第37話 捨てる者あれば、拾う物あり……拾うから待って!
「じゃあ、お先にいただきまーっす!」
三叉路の合流地点でわちゃわちゃしているアイアンゴーレムたち。ストーンゴーレムと比べても、更にデカい。三メートルはないかな?
そこへ目掛けて、両手で握りしめた魔鋼製の槍(二百五十万円)を──
「だだだだだだだだぁ!」
突く突く突く突く突く突く突く突く!
一突きする度に手に跳ね返ってくる反動。魔剣術も剛力も無しだと、かなり痺れるな。
だが、それでも、槍の穂先は欠けることなく、アイアンゴーレムの息の根を止めていく。息してるか知らんけど。
『おおおおおっ』
『穴だらけだー』
『槍ってゴーレム特効?』
『逆だろ、むしろキツイぞ』
槍を突くたびに蓄積していく痺れが限界を迎える前に、魔剣術を意識して槍へと魔力を這わせていく。
輝きを増すごとに、槍を突く反動が軽くなり、やがて消失する。それと共に、ほんの少しの倦怠感が全身を覆う──
「ふっ、ふっ、はっはぁ!オラァ!ビビってんじゃねーぞ!!」
槍をポーチに戻して、メイスに持ち替える。お前らの大好物だろっ!これでも、食らってろ!!
先程の攻撃をくぐり抜けて近付いていたゴーレムへとメイスを振るう。
金属同士がぶつかり、火花が散っていくと同時に、大きく割れるゴーレムの体。
「オラァ!フルリメイクじゃあ!」
リノベリノベリノベー!原型なくしたらぁぁぁ!!
『おー』
『バサカってんねぇ!』
『バサカるってなんやねん』
『あれだろ、どうみても』
『納得のバーサーカー』
『しびあこぉ!』
オラァ!ご乱心じゃあ!!
「────!!」
声にならない不快な金切り声を上げながら、アイアンゴーレムの波がこちらへとやってくる。
「オラァ!」
右から襲いかかるゴーレムの頭を、フルスイングしたメイスでかち割る。
「だらっしゃあ!!」
そのまま真上にメイスを振り上げて、目の前にいるゴーレムの体を真っ二つに叩き割る。
「────!」
「させるかよっ!」
後ろから捕まえようと手を伸ばすゴーレムを蹴り飛ばして距離を取る。
「────」
「危ねっ!」
蹴り飛ばした反動で目の前に現れた俺を、捕まえようとゴーレムの手が伸びる。その手をやり過ごそうと左手に着けたバングルから魔力の盾を展開する。
右を見てもゴーレム、左を見てもゴーレム、前も後ろもゴーレムゴーレムゴーレム。
『お、おい』
『これ、ヤバイんじゃ』
『死神ー!助けにいけー!』
『佐藤くんっ!?』
わーわーうるせぇなぁ!オーディエンスは大人しく座ってろよ!!
四方八方から手が伸びる、服と奴らの手が触れる、その直前──
気配遮断!かーらーのおおお!
「跳躍うううう!」
ゴーレムの背丈を飛び越える。奴らはデカい。三メートル近い。そんな奴らが、人間を襲うとなると、どうしたって前屈みになる。
すると、どうだ。
「背中ががら空きじゃああああ!」
アイアンゴーレムの背中から背中へとジャンプしていく。そのついでに、メイスで殴ることも忘れずに。
「オラァ!オラァ!オラァ!死ねオラァ!ボケオラァ!クソダラァ!」
『うーん、バサカってる』
『これでしか取れない栄養があるな』
『心配して損した』
『死神ー、ステイでいいぞー』
だはははははは!!お前ら下ばっか見すぎて、全然俺を見つけられてねーな!!バーカバーカ!!
あとはただの消化試合だ。鉄鉱石いくらで売れるか楽しみだよぉ!!
◇◇◇
「完っ全っ勝ぅぅぅ利ぃぃぃぃやあああぁ!!」
『テンション高杉』
『すっげぇ量だなー』
群がるアイアンゴーレムたちは魔鋼メイスの錆になったわ!!
辺りに散らばる大量の魔石と鉄鉱石を見ながら、勝利の雄叫びを上げる。
ガハハハ!!
「ふぅ、拾ってこ」
『急に素に戻るなよ』
『振り幅すごすぎぃ!』
『どっちが素なんですかねぇ?』
ぬはははは、勝ちは勝ちだ。拾うのがちょっと面倒だけど、これは高値で売れるだろ!なんてったって鉄!アイアンゴーレムなんて面倒くさいやつから落ちたんだしな!
『なぁ……』
『言うな』
るんたったー♪
◇◇◇
「えー、ストーンゴーレムの魔石が三つで三万円です。石はありませんか?」
奥多摩ダンジョン出入口横にある受付で納品をしていると、イヤーな感じの質問をされた。
「……捨ててきましたけど」
「ええっ!?あれ一つ二十万で買取ですよ!?あんまり余裕なかったんですか?」
「にじゅうまん」
「あれ、でも鉄鉱石はやたらとありますね。これは一つ千円になりますが、よろし……うぇ!?」
「なんで!?なんでなんで!?ねぇなんで!?」
「い、いや、石、石はっ、砕いて混ぜると、強度がああああ」
なんで!?なんでそういうこと言うのっ!?
「今から拾いに行けば間に合うっ!?」
「も、もうダンジョンに吸収されてるかと……」
「ぬああああああああっ!」
◇◇◇
『──竜胆スミレ様の今後のご活躍をお祈り申し上げ──』
「はぁ……」
何通目かわからないお祈りメールを閉じて、ため息をつく。
「ここもダメでしたぁ……貯金……あと少ししかないですよぉ……」




