↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
56/75

第56話 ゴブダンのボス、現る


「ここが五層か……」


「ですねぇ」


『おお……』

『ついにボスか』


 気を取り直して……いや、取り直せてはないんだけど、それをなんとか、取り繕いながら。


 階段を降りて五層へと到達する。


 第一印象は、狭い。


 ミスリルゴーレムのときは、野球ができそうなくらいだった。今はこれ、体育館よりも小さいくらい……か?


 その中心に、二メートルを超える偉丈夫──ゴブリンキングが、二体立っている。


『二体?』

『ボスなのに?』


「…………」


 ちらりと、後ろに控えているスミレを見る。俺一人でやれるか、正直わからない。


「ハァァァァァ……」


 二十メートル余りの距離にいるゴブリンキングが、動き始める。もう時間はない。


 片手剣とメイスを取り出す。ゴブリンキングの目が開く。


 四つの瞳が、こちらを射抜く。


「カアァァァ……!」

「シイィィィ……!」


 狭い五層の中に、濃密な殺意が満ちる。


「へっ、お前らの子分は軒並み俺がぶち殺してきたぞ。次はお前らの番だ。どっちからがいい?」


 剣の切っ先を、ゴブリンキングへと向ける。右、左、どっち?


「カアアアアアア!」

「シャアアアアア!」


 俺の意図が正確に伝わったのか、歯をむき出しにしてこちらへ威嚇を仕掛けてくる。猿みてぇ。


「怒った?怒ったの?はっ!じゃあ来いよ!」


 トドメとばかりに両手を広げて挑発を繰り返す。


 二体の姿が消える──


「オラァ!」

「ガァ!」

「シィ!」


 右ゴブキンの貫手を、片手剣で弾き返す。


 左ゴブキンの右ストレートを、メイスで叩き返す。


「どうしたぁ?そんなんじゃ俺は殺れねーぞぉ?」


『ボスにも煽ることを忘れない』

『バーサーカーの鏡』

『自慢のバーサーカーだ』

『スミレたんを守れ!』


「カァ!」


 右ゴブキンが貫手を引いた勢いを利用して左回し蹴りを放つ。嵐のような風を巻き起こしながら向かう奴の脛を斬りつけるが──硬い!!


「ぐっ、うぉ──」


「シィ!」


 回し蹴りの勢いに押されて生まれた隙を突いて、左ゴブキンから左フックが、俺の脇腹へと吸い込まれていく。


 回避──は無理!


 急いで全身に魔力を漲らせて、不壊を発動させる。


 メキ、という嫌な音が体に響く。


 不壊発動により急速に魔力が体内から消えていく。


「ぐっ、ラァ!」


 左手に握ったメイスを振り、左ゴブキンから距離を取る。


「クソッタレ、速すぎだ。手数が足りねぇ」


 脇腹がジクジクとした痛みを訴える。骨は折れてないが、生身で受けるのはいかにもマズい。不壊をした上で貫通してくるなら、躱すかいなすか。直撃だけは避けねぇと。


 剣とメイスを振り回しながら考える。こいつらは俺の懐に潜り込んで手数で叩いてきてる。


 オマケに体も硬い。多分魔剣術じゃないとマトモに刃が立たない。


 でも魔剣術を使う余裕は、こいつらから貰えそうにない。


「詰んでる……いや、発想を変えるべきか、な?」


 剣とメイスをポーチへと戻す。


 相手の攻撃が速い。手数が足りない。オマケに硬くて刃が通らない。


「じゃあ、素手喧嘩(ステゴロ)しかねぇよな?」


 両手を握りしめ、顎を隠すように持ち上げる。


 ミスリルの篭手があって助かった。帰ったら後藤さんになんかごちそうしてあげよう。


「カァァァ……」

「シィィィ……」


 中腰に屈みながら、こちらを警戒するようにうかがうゴブキン共。


「おいおい、数で勝ってんのに先手譲るとか正気かよ。押して押して押して推して参る!」


 短期決戦だ。


 両手と両足に魔力を注ぎ、剛力と縮地を発動。更に篭手へも魔力を注いで、魔剣術──魔拳術か?──を発動。


 縮地を細かく使いながら、左右にフットワーク。少しずつ間合いを縮めて──


「シッ!シッ!シャア!」


 ワンッ!ツー!アッパーだオラァ!


 コンビネーションを左ゴブキンの顎へと喰らわせる。


「ジッ……」


 膝から力が抜けて倒れていく左ゴブキン──の陰から右ゴブキンのハイキックが襲いかかる。


「カァァァ!」


「はっ!ハイキックとは、わかってねぇなぁお前も!」


 縮地を細かく発動し、真後ろへとステップバックをしてハイキックをやり過ごす──と同時に、再度縮地を発動し、再び間合いをゼロへと戻して、渾身の右ストレート。


 顎が砕けた右ゴブキンが、そのまま力なく倒れていく。


「けっ、テメェで隙を晒してりゃ世話ないってな」


 相方がヤラれて焦ったか?青いね。


『おお!ボス撃破!』

『ソロでダンジョン討伐とか、神スキル以外で初めてじゃね?』

『初のはず』

『これが個人企業勢か』


「オラアアアアア!ゴブダンなんぼのもんじゃーい!!」


 エイドリアアアアアアアン!!


『めっちゃ調子乗ってる』

『まぁソロ討伐だし』

『実際すごいしなぁ』

『あれ、今なんか動いた?』


 その時、俺は完全に油断していた。


「キャキャ」


 危機感知──


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。