第4話 現役トップネキ
「しゃあっ!」
襲いかかるゴブリンの首を切り落とし、カメラ目線でポーズを決める。
どう!?
『こっち見んな』
『意識しすぎてて笑う』
『初めてか?力抜けよ』
ボロクソじゃん!
「ぐ、く……つ、次だ次!」
『もう夜だぞ』
『いつまでやってんの』
『今北産業』
『古くね?』
あ、人増えた?っていかんいかん。気にしすぎるのもダメ、しなさすぎるのもダメだ。
思い出せ。俺がいつも見てた配信だって自然体だった。そもそも数人くらいじゃ大して収入にもならない。視聴者を気にしすぎてゴブリン狩りがおろそかになるなんて、本末転倒だ。
先ほど倒したゴブリンの魔石を拾って、パンパンになったリュックへと無理やり詰め込む。さっきのコメントにもあったけど、今日はもうそろそろ終わりにするか。
『コメ返はー?』
『たしかに』
「コメ返?なんかあったっけ?……どれどれ」
ポケットからスマホを取り出して配信ページを開く。人数は……増えたと思ったけど、変わらず四人か。いや、ずっと四人が見てるって、今考えたらすごいな?多分途中で抜けた人が帰ってきたのか、入れ替わったのか……。って、そうじゃなかった。コメントだコメント。
「えー……剣術レベルいくつ?」
『俺のだ』
いくつだろ?確かに俺も気になるな。
周りにゴブリンの気配はないし、鉈は腰に戻してマイナンバーカードを取り出してみる。
「どれどれ……二十、だな。二十でーす!」
『高くね?』
『ホントに昨日が初めてか?』
『おもしれー!!』
「えーっと、次は……どこのダンジョン潜ってるか?あー、こういうのって言っていいのかな」
『誰が興味あんねん』
『どうでもよくて草』
『どこー?』
「なんだそれ、どうでもいいなら聞くなよ……足立第三百八ダンジョンだよ」
『三www百www』
『三百台かー、初心者ソロなら妥当では?』
『一桁行こうぜ!渋谷とかどーだ?』
『死ぬやろ』
「ぐっ、厳しい指摘……まぁおいおいね。家近いからここにしただけだしっ!?」
『あ』
『あ』
『あ』
「あ、言っちゃった……ここカットでき……ないよね?」
『配信やぞ』
だよなぁ……。あー、もういいや。アーカイブ停止だけしとこう。うん。どうせデータは協会が持ってんだ。パンピーに全てさらけ出す必要はあるまい。失言多そうだし、今後も基本はアーカイブなしでいっか。ポチッとな。
「ん?あ、一人減ってる」
まぁいっか。今日はこのまま帰るだけだ。昨日の倍……は言い過ぎだけど、五割増しは間違いない重さのリュックサックを背負いながら踏み固められた土の上を歩く。
ダンジョンってずっと明るいから時間の感覚狂うな。時計か、スマホにアラームセットでもするか。
そんなことを考えながら入り組んだダンジョンの中を歩いていく。地図はわからんが、右手の法則で歩いてきたから迷う心配はない。
「あ、でも……ものは試しか」
無理だよなーという考えと共に、頭の中に足立第三百八ダンジョンの地図を思い浮かべる。詳細は覚えてないけどな。
──マップスキルを獲得しました。
「わーお」
『なんだ?』
『なんかあった?』
「あ、ゴブリンかと思ったけど、見間違いでした。失礼!」
『草』
『落ち着いて?』
「あはは……ごめんごめん」
ちょっとスキルについては、どこまで言ったもんか決めかねてるしな。とりあえず黙っとこう。
「ん……?」
今何か気配感知に反応があったような……?気のせい、じゃないよな。確かに入り口の方で一瞬、何かいた。特大のヤバそうなやつ。
──危機感知スキルを獲得しました。
……穏やかじゃねーな。
『また勘違いか?』
『はよ帰ってもろて?』
『事故は勘弁してね』
「…………」
返事をする余裕はなかった。
とにかく早くここを出ないと。魔物ならダンジョンの外には出られないはずだし、協会の人だっている。
できるだけ音を出さずに、できるだけ早く──自然と足が早歩きへと変わっていく。魔石がぶつかる音が、うるさい。
──気配遮断スキルを獲得しました。
「はっ、はっ、はっ」
『おい』
『なんか、やばそう?』
何かいる。近付いてきてる。すごい速さで。
それなのに、気配感知に反応がない。
異常事態に心臓がバクバクうるさくなってる。走ってないのに息が切れる。わからないのが、こんなに怖いなんて──
「みーっけた。よう、お前が恭平か?」
「っ!!」
反射だった。よく考えれば話しかけてきただけだったんだけど。思わず握りしめていた鉈を、《《彼女》》に向かって全力で振り抜いていた。普通の人なら死んでしまう威力で。
「おっほ♪活きがイイねぇ!やっぱ男ならそんくれぇやれねぇとな!アタシの目に狂いはなかったぜ!!唆るぅ!!」
「ウソ、だろ……」
こいつ……指二本で、俺の鉈止めやがった!!
これがイカれた死神。人類の最高峰。現役トップの神スキル持ち。
トリックスター所属の冒険者、小紅アキラとの出会いだった。




