第51話 ダンジョン討伐デート、デートったらデート!
「で、ここか」
「お嫌でなければ、ここにしたいんですけどぉ……ダメですかぁ?」
「……んーん。構わんよ」
どこって?足立第三百八ダンジョン、通称ゴブダンだ。ここの売店の人、再就職がんばってくれよな!
「じゃあ、ドローンは……俺のでいい?多分騒がしいけど」
「大丈夫ですよぉ」
スミレの了解を得て、ドローンのスイッチを入れる。
周囲の魔素を吸い取って浮かび上がると同時に、カメラのレンズが俺の姿を捉える。これで勝手に配信が始まる上に、その通知が登録してる人にいくんだから、不思議なものである。
『はじまた』
『お?』
『え!?』
『マジ!?』
『魔神だあああああ!!』
「こんにちわぁ〜♪」
『うっわ、かわよ』
『なんこれ』
『ひええ……浮いてる』
『南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏』
『信仰の類やん』
あ、ダメだなこれ。視聴者のコメント止まらねぇ。相手してたら日が暮れるぞ。
「はいはい、終わり終わり。じゃあもう先進めまーす」
まだコメント欄が騒がしいけど、無視して進もう。キリがない。
◇◇◇
「ギギャアアアア!」
「よっ」
ゴブリン相手に、ようやく試し切りを果たしたミスリルの片手剣。非常に軽く切れ味もいい。見た目も青っぽくてカッコいい。
しかし……。
「役割これであってる?」
「あってますよぉ?」
俺が先頭を歩く。
これはいい。
敵と接触するのでまず俺が戦う。
これも、まぁ、いいだろう。
そしてそのままゴブリンをなます切りにして、残った魔石をスミレがふよふよと飛びながら拾っていく。
……おかしくない?
魔神だろ?
戦えよ。なんで物を拾うだけなんだお前は。
と、そこまで考えてふと気付く。もしかして、気にし過ぎかもしれないけど、スミレの本質は変わってないのかもしれない。そう、彼女は戦いに向いていないんだ。よく見れば、彼女の手が少し震えている気がした。
「……?どうしましたぁ?」
「いや、なんでもない。先に進もっか」
「はぁい♪」
だとしたら、その分俺が頑張らないとな。もう彼女は他人ではない。俺の大事なクランメンバーなのだから。
◇◇◇
やっぱり、恭平くんカッコいいですぅ♡
あー、助けてくれた日のこと、思い出しますねぇ。……あいつらを思い出すと、殺意が湧きそうになりますケド。
この距離で恭平くんが戦ってるところを見れるなんて、同じクランになれたおかげですねぇ。
「役割これであってる?」
マズいです!恭平くんが疑ってます……でもここはこれで押し通します!
「あってますよぉ?」
ドキドキ……なにか考え込んでますねぇ。バレたかな……さっきからずっと見てたの。あ、そう思うと、心の準備が……あわわわわわ。ふ、震えがががが……だ、大丈夫ですかぁ!?
「……?どうしましたぁ?」
「いや、なんでもない。先に進もっか」
「はぁい♪」
セーーーーッフ!セーフですぅ!あぶねーところでしたですぅ!!
◇◇◇
ゴブリンを使っての試し切りは、特に問題を起こすはずもなくサクサクと進んでいった。
「お、階段だな」
懐かしいなー。ここでスミレと初めて会ったんだ。あとあのバカ三人ともだな。今頃立派に労役してんのかな。どうでもいいか。
「あのぉ、恭平くん」
「ん?どしたー?」
「休憩、しませんか?」
「お、おお、じゃあ、ちょっとドローン切りますねー」
『あ!待て!絶対──』
ドローンのカメラから光が失われる。
プライバシーの確保は大切なのだ。
「さて、とりあえず座る?立ちっぱなしってのも──と思ったけどそもそもスミレは飛んでるからあんまり関係ないか」
「えへへ……そうですねぇ、飛べるようになってから、あんまり疲れなくなりました。体力が付いたわけじゃないんですけどぉ。その、よろしければ、こちらを……」
スミレが腰に着けたポーチからレジャーシート(うさぎ柄)を取り出す。用意がいい──というか冒険者はあんまり持ち歩かない道具だ。普通に地べたに座る奴がほとんどじゃないか?
でも、どうぞというなら、甘えよう。
「ありがと……じゃあ、遠慮なく──っと」
遠慮なくと言ったら遠慮なくである。
ゴローンと豪快に寝っ転がって、その反動でシートの上にあぐらをかく。
ふはは、我こそはクランマスター。良きにはからえ。
「ふふ、楽しそうですねぇ。ほんと、夢みたいですぅ」
よくわからないが、スミレはとっても嬉しそうだ。うん、よくわからんけど、よかったな!
…………と思ったが、なぜか浮いたまま座らないスミレ。
「座らんの?」
「あっ、え、ええへへ……そ、そうですよねっ!す、座りますぅ!」
気になって聞いた途端、ものすごいスピードで隣に座ってきた。
「あー、せっかくだし何か食べるか。確かポーチにおにぎりがあったはず……」
「あ、あ、あ、あの!も、もしぃ、そのぉ、ご迷惑で、なければ、なんですけどぉ……」
ものすごく言いにくそうに、もごもごとしだすスミレ。……まさか、脱退宣言?今更気付いても遅い?スミレ抜けたら解散しちゃうんだけど。
俺が祈るような気持ちでスミレを見ていると、覚悟を決めたのか、ポーチに手を突っ込んで何かを差し出してきた。
「こ、これ、ご、ごごご、ご飯、作って、きましたぁ!」
「マジで!?脱退しない!?やったあ!」
「えへ、えへへ」
弁当いっただっきまーす!
「うおっ!ウマーっ!」
「えへ、えへ、でへぇ♡」
◇◇◇
「プハーッ、食った食った」
まだ食べれるけど、一応満足である。誰かの手料理ってあんまり食べれないからな。ありがてぇありがてぇ。
「美味しかったですかぁ……?」
「もうサイコー!これならダンジョン討伐間違いなしだねっ!」
「え、えへぁ……」
「よっしゃ!やる気でてきた!待ってろゴブリン共ぉ!!」
「あっ!ま、待ってくださぁーい!」
震えて待ってろ!
狩り尽くしたらぁ!!




