第38話 うっ、うーっ、うまうま
『汝は【裏切り者晒しスレ】人狼なりや?』
名無しの村人
あいつうちにも来たわ
蹴ったけど
名無しの村人
まじか
これで都内のクラン制覇?
名無しの村人
多分そのはず
落ち確なのによくやるよ
名無しの村人
無駄な努力やなぁ
名無しの村人
誰か教えてやったら?
お前採用するクランなんかねーよって
◇◇◇
「ほ、ほほほほ、本当にいいのね?私払わないわよ?払えないわよ?」
「いいってば、何回も聞くなよぉ!」
意気消沈したのも束の間、俺は後藤さんと合流して、ホテルに併設されているレストランに来ていた。
はっきり言って、高級店だ。謎に高い天井にはシャンデリア、床はなんかキレイな赤いカーペット。丸いテーブルには真っ白なテーブルクロスがかけられている。多分、冒険者でもわかりやすい高級っぽさを求めた結果だな。俺?俺もこれならわかる。高そう。
「お客様。こちら、メニュー表でございます」
品の良いウェイターさんが、ハードなカバーのメニュー表を手渡してくる。ペラっと開くと──わぉ。
「さささささ佐藤くん!?これ、おかしいわ!桁が間違ってる!!」
「いやぁ、間違ってないと思うよぉ?」
お値段、ビックリ最安のアラカルトが十万円からだ。石持って帰ってれば余裕だったのにな。俺のバカ!
「じゃあ、これとこれとこれとこれと──」
「ひいいいいいぃぃぃ!!」
うっせぇなこいつ。もう諦めてくれませんかね?
「後藤さん?」
「はひ?」
「俺の貯金いくらか知ってる?」
「しらにゃい」
「四千万」
「よんしぇ?」
「四千万。それ、ここ一ヶ月で稼いだ金ね。だから、ホテルも食事も余裕なの。毎日ここってなるとキツイけど。初日だし、たまにはいいでしょ」
「わかっひゃ」
「つーか後藤さんがミスリルの剣を取り寄せしようとしたのがキッカケじゃん。今更じゃない?」
「いやぁ……まさか、ここまでしてくれるとは思ってなくて。それに会社のお金って、自分のじゃないからどうでもいいっていうか、ただの数字?」
「お前が搾り取った金は全部俺の血と汗の結晶だからな?」
「じゃーせっかくだし、楽しみましょー!すみませーん!こっからここまでくださーい!」
「お前絶対に全部食えよ」
頼むのはいいよ。俺が言い出しっぺだし。
残したら許さん!
◇◇◇
「うっぷ……もう食べれない……」
「マジで……頼みすぎだろ……」
結局、俺が食べてんじゃねぇか!バカァ!!
四人がけのテーブルには、まだ半分ほど手付かずの料理が並んでいる。
冷めた目でテーブルに突っ伏している後藤さんを見ながら、いつもの五倍(当社比)は膨らんだお腹をさする。おまえこれどうすんのまじで。
──健啖スキルを獲得しました。
「おえぇ!?」
「……なぁにぃ?うるさいわねぇ……」
「お、おおお……」
パンッパンに膨らんだお腹が、どんどん凹んでいく。
「は?ちょっと佐藤くん、ズルくない?なんで痩せてんの?裏切り?」
なんか後藤さんがうるさいけどそれどころじゃない。お腹はいっぱいだけど、お腹の中は空いてる……?なんだこれ?
恐る恐る、テーブルの上に残ったグレートオークのトンカツを食べる。うまい。
──健啖スキルのレベルが上がりました。
「──っ!おお、マジか」
「ちょっと?おい、佐藤こら、聞けこら」
コカトリスの軟骨の唐揚げを食べる。こりこり。うまし。
──健啖スキルのレベルが上がりました。
「おいしい?苦しんでるおねーさんの隣で食べるご飯は、おいしいか?おい」
ミノタウロスビーフシチュー。うん、うまうま。
──健啖スキルのレベルが上がりました。
「あ、すいませーん。ワインある?赤で。うん。一番高いの」
もう手は止まらなかった。テーブルに載った数々の料理を、手当たりしだいに口へと運ぶ。
──健啖スキルのレベルが──健啖スキルのレベルが──健啖スキルのレベルが──健啖スキルのレベルが──健啖スキルのレベルが上がりました。
「あ、ありがとー♪……おっとと、んぐ、んぐ、ぷへーっ!かぁー!」
まだ、俺は強くなれる。
俺はまだ、終わってなかったんだ。
武器も、スキルも、もっともっと、上げてやるぜっ!!
「おかわりくださーいっ!」
◇◇◇
「お会計……八百五十万円になります」
「八百五十」
「ごじゅー♪」
クソアマァ!!自分で歩けよぉ!なんで俺がこいつおんぶしてんのぉ!?
◇◇◇
「えへへ、アンパン、半額だった……今日は、ラッキーですぅ」




