第52話 日帰りできるくらいの距離が一番疲れる
「さて、二層か」
「二層ですねぇ」
相変わらず土でできた地面、壁、天井。広さは一層よりも広く、横幅十メートルはある。
そして真横にはスミレ。
『距離近くない?』
『やってんな』
『スミレたん……』
コメントうるせぇな。
「この層はゴブリン上位種だっけ。何が出るか知ってる?」
「ええっとぉ、ソルジャー、ランサー、ウォーリアー、ナイト……だったかと」
剣士、槍使い、斧使い、盾使いか。近接のみなら、なんとでもなりそうだな。
「あとは三体以上で出現するくらいですかねぇ?」
「ふーん?」
全く問題ないな。なんなら倍……いや、ゼロが一つくらい増えてもイケる自信がある。とりあえずは試してからだけど。
「あ、でも魔石も落とすアイテムもお金にならないので、そんなに頑張って狩らなくてもいいかもですねぇ?」
なにぃ!?
……わかってない。わかってないよスミレ!
「んぁかってないよぉ!」
「ふえっ!?」
「いいかスミレ、あいつらはな、ゴブリンなんだ」
スミレの両肩を掴み、残酷な真実を伝える。
「え?え?あの、きょ、恭平くん……?その、肩……」
「スミレぇ!ゴブリンのGは、ゴキ○リのGだぞぉ!?見つけ次第即滅!見つからなければ探して即滅!滅滅滅だよ!滅すぎてゴメンね!?」
「ふ、ふぇぇ……」
「わかった!?」
「わ、わかり、まひた……」
『なにこれ』
『バサカりの予感』
『悪寒じゃない?』
『なぁ、スミレたんって、やっぱり』
『いい加減諦めろよ』
『やだああああ!』
「そして奴らは──」
「ギギャア!」
「ギギギィ!」
『あ』
『見つかった』
『こんだけ騒げばね?』
道の向こうから、剣と槍と斧をそれぞれ持ったゴブリンが三体。心なしか一層の雑魚よりも筋肉質な気がする。
「──クソめ、盛り上がってたところなのによぉ!」
「あ、あひ、あ……」
ほらぁ!スミレが、パニクってるじゃん!!もおおおおお!!邪魔すんなって言ってるだろおおおおお!?
「タンパク質コラァ!豊富かぁ!?おぉ!?」
『どういうキレ方?』
『多分ムキムキだからじゃない?』
『俺たちのバーサーカーが帰ってきた』
真っ直ぐゴブ共を見据える。距離はまだ、三十メートルはある。こっちに向かって叫びながら走ってきてるけど、全然遅い。
「感謝しろぉ……今日は恭平!秋の!剣祭りじゃあ!」
『感謝要素ある?』
『ない』
『ないかぁ……』
ポーチからミスリルの片手剣と長剣を取り出す。片手剣、刃渡り六十センチくらい。長剣、刃渡り九十センチくらい。
あんまり変わらねーって?バカ言え全然違うぞ。ミスリルだから軽いだけだぞ。
「さぁ、来なさいゴブリンくん」
一番武器が軽いからだろう。剣持ちのゴブリン、ゴブリンソルジャーが先頭になって向かってくる。その後ろに斧を持つウォーリアー、槍持ちのランサーが続いている。射程的にもこれが一番あってんのかな?
「ギィィィィ!」
剣を無造作に振りかぶり、叫び声を上げながら襲いかかるゴブリンソルジャー。
──の懐に縮地で飛び込む。
「バイバイゴブリンリン」
左手に握った片手剣の切っ先をゴブリンの喉から奥へと差し込む。
抵抗なく、ぬるっとゴブリンに吸い込まれていく刃先を、クイッとひねってそのまま横へと振り切る。
「ギ──」
ほとんど千切れかけた首、その上にある瞳から光が消える。
『うおお……』
「グギャアアア!」
ゴブリンウォーリアーが、気にする様子もなく突っ込んでくる。口からヨダレを撒き散らしながらだ。いいね、狂ってるね。
横薙ぎに振るわれた斧。ははーん、こいつ木こりだな?
「ヘイヘイホー!」
「ギッ!?」
斧の根元を片手剣で断ち切る──続いて、力なく飛んできた斧の先っぽをミスリルの胸当てで弾き返す。
「へーい、ナイストラップぅ──かーらーのぉ!お返しぃ!」
剛力を発動させながら、長剣を振り回す!
「グガ──」
上と下の二つに分かれた斧持ちウォーリアーくん。武器もないのでもう終わりだね。
「ギャアアアアア!」
『突きだ!』
『危ない!』
「危なくないっ!」
片手剣と長剣をクロスして槍を挟み込み、ゴブリンランサーが突き出した穂先の向きを明後日の方へとずらす。
「ギャッ!?」
そんなにさぁ、無防備ならさぁ!
「そりゃりゃりゃりゃ!」
八つ裂きの刑、執行だよねぇ!
さらばゴブリン!豊富なタンパク質だったぞ!
『おおー』
『バラっバラだー』
『きたねぇ花火だ』
『ほんとにな』
「オルァ!次の生け贄コラァ!出てこいオラァ!」
『あー』
『バサカってるなあ』
「あっ、恭平くーん!待ってくださぁーい!」
待てるかぁ!
久しぶりにテンション上がってきたぜぇ!スミレの分は残さねぇからなぁ!
「うおおおおおっ!」
『ここって何層?』
『できたてだし五層じゃない?』
『じゃあ後三つか、マジで行きそうだな』
行くに決まってんだろ!日帰りで討伐したらぁ!




