第55話 ボス前の一休み、休めると思ってた……
「お、階段か。……ってことは?」
「五層目、ですねぇ」
「次がボス?」
「かも、って話ですぅ」
「ゴブダンのボスなら……ゴブリンキングか」
「多分そうですねぇ」
四層の奥、階段のある広場へとたどり着いた。この先は恐らくダンジョンボス。
行くなら、しっかりと休んでから行きたい。
『まじでいくん?』
『魔神いるなら大丈夫やろ』
『でも魔神は戦ってなくない?』
『女神がいるだけで加護があるだろうが!!』
『あ、はい』
相変わらずのコメント欄である。
「それはそれとして、休憩するんで切りますねー」
ポチッとな。
ドローンが動きを止めたのを確認してから、息を吐き出す。
義務とはいえ、何万人に見られてるってのはどっか緊張しちまう。
「恭平く〜ん、ここ座ってくださぁい♪」
地面にレジャーシートを広げ、バスケットを取り出す。そんな感じで手際よく休憩の準備を整えたスミレが、自分の隣をポンポンと叩きながら呼びかけてくる。
もちろん、否やはない。
ないんだけど。
「準備良すぎない?」
「ほぇ?」
「ほぇじゃないんだよなぁ」
可愛いんだけどぉ!なんか手を出したら終わりそうな気配がすごくてぇ!
……いや、クランメンバーをそういう目で見るのは良くないな。スミレを裏切ることになるし、それだけは絶対にしない。
「どうしましたぁ?」
「ううん!なんでもない!」
なんか危機感知発動しそうだったので、急いで座る。ふぅ、危ない危ない。俺が変なこと考えそうになってたのがバレたのかな……。やっぱ神スキルだし、そういうのわかるとか……もしくはそういう魔法があ──
「ああああああああ!!」
「どっ、どうしたんですかぁ?」
「魔法じゃん!魔法!!魔法教えてくれよ!スミレ!!」
真隣に座ったスミレの方へと向き直り、願いを乞う。なんてったって、魔神だ──
ちゅっ
「あ」
「ふぇ」
くち、びる、やわら──
「ふぇぇぇぇぇぇ!?」
「あああああああ!!ごめええええええん!!」
縮地ぃ!距離取れぇ!
そして、迷いなく、素早く、土下座!
「すみませんでした!ごめんなさい!わざとじゃないんです!本当に──」
とんでもないことをしてしまった。ついこの前辛い経験をしたばかりの彼女に、よりによって、キ、キス、を……あれ?
は、反応が、ない……?
地面に擦りつけた頭をそーっと上げて、スミレの様子を見る。
口を手で覆って、下を、向いてる……?
「これはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれはたまたまこれは……」
めちゃくちゃ言い聞かせてるううううううう!!ごめんなああああさいいいいいいいいい!
◇◇◇
「ほ、本当に、ごめんなさい……」
「い、いえ、そのぉ、私も、ちょっと……あの……なんでもないですぅ……」
お互いに顔をまともに見れず、ゴニョゴニョ言いながらも何とか謝罪の気持ちを伝える。
もうこれ以上何も言えねぇ……。時間戻す魔法とかない?ないか。ないよな。つーか使っても覚えてたら意味ねぇか。難しすぎる。
とりあえずもっかい土下座しとこう……。
「あ、きょ、恭平くん!ほ、ほんとに、大丈夫なのでぇ、土下座は、やめませんかぁ……?」
「あ、ああ……わ、わかった。でもその……」
「も、もうこれ以上は、私も、正気が保てないのでぇ……」
「よし、先を急ごう!」
あっぶねぇ。ブチ切れる寸前じゃねぇか。なんでって?さっきから俺の危機感知がすごい反応してるからだよ!クランメンバーに殺されるクラマスいるぅ!?ここだよぉ!!
「そ、そうだ!ドローンいれるぞ!?」
「はっ、はいぃ……」
大急ぎでドローンのスイッチを押して、配信を再開する。
『お?休憩終わり?』
『早かったな』
『なんか雰囲気変じゃない?』
頼むみんな。俺の命を繋いでくれ!あと余計なこと言うなよ!マジで!
『ははーん、これはバーサーカーがなにかやったな』
「してねぇわボケェ!余計なこと言うなよぉ!!」
『あれ?』
『これマジのやつ?』
『効いてて草』
ダメだ、こいつらを信じた俺がバカだった……。
これはもうゴブリンに当ててもらうしかない。すまんゴブリンキング。俺のために死んでくれ。




