第31話 ダンジョン崩壊の危機、なお犯人は──
「えーっと、竜胆さん。こいつらを拘束したいんだけど、魔法でなんかできない?」
なんかあるだろ。こう、ぐわっと。いい感じに。
視線をキョロキョロと忙しなく動かしながらも、決意したように頷く竜胆さん。
杖を掲げて、口を開いた。
「岩鎖縛」
彼女の掲げた杖が怪しく光ると、見えない何かが三人組へとまとわりついていき、岩へと変化していく。
──魔力感知スキルを獲得しました。
「うおっ、ビックリした……」
「あ、あはは、魔法って、不思議ですよねぇ」
「へっ?い、ああ!そうだねぇ!不思議だねぇ!?」
「えへ、えへへ、いや、ほんと……なんで私なんかが、こんな力、もらっちゃったんでしょう。別に、いらなかったのに……」
引きつった笑顔でぎこちなく笑いながら、自嘲気味に話す竜胆さん。……わからんでもない、望んでダンジョンに潜ってる奴ばかりじゃないしな。
「あんまり変なことダンジョンでしちゃダメだぜ。こんなこと続けてたら、いつか破滅するぞ」
もうしてるかもしれないけど、それは言わんとこう。追い詰めても仕方ないし。
「う、うう……私だって、こんなことしたくないですよぉ。でもぉ、怖くってぇ……」
「あー、なんかその、魔法使いなんだろ?攻撃魔法で遠くからとか、できないの?」
「ゴブリンの顔、夢に見るんです」
「……ほう。夢に」
「はい。私を見て、ニチャって笑った顔。剣で斬られて、苦しそうに歪んだ顔。鎚で殴られて凹んだ頭。槍で真ん中に穴が空いて──うぷ」
そこまで話して、思い出したんだろう。竜胆さんが気持ち悪そうに口を押さえるのを見て、慌てて背中を擦る。この子、向いてないな。どう見ても。
だけど、冒険者は、潜らないと生活できない。
クラン以外に就職口はないしなぁ。ああ、クランで事務員として働けばいける、のか?でも、そんなんでも入っていきなりは無理だろうな。
「す、すみません……水生成──んぐっ……はぁ……」
右手の上に小さな水を作り、そのまま水を操作して口の中へと運ぶ。いや、すげぇな……。ただの水でも、ここまで操れれば相当厄介だろう。普通にゴブリンくらいなら殺せそう。
「あ、ありがとうございます。へ、へへ、私、あなたを殺そうとしてたのに、へ、変ですね」
「それはもういいよ。さっきも言ったけど、無理やり協力させられてたんだと思ってるから。あとはこいつらを冒険者協会に突きだしたいんだけど、俺一人じゃなぁ……あ」
そこでふと思いつく。
このまま三人を協会に突き出すと、どうなる?多分、俺とあいつらとの罪のなすりつけ合いになるだろう。三対一だからな。うん、イケるかわからないけど、試してみよう。
「ちょっとごめんね。ドローンのスイッチ入れるわ」
「あ、はい……どうぞ」
彼女がすっと手をかざす。周囲を覆っていた結界を解除してくれたみたいだ。
「ありがとう」
背中を擦るのをやめて、荷物を取りに行く。水とご飯は収納して……ドローンをポチッと。
『お』
『はじまた』
『おかえりー』
「あー、実は休憩してる間に色々ありまして……」
そう言いながら視聴者のみんなへ、さっきあったことを説明していくと、コメント欄はとんでもないことになっていった。
『はぁ!?ダンジョン内で強盗とか、バカじゃねぇの?』
『相手がバーサーカーだから良かったけど、普通に犯罪だし』
『いやマジでバーサーカーだからよかったけど、三対一とか普通に詰んでるからな』
『バーサーカーじゃなかったらやばかったぞ』
『バーサーカー』
『バーサーカー』
いや、もう、やめて?つーかお前ら、俺のことバーサーカーって呼んでんの?今知ったんだけど……。
『そんで後ろの方でこっそり映ってるのが』
『その巻き込まれ魔法使いか』
『あんまり見えないけど、結構可愛くね?』
あ、竜胆さんの肩が跳ねてる。相当ビックリしてんな。今まで言われたことなかったのかな。
『ちょっと、もうちょい近くに寄らない?』
『隠れた逸材だぞこれ。どこ所属?』
『魔法使いならレア職業だし、有名でもおかしくないけどな』
話がすごい勢いで明後日の方向へと逸れていく。俺の話聞いてくんねーかな。ミーハー共め。
「だあああっ!そんなことよりも、みんなには相談がありますっ!」
『お、なんだ?』
『なになに?』
「ずばり!誰か手伝ってくれません?一人で運ぶのきつくって。場所は足立第三百八ダンジョン」
『ほう』
『つまり』
『そこに行けば』
『魔法使いちゃんに会える』
あ、なんか嫌な予感。
ポケットからスマホを取り出して、久々に配信画面を開くと──
視聴者数:38701人
おお、前よりも増えて──
視聴者数:38395人
「あ」
視聴者数:38146人
やべぇ!
「はい!募集終わり!今見てる人は来ちゃだめ!」
初心者が来るダンジョンに、五百人以上の人を呼んじまったぞ……。ダンジョン崩壊しないよね?俺のせいじゃないぞ?




