第3話 初めての報酬。初めてのコメント。
「え〜っと、ゴブリンの魔石二百十五個で……十万と七千五百円です。現金と振り込みどちらにされますか?」
「あー、振り込みでお願いします」
「はい……ではこちらが控えになります。お疲れ様でした」
「ありがとうございます……」
できるだけ平静を装いながら、冒険者協会を後にする。つーか換金するところはキレイなお姉さんなんだな。格差を感じるぜ。
外はすっかり真っ暗になっているが、まだ高揚しているのか疲労感は全然ない。なんなら今からもう一度行ってもいいくらいだ。
空にはまんまるお月様がこれでもかと輝いている。フルムーンだな。満天の夜空。百点満点な今日の俺に相応しい。
「ちょっと気が早いけど、今日は贅沢しようかな」
いつもは近所のスーパーの割引弁当を買うところだが、今日は外食だ!ぬはは、我が世の春ぞ!
勢いよく、冒険者御用達と噂に名高いステーキ店へと入っていく。真っ赤な壁紙と床が食欲をそそるぜ!
これまたキレイなお姉さんに案内をされて、席へと着く。やっぱ冒険者といえば、これだよな!!
壁に設置されているでっかいモニターで冒険者専門チャンネルが放送されている。どれどれ。
『ニュースです。長年トップクラン、トリックスターの後塵を拝してきた神の祝福へ新たに、神スキルを持つ冒険者が──』
インタビュアーの人が銀髪を腰まで伸ばした丁寧な女性へとマイクを向ける。あ、刀持ってるってことは、剣士……剣神か?
『新たにクラン、神の祝福の末席を汚すことになりました、剣神の月城ユキナと申します。今後は──』
真面目が服着て歩いてるようなタイプだ。間違いない。なんか真面目なことをたくさん喋ってるが、撮れ高少なかったんだな。ナレーションベースになったと思ったら、スタジオに戻ってきた。
『この加入により、神の祝福がトップクランとなるのか。長年鎬を削ってきたライバルクラン、トリックスターへとインタビューを行いました』
スタジオから再び画面が切り替わり、赤髪ショートの気の強そうな女の人がインタビュアーからマイクを奪い取って好き勝手喋ってる。モザイクかかってるけど、絶対中指立ててるなぁ。
『神の祝福だぁ!?あんなもんザコだろ!アタシの死神スキルで【ピー】で【ピー】だ!アホ!』
ローブを羽織ってるけど、暴れすぎてはだけまくってる。ヘソも丸見えだし太ももが眩しい。絶対自信家だな。
神スキルか……。確かスキル名に神って付いてんだよな。剣神に死神。今の俺にとっては、雲の上の存在だけど……いつかは、なんてね。
俺は昔から憧れていた、ダンジョンにいるモンスターから取れるお肉を注文したのだった──
◇◇◇
夜が明けて翌日、朝。
今日も今日とてダンジョンである。
「調子に乗りすぎたな」
まさかステーキ一枚で二万円もするとは。恐るべしミノタウロスステーキ。
しかし反省はしない。なぜならする必要がないからだ。
「さて、というわけで、ドローンのスイッチを──ポチッとな」
毎日稼げばいいのだ。食費がいくらかかっても、それ以上に稼げば金は貯まる。ふははははははは!!
『掲示板から来ました』
「ほわぁ!?」
『全裸待機だぜ!』
「ひょわぁ!?」
ド、ドローンが喋ってる……?ってことはまさか!!
大急ぎでスマホを取り出し、自分のページを開くと、そこには望外の数字が──
視聴者数:5人
ご、5人!!一人は俺だけど、四人も見てくれてるのか!!
『ほわぁwww』
『意外とテンション低いな』
『そのうちあがるんじゃね?』
「お、おおお……お、お構いもしませんで……つまらない配信で恐縮ですが……」
『いいから早く行けー!風邪引くだろーが!』
『緊張してて草なんだが』
た、確かに。この人たちはきっと昨日の配信を見て、わざわざ来てくれてるんだ。ガチガチの俺なんか見たいわけじゃないよな。
「よーし、よしよし、やったる……やったるぞ……」
『なんだぁ?マイク拾えてねーぞ?』
「やったらあああああ!!行くぞゴブリン共おおおお!!」
走り出す。どことかじゃない、ただ気配感知が教えてくれるままに──俺は佐藤恭平、ゴブリンの命を刈り取る者じゃい!!
『オモロすぎるwww』
『イカれてんなぁ、これで二日目かよ』
『そのうち死ぬんじゃね?大丈夫そ?』
◇◇◇
「おい、いつまでスマホなんか──なんだ、配信なんか見てたのか?」
「ああ?うるせーな。アタシが何してたって、お前に関係ないだろうが」
人が気分良くしてるときに水差しやがって、クソが。久しぶりに生きのいい新人が出てきたんだぞ。見るしかねーだろ。
「あ、そーだ。いいこと思いついた」
「おい、そろそろダンジョンに潜る時間だぞ」
「お前マジうるせーって、ちょっと黙れよ。な?」
「う、す、すまん……」
「謝るなら最初っからすんなや。さて、ど、こ、に、も、ぐ、っ、て、る、ん、で、す、か、?、っと、送信」
ひひ、楽しみだ。ダンジョンから戻ったらアーカイブ見よっと♪




