↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/32

第26話 廉価版、レンタルカバン、カバンなし


 や、やめられまへん!これやから冒険者は夢がいっぱいやでぇ〜!!


「あ、あの……振り込みで……よろしいですか……?」


「あ、はい。大丈夫です」


 おっといけない。興奮しすぎた。どう見ても受付の人がビビってる。落ち着け落ち着け。俺は億万長者になる男、佐藤恭平。


 報酬の処理が終わって、渋谷の街へと繰り出す。所持金はほぼ素寒貧だったけど、これでかなーり余裕ができたな。二百八十万か……やっぱり武器かな?なんかこう、ゲームみたいに武器を持ち替えて戦いたいよなぁ。


「そうなるとやっぱり、アイテムボックスだよな。槍とかそれだけで場所取るし……でも一億かぁ」


 配信機能付きドローンにアイテムボックスの機能を追加したやつが一億。ドローンが三万だから、ほぼアイテムボックスの値段である。詳しくは知らないが。


「廉価版とかでいいから、安値で売ってくれねーかな。一回後藤さんとこに相談にいくか?」


 ローンとか組めるなら、すぐに返せる気がする。素材とかもたくさん持って帰れるし。


「うんうん、意外といい考えじゃね?むしろこれしかないのでは?よし!後藤さんに相談だな!!」


 そうと決まれば、善は急げ。もう夕方だけど、北千住へレッツゴー!!


 ◇◇◇


「ダメに決まってんでしょ。寝言は寝て言いなさい」


「そんなこと言わずにさぁ!貸してよ一億!!」


 頼むよぉ!もうこれしかないんだよぉ!


「いや、ダメだって。そもそも冒険者がローン組める訳ないじゃない。冒険者の死亡率がどれくらいか知ってて言ってるの?」


 なんだか疲れ果てた様子でそう言う後藤さん。冒険者の死亡率ねぇ。まぁ吾妻さんたちを鑑みると、あまり低いとは言えなさそうだね。


「うーん、五パーセント!」


「冒険者になって一年以内の死亡率はソロで五十を超えるわよ。パーティーなら十パーセントくらいね。二年目以降はグッと減るんだけど」


 ソロ怖ぁ。あ、でもパーティーでも十パーセントあるのか。いやいや、それでも十パーティーに一つは全滅だろ。怖すぎるわ。あー、でも納得だな。


「つまり、冒険者に来年以降の支払い能力を期待するのは……」


「かなりの無理筋ね。あなたがどうとかじゃなくてね、冒険者は全部ニコニコ現金払いよ。例外はBペイだけど、まぁあれもデビットだしね」


 世知辛いっ……!命懸けなのに、いや、命懸けだからこそか……!ない袖は振れないの究極を見せつけられた気分だ。


「そうですか……じゃあ諦めます……」


 肩をガックシと落として、入ってきたときと同じ自動ドアへと向かってトボトボと歩いていく。アキラと戦うまでに買えるかなぁ……。あれあると、かなり意表突けると思ったんだけど。


「…………ちょっと、待ちなさい」


「ほぇ?貸してくれんの?」


 女神?


「違うわよ。そんな目で見ないで。……ちょっとこっち来なさい」


 辺りをキョロキョロと入念にうかがいながら、おいでおいでと手を振る後藤さん。なに?イタズラしないよね?


 俺が近付いてきたのを確認してから、受付の中をごそごそとしながら、どこか見覚えのあるポーチを取り出した。んん……?ユキナのポーチもこんなんだったか?


「これ、アイテムボックスの機能付きのポーチ。お客さんが入れたいアイテムが入るか確かめる用のサンプルだけど」


「……マジで?くれるの?」


 めっちゃ嬉しいんだけど!えー!?いいの!?


「あげるわけないでしょ!ちょっと、何腰につけてんの!!」


「へ?くれないの?」


「早く外せ!バレたら私もヤバイのよ!」


「わぁ、サイズピッタリ」


「ポーチにサイズもクソもないわよ!か!え!せ!」


「えぇ……?仕方ないなぁ」


 じゃあ何で出したわけ?期待しちゃったじゃん。

 せっかく腰につけたポーチを、外す。


「早く返して?」


 …………返す。


「まったく……ほら、この中に適当に何か入れて」


 後藤さんがため息をつきながらポーチのフタをペロッとめくり、ポーチの中をこちらへと向けてくる。


 ポーチの中は真っ暗で、底が見えそうもない……。ちょっと怖い。


「ビビってんの?」


「で、できらぁ!!」


 後藤さんの煽りにガッツリ乗っかる形で勢いよくバングルを突っ込む。暗闇に吸い込まれるように消えていくバングルと、俺の手首。ゾッとするが、不思議なくらいに何も感じない。


「……じゃ、そのまま出して」


「なんだよ、もう──」


 ──収納スキルを獲得しました。


「っ!!お、おお……」


「取れた?取れたのね?取れたのよね?なんていうスキル?」


「しゅ、収納、だって……そんなスキル、あんの?」


「収納?収納スキルっていうの?アイテムボックスじゃないんだ……」


 ん……?なんか違和感が……。


「後藤さん?収納スキル、知ってたんですよね?」


「ん?もちろん知らないわ」


「知らんのかい」


「あら、ツッコミもできるのね。それもスキル?」


「……そんな訳ないじゃないですか」


 もう訳わかんねぇ。でも、今はそれよりも……。


「収納スキル……おお……」


 手に入れたばかりだけど、わかる。


 スキルを意識した途端、頭に浮かぶ何もない空間。多分ここに……。


 左手に握ったままのバングルに集中して──収納!!


「お、おお」


「今使った!?使ったわね!?」


 後藤さんの言葉に反応する余裕はなかった。


 さっきまで握っていたバングルは消えてなくなり、頭に浮かぶ空間全てを埋め尽くすバングル。


 もしかしてこれ、一個しか入らない?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。