろよ。ユキナは俺の師匠みたいなもんなんだ」
「あ、ご、ごめんなさい……」
シュンとして下を向くスミレ。
言いすぎたかな……。クランメンバーがよその、トップクラスのクランに喧嘩腰は困るんだけど……。
「……恭平さん、私は構いませんよ」
「……ん?いやいや、そうは言ってもだな──」
「本当に構わないですよ。スミレさんとは、長い付き合いになりそうですし」
「お、おう、おお……?まぁ、ユキナがそう言うなら……良かったな、スミレ」
「……恭平くん、もう怒ってないですかぁ?」
「いや、本人がいいって言ってるんだから、俺が怒る筋合いなんかねぇよ」
「良かったですぅ!ギュー!」
ぬぉぉ!だからそういうのは!やる相手を選ばないと!ダメ──
「そこまでは許していませんよ?」
「なんであなたの許可が必要なんですかねぇ〜〜!?」
「私が恭平さんを教えているので」
「私はクランメンバーなんですけどぉ!?」
「では訓練を始めるので離れてください。さぁ、恭平さん、剣を構えるときは……」
そう言いながら俺の後ろに回ったユキナが両手を包み込むように握ってくる。ホワイ?
「ああああああ!!ズルいです!それはダメですよぉ!?」
「訓練なので」
「ウソつくなですぅ!」
「ウ、ウソではないです」
「動揺してるのバレバレですよぉ!?」
「当たってるんだけど」
「こ、これは訓練なので」
いや、スミレじゃないけど動揺してるじゃん。なに?俺の取り合いか?俺は物じゃねぇぞ。
「きょ、恭平さんも集中してください」
「いや無理だって。なんでこんなことになってんの?」
「いいから離れやがれですよぉ!」
「さぁ恭平さん、目の前の女を魔物と思って」
二人とも、俺を挟んで争わないでくれるかな?俺の命が危ないよ?つーかユキナさん?魔物と思ってどうすんだよ。何させる気だよ。
「とりあえず離れてくんない?剣振りにくい」
「む……仕方ありませんね」
何故か俺をグッと強くホールドしなおしてから、渋々といった感じで離れていくユキナ。
「んじゃ気を取り直して……よろしくお願いします」
訓練?ボコボコだよ。
◇◇◇
『触らなくても【死神報告スレ375】祟りあり』
名無しの殉教者
トリックスター最近勢い落ちてない?
名無しの殉教者
トリックスターってか死神だろ
最近ダンジョン行ってないらしいぞ
名無しの殉教者
なんでやねん
トリックスターなんか死神ソロクランみたいなもんじゃん
あいつ行かねーと詰むやろ
名無しの殉教者
知らねーけど
あー
あれは?バーサーカー
名無しの殉教者
まだ二ヶ月先だろ?
今から何を準備するんだよ
うきうきすぎだろ
名無しの殉教者
知らんて
◇◇◇
「小紅、そろそろダンジョン──」
修練場に来たことを後悔した。もう今更だが。
我がクラン、トリックスターのエースである死神・小紅アキラが、修練場の中心で座禅を組んでいる。
あの状態の小紅に下手に近付けば、刈り取られる。
座禅を組んでいるだけなのに、汗をダラダラと流す小紅を見つめる。
──恐ろしい。
盾聖として、数多の魔物の攻撃から身を挺して仲間を守ってきたからこそ、よくわかる。
今の小紅の前に立てば、数秒で消し炭になるだろう。
なぜそこまであの男に入れ込むのかは全く理解できんが……。
「──くわばらくわばら、触らぬ神に祟りなしだ」




