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第2話 初めてのダンジョン。初めての配信。


 長く続く階段を降りきってすぐ。

 土の壁に土の床、土の天井で光源がないにもかかわらず謎に明るいダンジョンの中で、素振りをしたら、剣術スキルを手に入れてしまった。


 いや。


 いやいやいや。


 素振り一回しかしてないぞ?たったそれだけで?剣士が数ヶ月かけて覚える剣術を、覚えたのか?


「──あ、カード」


 確認だ。

 確認してみよう。

 もしかしたら、勘違いかもしれない。


 そう思い立って、ポケットからマイナンバーカードを取り出す。魔力認証紋へと親指を置くと、表示内容が更新されていく。


「……マジかよ」


『冒険者適性アリ』

『職業:  』

『スキル:早熟・遅咲・剣術(1)』


 増えてる。

 間違いない。


 ……でも。


「職業は変わらないか……って、うつむいてる場合じゃない。ドローン起動しないと」


 なけなしの金で購入した、最安ドローンのスイッチを入れる。ブーン、と鈍い起動音をたてながら浮かび上がるドローンのカメラが意思を持つかのように動き始める。


「これで配信できてんのか?もしもーし」


 ドローンからの返事はない。あれ、コメントの自動読み上げ機能ってあったよな?


「あ、そうだ。自分のスマホから見てみればわかるな。どれどれ……」


 握りっぱなしにしてたマイナンバーカードをポケットに戻し、スマホで自分の配信画面を探す……。


 視聴者数:1人


 あー、はいはい。今俺のスマホで見てるからね。うん。つまりあれだ、これは──


「誰も見てねぇじゃねぇか!!」


 俺の叫びがダンジョンの中にこだまする。


 現実は厳しい。どこかの大手クランに所属しているわけでもない、ぽっと出の冒険者の配信なんぞ、そもそも見つけてもらえないのだ。


「って言ってもなぁ。何すればいいかなんて全然わかんないぞ……確か再生回数とかで冒険者協会からお金もらえたよな?」


 自分が今まで見ていたのは、大手クランに所属して豪華な装備とバックアップでダンジョン攻略をしてる配信とか……いわゆる企業勢だな。


「……見るわけないか。俺でも見ないわ」


 普通の男が鉄の鉈を持って立ってる配信とか、仮に見ても二秒でブラバする自信がある。それならアイドルみたいに可愛い子なり何なり、そっちを見るね。


「つまり配信で稼ぐのは絶望的だな。大人しく自己PRと今日の飯、明日の味噌汁のためのライスワークだと思おう」


 剣術スキルの検証もしていきたいけど、もうちょっと進んでいかないとな。


 そう考えて前を向いた俺の目線の先に小さな影のようなものが映る。


「……あれは、ゴブリンか?」


 まだ遠いけど、間違いなさそうだ。さっき叫んだせいだろうか。向こうもこっちを見つけてる。


 ──遠見スキルを獲得しました。


「お、おおっ!?」


 さっきまでかろうじて輪郭を捉えていたゴブリンの顔、それどころか鼻にできた吹き出物までハッキリ見える。うえぇ、気持ち悪……。


「しっかし、すげえな。遠見は確か、弓使いのスキルだっけ?」


 ほんのちょっとだけ、ワクワクしてる。

 ダンジョンに入るまでの俺とは別人みたいだ。


「──ギアアアッ!」


 ゴブリンも俺の姿をハッキリ見つけたみたいだ。楽しそうに声を上げて走ってきてる。


 ぶつかるまでの時間は十数秒くらいだろうか。


「へへっ、天職かもな、これ」


 握った鉄の鉈を、適当に振り回す。

 振れば振るほど、鉈の動きは鋭さを増していく。


 ──剣術スキルのレベルが上がりました。

 ──剣術スキルのレベルが──剣術スキルの──剣術ス──剣術──剣


「こいよっ!クソゴブっ!鉈のサビにしてやんぜっ!」


「ギギャアアアア!!」


 数メートルの距離まで迫ったゴブリンが両手を振り上げてこちらへと飛び込んでくる。


「おっそいんだよ!アクビが出るわ!!」


 バンザイをしたゴブリンへとこちらからも一歩迫り、間髪入れずに鉈を下から上へと振り抜く。


「ギ──」


 真っ二つになったゴブリンは、断末魔すら上げることなくその姿を魔石へと変えていく。


「よっしゃあ!!楽勝だああああ!!──っと、これが魔石か」


 指先ほどの大きさの透明な石をつまみ上げる。


 魔石。どういう理屈か知らないけど、今の社会のインフラを支えてるんだっけ……?ゴブリンの魔石は一つ五百円で引き取ってくれたはずだから、リュック一杯にすれば十万円は行くんじゃないか……!?


「ふひっ」


 これは来たな。


 間違いない。


「ふひひひひ、俺の時代だっ!ゴブリィィィィン!どこだああああ!!」


 ──気配感知スキルを獲得しました。


 ナイス!!


 おお、あちらこちらにゴブリンの気配がする。へへへ、この角の向こうだなぁ?俺には見えてるぞぉ?


「魔石寄越せコラァ!」


「ゴブゥ!?」


 出会い頭の一撃をゴブリンの脳天に直撃させる。


「魔石ゲットォ!よしよしよしよーーーし!!」


 来たぁ!今夜は寝かせないぞぉ!?


「ひゃーっはっはっはぁ!!」


 視聴者数:1人


 ◇◇◇


『来いよ【初心者発掘スレ539】歓迎してやるぜ?』


 名無しのウオッチャー

 逸材ktkr

 URL:https://


 名無しのウオッチャー

 ナニコレ


 名無しのウオッチャー

 笑いながらゴブリン倒してるやん


 名無しのウオッチャー

 バーサーカーか何か?


 名無しのウオッチャー

 本日デビューの新人ちゃんです。


 名無しのウオッチャー

 イカれとるやん


 名無しのウオッチャー

 野放しにするなよ


 名無しのウオッチャー

 適性はあるらしい


 名無しのウオッチャー

 殺人鬼の?


 名無しのウオッチャー

 いや、動画の初めの方にチラッと映ってんだよ

 アーカイブ残ってるから見てこい


 名無しのウオッチャー

 スクショマダー?


 名無しのウオッチャー

 見てきた

 確かにアリって書いてるな

 ちょっとピンボケしてるけど


 名無しのウオッチャー

 だろ?だろ?


 名無しのウオッチャー

 こんなやつおんのか……

 バグか何か?なんか滅茶苦茶強くない?

 上位勢レベルあるんじゃね


 名無しのウオッチャー

 さすがにそこまでじゃないだろ

 上位勢の主要スキルって軒並み30超えてるっていうし

 まぁ公開してない人がほとんどだけど


 名無しのウオッチャー

 とりあえずお気に入りいれとこ

 明日もするかな?


 名無しのウオッチャー

 初心者は毎日やるか全然やらんかのどっちかだけど……こいつは……


 名無しのウオッチャー

 毎日やるだろ

 見ろよこの笑顔


 名無しのウオッチャー

 だな


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