第47話 神、神、神、ときたら、そらね?
「恭平さん?この人はどなたですか?」
「恭平くぅん♡こいつなんですかぁ?」
俺を挟んでバチバチに火花を飛ばし合う二人。何で初手から喧嘩腰なの?バーサーカーか?
ここは俺がスミレを押さえて、鬼塚さんにユキナを──
「スカウトは無理そうだし、俺は帰るぞぉ。佐藤ぉ、後は頼んだぁ」
「鬼塚さぁーーーん!!置いてかないでぇ!!」
「神スキル持ちをなんとかすんのはお前の仕事だろぉ?頑張れよ」
そう言ってこちらを見ることなく去っていく鬼塚さん。お前ええええ!!ほんとに鬼かああああ!!
「恭平さん?今は鬼塚さんはどうでもいいのでは?」
右側から、ぐいっとユキナが俺の腕を引っ張る。
「恭平くん♡この女怖いですぅ」
スミレが左腕に抱きつきながら、上目遣いで俺を見つめてくる。
あああああああ!!
「白目剥きそう」
「原因を排除しましょうか」
「同感ですぅ。私たちの前から消えてくださぁい」
二人が相対する。
腰の刀に手をかけて。両手に魔力を漲らせて。
「やめて……やめて……」
やめてよぉ、俺になんの恨みがあるんだよぉ!!
「……む」
「あ、来ましたねぇ」
二人が何かに反応する──そして少し遅れて、俺の危機感知が久しぶりに最高レベルで騒ぎ出す。こ、これ……。
「んだぁ?月城に……恭平もいんのかよ」
アキラだあああああ!!
「こんにちはぁ♪トリックスターの勧誘ですかぁ?」
「ちっ……入るか、入らねぇか、今決めろ」
「入りませぇん♪」
「へぇ……神の祝福に入んのか?それならちょっとは──」
「入りませんよぉ?」
「ああ?木っ端のクランに入っても、しょうがねぇだろうが」
「ご心配なくぅ。私……いえ、私たちは、最強のクランを作りますぅ!」
「最強、だぁ?そりゃ軽くねぇぞ、ガキ」
「聞き捨てなりませんね。アキラさんはともかく、あなたに後れは取りませんよ?」
「ふ、ふふふ……あはははははははっ♪私たち、ですよぉ?私と、恭平くんの、二人ですぅ」
あー、空がきれいだなぁ。
「な、まさかあなたと恭平さんが、新たにクランを?」
「おもしれぇ、お前がいつ泣き出すか、楽しみにしとくぜ?」
そういえばまだお昼食べてないや。何食べよ?
「私たちのクラン名は、『個人企業勢』ですぅ!個人で企業に匹敵する私たちが、企業の傘でぬくぬくと生きてる皆さんに負けるわけありませぇん!」
あ、久しぶりに牛丼とかいいな。紅しょうが乗っけて。特盛りにしよっかな。
「ふはっ、たった二人で、ダンジョン討伐か?神スキルならともかく、雑魚なら死ぬぞ?」
あー、ここの近くにあったかな。スマホで調べてみるか。
「あははっ、死神さんこそ、なぁんにもわかってないですねぇ。恭平くんは、最強です♡ねっ、恭平くん♡」
スミレにぐいっと腕を引っ張られ、抱きしめられて我に返る。
「ん?そうね。そうかも」
「ふぅん……はっ、恭平。ツマンネー男になったかと思ったけど、まだ芽はある、か?」
アキラの目の色が変わる。
「今更気付いても、もう遅いですねぇ。二ヶ月後に吠え面かかせてやりますよぉ!」
「そうですね、恭平さんには私が付いていますので、アキラさんの思う通りにはなりませんよ」
「そうですぅ、私の恭平くんを見誤らないでくださいよぉ?」
「恭平は、アタシのだけどな」
「は?」
「お?」
「あ?」
牛丼食べにいこ。
◇◇◇
「あー、食った食った」
「たまにはこういうのも良いですね」
「なんで剣神がいるんですかぁ?早く帰りやがれですぅ」
「オメーもだろ」
こっちのセリフだよ。なんで全員付いてきてんだよ。
「恭平くん、もっかいダンジョン行きませんかぁ?」
「ええ……完全に気持ちオフなんだけど……」
「大丈夫ですよぉ。中には入らないですしぃ」
「入らないなら何故ダンジョンに……」
といっても、スミレはもう聞くつもりはないようだ。人格変わりすぎてない?
諦めてスミレのあとをトボトボと付いていく。残りの二人?牽制しあいながら付いてきてるよ。
「あ、もう集まってますよぉ。ナイスタイミングですぅ♪」
スミレが指差している先──ダンジョンの入り口に、人だかりができていた。さっきの野次馬とは違う。カメラとマイクを持った奴ら、マスコミだ。
「おーい!魔神は私ですよー!」
フワッと体を浮かび上がらせながら、自分の存在をアピールするスミレ。
マスコミの人だかりがこちらに気付いて、駆け寄ってくる。
「あなたが三番目の神スキル持ちの方ですかっ!?」
「今所属されているクランはどちらにっ!?」
「先ほど神の祝福がスカウトに来たと──剣神っ!?」
「おいっ!小紅アキラもいるぞ!」
「神スキルが全員……!?スクープ!スクープだ!」
「あ、あの、そちらの男性は……?」
みんなの注目がスミレ、ユキナ、アキラへと一巡して、俺へと向けられる。俺?俺は誰だろうね?一般人じゃない?
「えー、俺は──」
「この人は私を見出してくれた、クラン『個人企業勢』のクランマスター、佐藤恭平様ですぅ!頭が高いですよぉ!」
「おい、あれじゃないか?六月頃の死神速報にあった」
「あ、死神のヒモか。最近聞いてないな」
あーん?俺は一回も誰からも、金銭的支援なんか受けたことねぇぞ。後藤さんのポーチは持ちつ持たれつだから別枠だ!
「待てよ、死神も剣神もいるってことは……」
「もしかして、剣神もこいつを支援してるのか!?」
あ、それは当たりだな。二日に一回転がされてます。なんならさっきも転がされてました。
「神スキル持ちが支援する奴が興すクラン……とんでもないネタだぞ!おい!明日の朝刊差し替えろ!」
「急げ!負けてらんねぇぞ!」
「今までの死神と剣神の実績まとめろ!」
「あ、それは違──」
蜘蛛の子を散らすように消えていくマスコミたち。コミュニケーションとろう?
そして誰もいなくなった、じゃねぇよ。




