第54話 ゴブリン団体さん、おな〜り〜
十数匹のゴブリンの群れの最奥で、一際デケェクソゴブがこちらをニタニタと笑いながら見つめている。
「弓矢は無駄ってか?その勘違いをブッ壊してやってもいいけど──」
鉄の矢は有限だしなぁ。他武器の試しもしていくか。あ、秋の剣祭りは終了しました。
そうと決まれば話は早い。ポーチへと弓矢を戻して、片手剣と盾を取り出す。
『あ、盾だ』
『バーサーカーにあるまじき守りの姿勢』
『いや、数で負けてるしなぁ』
『バーサーカーやられたらスミレたんが』
『魔神だし大丈夫だろ』
『やだ!』
『ややこしいなコイツ』
そうこうしている間にもナイトを先頭にしたゴブリンの群れはこちらへと近付いてきている。その距離、二十メートル……今だっ!
縮地と跳躍の、同時発動!
足に込める魔力は爆増するけど、とんでもない距離を飛び越えられる。この三ヶ月で発明したスキルコンボだ!
「──ギ?」
「上だよバァーカ!」
こちらの姿を見失い、周りをキョロキョロするナイトの首を切り裂きながら空を駆け、ゴブリンの群れの中心で着地。
「ギッ!?」
「ギャアアアア!」
「ギギギィ!」
「ギーギーうるせぇなぁ三下共!文句があんならかかってこいよ!」
周囲のゴブリンの目つきが変わる。首から血を噴き出しながらうずくまっているナイトは無視。
左右に二体ずつ俺を囲むように立つソルジャー、ウォーリアーに、そいつらの陰に隠れるようにしているアーチャーとソーサラーが四体、さらにその後ろからランサーが何体か割って入ってきている。そして後ろからこちらを睨んだままの、ジェネラル。
ジェネラルの邪魔がいつ入るか、だな。
「グガアアアアア!!」
ジェネラルの号令を合図に、攻撃が始まる。右にいるソルジャーとウォーリアーの攻撃を剣で弾き、グリーブで蹴り返す。
「ギギギィ!」
左からの剣撃を盾で思い切り弾く。体勢を崩したところに──
「ギギャア!」
「おわっとぉ!」
剣を弾いたソルジャーの背後。アーチャーの弓から矢が放たれる。
ちっ、面倒くせぇな。
矢の軌道を読み取り、自分の額とピタリと合わせる。
『あぶ』
カィン、と甲高い音が鳴り、矢が鉢金に弾かれる。
「ギィ!?」
周りのゴブリンの動きが、一瞬止まる。その隙、いただきますっ!
「オラァ!」
目の前のソルジャーを片手剣で切り捨てる。
「シャア!」
隣にいたウォーリアーを盾で殴り飛ばす。
開いた空間の先、アーチャーとソーサラーにターゲットを定めて──縮地。
「どっ、せい!」
一息に、二体とも切り裂く。
「オラァ!どうしたどうした!プレッシャー足りねぇぞ!!」
挑発挑発ぅ!
剣と盾を打ち鳴らして、煽る。ひたすら煽る。
少し腰の引けていたゴブリン共の目に、再び怒りの火が灯る。
「ギギャアアアアア!」
「ガアアアアア!」
「よーし!いいぞ!こいこい!!」
まず一番近いソル──
「ギアアアアア!」
「あっぶねぇ!」
『ソーサラー!?』
『杖で殴りかかってるwww』
『直に殴りたくなる顔つき』
『魔物もバサカってる?』
挑発効きすぎだろ!でも、近付いてくれんのはありがたい!
手に持った粗末な杖を振りかぶるヨボヨボのゴブリンを盾でぶん殴る。
首が半回転して後ろを向いたまま倒れていくソーサラー。次!
「ギィィィィ!」
ソルジャー、ウォーリアー、ランサーが三方向から攻撃を仕掛けてくる。
槍の突きを腰を反らすことでかわし、剣の横薙ぎを盾でいなし、斧の振り下ろしを剣で弾く。
「オラアアアアア!」
腰と腕で槍を絡め取り、ランサーごと振り回す。
「ギッ──」
「ギャッ──」
「だらっしゃあああああい!」
鉄の棒とゴブリンのセットじゃい!
さっきから、こっちを狙っているアーチャーくん!?プレゼントだよぉ!!
『バーサーカーって、何でも武器にするんだな』
『ゴブリン可哀想と思ったの初めてかも』
『お、初見だ』
『囲め囲め』
『逃がすな!』
ランサーにアーチャーを叩きつけ……逆か?アーチャーにランサー?……ええい!とりあえず残りはランサーとジェネラ──
「グルガアアアア!」
気配感知に急速に近付く反応。
慌てて振り返り、反射的に剣を振るう。
抵抗なく入っていく剣と、驚愕に染まるゴブリンの顔。
「どわぁ!?」
『ランサー!?』
『なんで体当たり?』
『違うって!投げられたんだよ!』
「グルガアアアア!」
慌てて剣を振ったことで、流れた体勢。隙といえば、隙。そんな僅かな隙を作るためだけに、仲間を犠牲にしやがったか!
歯をむき出しにして叫びながら、上段に剣を振り上げて突撃してくるゴブリンジェネラル。
『やばいやばい!』
『魔神ちゃん!なんとかしてー!』
『いや、全然動いてないぞ!?』
『なんでええええ!?』
なんでって?決まってんだろ。
「こんなもん、ピンチでもなんでもねぇんだよ!!」
ユキナより遅い!
アキラより怖くない!
三下の頭は、所詮三下なんだよなぁ!!
両足に魔力を込める。剣は間に合わねぇけど、盾はまだ残ってる。
──縮地発動!
目的地は、ジェネラルの後ろ。縮地のルート上にいるジェネラルへ向けて盾を構えて衝撃に備えながら、一歩を踏み出す。
「オラアアアアア!」
盾に、全身に走る衝撃。車に撥ねられたように弾かれて飛んでいく俺とゴブリンジェネラル。
ぐるぐる回る視界の中に映る。祈るようにこちらを見ているスミレの顔。
心配すんなって、俺は負けねぇからよ。
「ふんっ───ぬぅぅぅ!!」
『立ったぁ!』
『ジェネラルは!?』
『まだ倒れてる!いけるぞ!』
急いで立ち上がり、剣を構えて再び縮地を発動。ジェネラルの目の前へと移動する。
ジェネラルは内臓がやられたのか、口から血を吐き出しながら苦しそうにもがいてる。
一思いに楽にしてやる。
「あばよ、これで俺も、初心者卒業だ」
振り下ろした剣は、最後まで抵抗を感じさせなかった。
『初心者?』
『初心者(概念)』
『人間初心者ってことかな?』
『バーサーカー、あなた人の心が……?』
コメント辛辣ぅ!
「恭平くーん!」
「おお、やったぜスミレ。これくらいなら、なんとかなるわ」
「じゃあガンガン行っちゃいましょー!次はダンジョンボスですぅ!」
……やる気に満ち溢れてるけど、殺るの俺だよね?




