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第41話 俺たちの足立に


「……尻尾を巻いて逃げてきたのか?賢明だな」


 ありったけのミスリルをかき集めてポーチに突っ込んで四層へとUターンをしたところ、相変わらずマジックゴーレムを狩っているガチ勢の皆さんに鼻で笑われる。


「いえ?倒しましたけど……」


「……は?」


「はっ、見栄張るなよ。こんな短時間で──」


「ほんとですって、ほら」


 疑われるのも面倒なので、ポーチからミスリルゴーレムの右手を取り出す。これが証拠だあ!


「な、まじ、か?」


「おい、しかも鉱石じゃねぇぞ」


「おいおい、ゴーレム残りかよ」


 ゴーレム残り、稀に倒した魔物が消えずにそのまま残ることを言うらしい。なお、魔石は落ちない。素材がウリのゴーレムに起きるとハッピーなので、そう言われてるんだと。ただしアイアンゴーレム、お前はダメだ。


「そうだよ。納得した?したなら、通りたいんだけど?」


「…………」


 何人かから、剣呑な気配が出る。


 これだけの量のミスリル、とんでもない価値だろうからな。ソロの、若い奴、やるかって?


 ピリっとした空気が、場に満ち──


「おい、やめろ。引けバカ共」


 ──なかった。行きにも見かけた指示役の男が、周りの人たちに声をかける。


「金に目が眩みすぎだ。ミスリルゴーレムをソロで、しかもこの短時間で倒した奴だぞ。見誤るな」


 男の言葉を理解したのか、バツが悪そうに目を逸らして道を開けるガチ勢の皆さま。


「……ありがとね」


「はっ、俺は死にたくないだけだよ。さっさと通ってくれないか?」


 ちょっと拍子抜けだけど、俺も今はあんまり消耗したくない。お腹も空いてきたし、早く帰ろう。


 ◇◇◇


「後藤さ〜ん、ただい──どわぁ!!」


 ホテルの部屋の扉を開き、中へ入ろうとした瞬間、後藤さんが突撃してきた。なんで!?


「佐藤くん!ケガはっ!?う、腕、あれ、折れて……ない?治ったの?」


 俺の体をベタベタ触りまくっては、服をひっくり返して確認している後藤さん。納得したのか、ピタリと動きを止めたと思ったら、今度はプルプルと震えだした。


 ……なに?爆発する?


「…………った」


「はい?」


「良かった!!良かったよぉ……佐藤くん、無事で、良かった……うぇぇ……」


「え?は?後藤さん泣いてんの?なんで?」


「泣いでないわよぉ……う、うえぇぇ……」


「いや、泣いてるじゃん。めちゃくちゃ泣いてるじゃん」


「うるざいぃぃ……むかつぐゔゔぅぅ……」


 えぇ……俺のせい?違うよな?え?違うよね?


 納得いかないまま、泣きじゃくる後藤さんの背中を優しくなでる。


 ◇◇◇


「さぁ!ミスリル出してくれるかしら!?いや、ポーチ返してもらった方が早いわね!ちょうだい!」


「なんで泣いてたの?」


「掘り返してんじゃないわよ!早く渡せコラ!」


 理不尽すぎない?寝不足か?


 とはいえ帰りの足である後藤さんとバトっても良いことはない。君子危うきに近寄らずなのである。大人しく中から武器を取り出してからポーチを外し、後藤さんへと渡す俺。偉い。


「ふふふ、まさか素材丸々残るなんてねー♪何億で売れるかしら?あ、武器は片手剣だけで良かったわよね?」


「そんなわけねーだろ。金の亡者か」


「何よぉ!手数料でしょ!?」


「手数料取るなって言ってないの、法外だろって言ってんの。あんだけ素材あればもっと作れるだろ」


「ぐ、今日は勘が冴えてるわね」


「後藤さんが鈍ってんじゃない?どっちでもいいけどどんくらい作れそう?」


「……そうね、武器だと、片手剣、大剣、槍、斧、メイス……他は?」


「うーん、剣は長さ違いでもう一本欲しいかな、長剣とか?あとは……短剣と、弓……は微妙か」


「そうね、弓をミスリルにしてもあんまり意味はないわね。矢じりにするなら意味はあるけど、お金溶けるから禁止」


「俺の金なんだけど?」


「余りは私のなんだからダメに決まってるでしょ」


「それはそう」


「じゃあ、あとは防具かしら。盾、胸当て、篭手、グリーブ……兜か鉢金かくらい?」


「えー?そんなに防具いるかなぁ?胸当てだけで良くない?」


「命に関わるんだからダメに決まってるでしょ。ちゃんと着けなさい。頭は?兜にする?」


「……鉢金で」


「鉢金ね、ちゃんと着けなさいよ」


「うい」


 なんか防具だけやたらノリノリだな。素材余らないんじゃない?大丈夫か?


 まぁ後藤さんが満足気だし、俺には否やはないんだけど。


「でもちゃんとお金は儲けてね?後藤さんが変に被ったりはなしだからな」


「オッケーオッケー、じゃあ後は一ヶ月避暑地でゆっくり過ごしましょー!」


「え?帰るよね?」


「は?まだ一泊しかしてないんだけど」


「でも用事済んだじゃん。ミスリル装備早く欲しいし」


「は?」


「報酬増やすから」


「帰りましょう!ミスリル装備が、私たちを待ってるわ!」


 そういうところだぞ。


 ◇◇◇


『汝は【裏切り者晒しスレ】人狼なりや?』


 名無しの村人

 なーなー


 名無しの村人

 なに

 どしたん


 名無しの村人

 前に吊ったやついるじゃん

 あの魔法使いのやつ

 ほら、三ヶ月くらい前


 名無しの村人

 あー

 いたな

 そんなやつ


 名無しの村人

 なんか最近足立のゴブダンに出没してるらしい


 名無しの村人

 なにそれ

 初心者狙い?

 キモ


 名無しの村人

 そいつ可愛いん?


 名無しの村人

 ん?

 顔は良かったな


 名無しの村人

 へー

 足立のゴブダンか


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