第32話 突発オフコラボ祭り開催。後の祭りだね。
「うおっ、本物だ」
「生バーサーカーじゃん」
「生きてて草」
「動いてて笑う」
「自分ツーショいいすか?」
「うお、魔法使いちゃん可愛い」
なにこれぇ……やだぁ……人がいっぱいだよぉ……?
呼びかけをしてから一時間ほどだろうか。人の気配を感じ始めたと思ったら、あっという間に人で溢れかえってしまった。どうしよう……。
「おーい!佐藤くん!おーい!」
「ふぇぇ……誰ぇ……?──あ、吾妻さんじゃん」
懐かしい……こともないか。オークの集落以来だ。今回も人の波を分け入って、竜胆さんを救助してきている。さすがタンク。相変わらず人の役に立ってるね!
「何してんの?」
「いやいや、こっちのセリフだよ。数万人が見てる配信で場所を言うなんて……こうなるって思わなかったのかい?」
「思わなかった!ビックリ!」
「はは、その方が君らしいけどね?……君が良ければ、ここは俺に任せてくれないかな」
む?ははーん、吾妻さんめ、俺を助けに来てくれたんだな?なら答えは一つ。
「お願いしますっ!」
「承った──おい!お前たちはここに何しに来たんだ!犯罪冒険者の引き渡し協力だろう!さっさと散れ!入り口までの安全を確保しろ!」
「うお、吾妻いるじゃん」
「ビビったー。そういえばバーサーカーと知り合いか」
「そこっ!無駄口を叩くなっ!」
「へーい」
おお…………!吾妻さんの号令でたむろしてた冒険者たちが、ダンジョンに散っていった。
「うん。これで大丈夫だろう。じゃあ俺が二人を担ごう。佐藤くんは一人を頼む」
これ以上言うことはないとばかりに、肩に担いで歩いていく吾妻さん。
かっこよ。
「こ、怖かったですぅ……」
あ、竜胆さん。ごめんね?
◇◇◇
「つまり、あなたがこちらの三人に襲われたと?」
「そうです。そのへんは配信もしてましたし、確認はしやすいと思うんですけど」
あの後、吾妻さんと共にダンジョンを出た俺と竜胆さんは、協会の職員さんへと事情を伝えた。それはもう洗いざらいだ。だってやましいことなんてないし。収納?なにそれ。僕知らない。
「ということですが、あなた方の言い分は?」
加害者と被害者を一緒に取り調べすんなよ。しかも、受付の前。一応相手してくれてるのは、奥から出てきた所長っぽいオッサンだけど……このあたり、冒険者の扱いの雑さが透けて見えるぜ。
「俺たちが襲われたんだ」
「そう、休憩しようとしたところを不意打ちされてな」
「みんな殺されかけたんだ、危なかった!」
このクソ野郎共……。ぶち殺した方が良かったか?
「落ち着け、佐藤くん」
殺気が漏れていたのか。吾妻さんが肩を優しく叩いてくる。
「うん、ありがとう吾妻さん」
「双方、主張が食い違っていますが、どうされます?配信には映っていない範囲のことなので、こちらでは真偽はつけかねますが」
ぐ、この人、面倒になってるな……!?やべぇ、なんかないか?こいつらの言い分をひっくり返せるやつ。
「あ、あのぉ……よろしいでしょうか?」
「竜胆さん……?」
ずっと俺たちの後ろで話を聞いていた竜胆さんが、おずおずと手を上げながら前に出る。
「はい、どうされました?あなたは──こちらの方の?」
「い、いえ、佐藤さんとは、ダンジョンで初めて会いました。その、あの人たちの、パーティーメンバーです」
「はぁ、それで?」
「こ、これ、私のドローンです。配信、見てください」
ポカンとしながら竜胆さんを見ていた三人組が、ハッとした顔で騒ぎ出す。
「おい、竜胆!お前ふざけんなよ!」
「仲間を売ろうってのか?足手まといのくせに!」
「よく考えろよ。クランに居られなくなるぞ」
チラリと三人組を見る、職員のオッサン。こいつら、語るに落ちてねーか?
そして、そんな三人組を無視して、ドローンの配信映像を再生していく竜胆さん。
映像は、ダンジョンの大部屋へ入る直前から始まった。
『あ?先客か』
『どうも』
『一人……ソロか?』
『隠れてる奴はいねぇぞ』
『んだよ、ビビらせるなよ』
「ふむ、あなた方が大部屋に入られる前に、すでに彼は休んでいたようですな。彼のドローン映像とも矛盾はありませんが?」
映像は続く。俺に絡む三人組と、それを抑えようとする竜胆さん。今思うと、このときから彼女はなんとか場を収めようとしていたのか。
『あ、あの、あまり他の方とトラブルは……』
『うるせぇよ。おい、ドローン止めとけ』
『へ?いや、でも』
『いいから止めとけって、竜胆。今から休憩するんだから、止めたって構わねえんだし』
『そうそう、別に魔物の取り合いでも何でもない。お話してるだけなんだからよ』
『わ、わかり、ました……』
そして、映像が終わる。
三人組が、眉をピクピクさせながら竜胆さんを睨んでいるが、もう大勢は決まったな。
「何か申し開きは?」
「ぐ、ぐぐ、ぎ……」
「クソ、クソクソクソ!」
「ああああっ!」
「認めた、ということですな。三人は冒険者資格の停止と少なくとも十年間の労役。他にも余罪がないか確認させてもらいますよ。おい!連れて行け!」
青褪めた顔をした三人組は抵抗することなく、職員さんに両脇を抱えられながら奥へと消えていった。余罪どんだけあんのか知らんけど、俺を殺そうとしたんだ。一生かけてしっかりと償えよ、バカ野郎共。
「っと、竜胆さん、ありがとね。おかげで助かったよ」
「あ、いえ、私も、そのぉ、三人を止められず、申し訳ありませんでしたぁ……」
申し訳なさそうに深々と頭を下げようとする竜胆さんの肩を掴んで止める。
ビックリして目をパチパチしてる竜胆さんと、目を合わせながら、きちんと、伝える。
「いやいや、俺はお礼言ってんだからさ!どういたしまして、じゃダメかな?」
「あ、あうう……ありがどうございまずう……」
「いや、だから……」
後で知った話だが、竜胆さんも俺と同じで、今年成人して冒険者になったばかりだったらしい。
だから、俺たちは冒険者のルールなんて、全然知らなかったんだ。
竜胆さんが何をしたのか、それがどういう意味を持つのか。
そんなことは少しも、わかっちゃいなかった。
◇◇◇
「手間取らせやがって……アタシは、恭平の、配信が、見たいんだよっっっ!オラァ!」
「おっ、おいっ!小紅!」
ダンジョンの最奥にある、ダンジョンコアを叩き潰して、その跡に現れた転移魔法陣へと飛び乗る。クソ、絶対今日も配信あったよな……。もう終わってるかな……。
「えー……はぁ!?オフイベぇぇぇ!?」
そりゃねーだろ!恭平えええ!




