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第24話 あっちもこっちもそっちも


「グラアアアアア!!」


「どわぁ!!」


「グガアアアアア!!」


「うひょお!!」


『やばいやばいやばい!!』

『死ぬだろ!やべぇって!』

『なんでレッドオーガの群れと戦ってんの!?』


 真っ赤な肌のオーガ。オーガの上位種で、硬質な肌とオーガに見合った巨漢、オーガに不釣り合いな素早さを誇る、渋谷第八ダンジョンのウェルカムモンスターである。オーガオーガうるせぇな。

 赤い肌が荒野の赤土によく映える。お似合いだよ!


「ガァッ!」


「ひょ!」


「ウガァ!」


「よっ!」


『……意外と余裕?』

『そうなんだよね。ずっと、避けてんだよコイツ』

『なんだ、いつも通りか』

『そうだね、バーサーカーだね』


 いや、余裕は別にないんだよ。ただこいつら、動きが単調なんだよね。殴る前に必ず振りかぶるし、中途半端に賢いから周りの仲間に当たらないように気をつけてるし。


「さて、そろそろ、反撃、だなっ!」


 ずっと腰に差しっぱなしだった魔鋼製の片手剣を抜く。なんとなく、昨日よりも手に吸い付く感じがするな……。剣術レベルのおかげかね?


「ガアアアアッ!」


 一番近いレッドオーガ、そいつが繰り出す右ストレートに、そっと剣を沿わせる。


 力の流れを借りて、そのままお返しする、だったよな!


 体重を乗せた右ストレート。その拳の勢いを利用して、いなす。半身になった俺の体を通り抜けるように、その場で転がるレッドオーガ。


「グガァ!?」


「最っ高に、スキだらけだぜっ!」


 自分がなんで前転したのか理解できていない様子のレッドオーガの首へと、魔力を這わせた刀身を振り下ろす。


 岩のように硬い肌も、これなら切れる。


「ガ──」


 頭と体が分かたれたレッドオーガは、そのまま魔石へと姿を変えていく。


「さぁ、あとはこれを繰り返すだけだな」


『めっちゃ強くね?』

『なんか昨日より強くなってるよな?』

『配信の前に修行でもしてたか?』

『修行って誰にだよ』

『そりゃ死神だろ』


 残念んんんんっ!死神じゃなくて剣神でしたぁ!言わねーけどな!!どうせ騒ぐだろうしなぁ!!


『アタシじゃねーぞ』

『お?』

『あ』

『ご本人?』


「レッドオーガアアアア!死ねオラァアアアア!」


『逃げた』

『逃げたな』

『おい恭平』

『コメント返ししろ!』


 おおっと、仲間を倒されたレッドオーガが、怒りに任せて俺に襲いかかってくるう!これはコメントの相手をしてる場合じゃねーな!!


「ひゃっほぉぉぉおおおお!」


「グラァ!」

「グガァ!」


 前後から挟み撃ちするかのように腕を振るってくるレッドオーガの位置を、空間把握で正確に認識する。

 振るわれた拳と拳の、その隙間を縫うように、体を滑り込ませていく。


「よっ」


 魔剣術を発動しながら、レッドオーガの伸びきった肘、その腱を狙う。


「グ、ガアア!」


 腕を切られたことか、それとも上がらなくなったことか、驚くように声を上げるレッドオーガと、そいつの腕に注目する群れ。


 この瞬間、俺を見ている奴は一人もいない。


 ──今だ、気配遮断!


「グウウウ……ガ?」


 腕を切られたレッドオーガが、怒りの表情でこちらを見るが、俺を視認できていない。俺はここにいるのにな。


 予想通り。やっぱりこいつら、感知系がお粗末だ。そうと決まれば、話は早い。あとは一体ずつ、忍び寄って首を落とすだけで済む。


「グオオオオ!グガァ!」


 逃がすな、探せ!だろうか。辺りをキョロキョロしながら散り散りになるレッドオーガたち。そのうちの一体に目を付けて、背後から首を落とす。


「ガ──」


「あばよっ、てな」


 ──暗殺術スキルを獲得しました。


「おぉっ!?」


『あれ、今消えた?』

『多分……』

『ドローンが追いきれないとかありかよ』

『ふぅん』

『てかあれなんのスキル?』


「グガァ!!」


 やべ、コメントで俺の場所がバレちまう。今のスキルはちょっと気になるけど、この場でこれ以上使うのはリスキーかな?素直に魔剣術で戦うとするか。


 ◇◇◇


「ふぅん……」


 手に持つスマホを握りつぶす。


 最高だと思ってた。でもどうやら、それも過小評価みたいだな。


「おい、小紅。そろそろダン──ひっ!」


「あはぁ……落ち着けアタシ。まだ我慢、まだ我慢……」


 震える体と、漏れ出す殺気を必死で抑える。あぁ最高だぜ、恭平ぇ……。


「……そ、そろそろ、ダンジョンに──うぐぅ」


 うるさいコバエだと思って掴んだら、クランメンバーの……誰だっけ?まぁいいか。


「わかってるよ。ちょっとは浸らせろよ、な?──別にお前でもいいんだぜ?」


「ひぐ、ご、ごべんなざい……」


「ツマンネー野郎だな。股間にぶら下げてんのは飾りかよ」


 ホントにツマンネー。殺されそうなくらいでビビってんじゃねぇよ。


 泣いてる男は趣味じゃねぇからなぁ。もうどうでもいいや。名も知らぬ男の首から手を離し、自由にしてやると、地面を這いながらアタシの部屋から出ていった。


「ありゃどう見ても月城の仕業だなぁ……くひ、くひひひ、あははははははっ!アイツも目を付けたか!!でも恭平はアタシのだ!!」


 こうしちゃいられない。アイツは確か……神の祝福(ゴッド・ブレス)だったか。走れば数分で着くな。


「おいっ!アタシは出かけてくる。今日のダンジョンはナシだ!!」


 ◇◇◇


「あなたが後藤さんですか?」


「け、剣神……様?」


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